【社説】:②新聞週間 紙面で被災者に寄り添いたい
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説】:②新聞週間 紙面で被災者に寄り添いたい
大きな自然災害が相次ぐ中、正確かつ迅速に、被災者に役立つ情報を伝える。新聞報道の重要性を改めて認識したい。
新聞週間が始まった。今年度の代表標語には、「真実と 人に寄り添う 記事がある」が選ばれた。新聞に寄せられる期待の大きさを実感する。
6月の大阪北部地震、7月の西日本豪雨、9月の台風被害や北海道地震――。読売新聞は現地に多くの記者を派遣し、被害の実態や被災者の声を伝えてきた。被災者向けの情報を集めた「くらしの掲示板」も定着している。
災害報道では、新聞だけでなく、テレビやインターネットなど様々な媒体が、それぞれの長所を生かした情報を発信している。
西日本豪雨では、避難勧告・指示や大雨特別警報などが避難行動に必ずしも結びつかず、多くの高齢者らが自宅で亡くなった。
なぜ逃げなかったのか。読売新聞は検証記事で、「情報を伝えることと、本当に伝わることの間に隔たりがある」と指摘した。自治体の防災計画の不備も明らかにした。再発防止に資する報道でなくてはならないとの考えからだ。
大災害であっても、時間の経過と共に世間の関心は薄れる。折に触れて被災地の現状を伝え、早期の復興を後押ししたい。
災害時の不明者の実名公表について、近年、自治体の対応が分かれているのは気がかりだ。
緊急時には、個人情報の保護よりも、不明者捜索の公益性を優先すべきだ。自治体は、実名での公表をためらうべきではない。実名を報じるかどうかは、報道機関が自らの責任で判断することだ。
フェイク(偽)情報が拡散しやすい、ネット時代ならではの課題も浮かび上がった。
北海道地震では、SNS上で「数時間後に再び大きな地震が起きる」といったデマが拡散した。北海道新聞は自社のツイッターを活用し、取材に基づいてデマを否定する情報を発信した。
読売新聞の最新の世論調査では、信頼するメディアとして、新聞を挙げた人が最も多かった。インターネット上に偽の情報が流れている、と感じる人は8割近くに上った。30歳代までの若い世代では9割以上を占めている。
正確で質の高い情報が、より求められていると言えよう。
来年4月30日で、平成の時代が終わりを迎える。時代の変化を的確に捉え、読者が必要とする記事を発信する。新聞に課せられた役割を果たしていきたい。
元稿:讀賣新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2018年10月15日 06:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。