小出英樹「わらべうたは死なず どっこい生きている日本人の音楽性-千葉県船橋市のわらべうた調査から」ブイツーソリューション発行・星雲社発売 (2018/11).
図書館で借りたが,購入して本棚に置くことにした.
著者の千葉県船橋市の小学校での1991年と2014年のわらべうたの調査に基づいた本.実は1961年の小泉文夫による先行研究があるのだが,この調査でわかったことは,時代や環境が変わっても,わらべうたが,戦後もこどもたちの中で脈々と生き続けていることであった.
現代の子供たちの歌は,日本の伝統的な音階 (民謡音階など) に従うものが87%に達するのに対し,学校音楽やテレビの影響下にあるはずの洋楽音階に従うものは13%にすぎない.
著者はこどもたちが覚えやすいメロディは日本語のイントネーションと裏表と考えているようだ.しかし,21世紀のこどもたちが,「ずいずいずっころばし」や「あぶくたったにーたった」をどうして覚えたか,というような社会科学的考察は希薄.
本書は第1部「分析・考察編」第2部「楽譜編」という構成.わらべうたには音高・リズムが頻繁に変化し,歌詞が加わったり省略されたりするが,第2部では約80曲が「比較総譜」という形でいろいろなバージョンが示されている.
最近の最大の変化はこどもの声が低くなったこと.例えば「そうだ村の村長さん」は1991年から2014年の間に長3度低くなっている.しかし小泉の調査と比べると,1961年と1991年とでは大きな違いはない.
服部公一「子どもの声が低くなる!-現代ニッポン音楽事情」 ちくま新書 (1999/12)
という本もあった.