【追悼・崇英さん】:祈りの僧侶、都心の街角で托鉢(2012年4月6日東京新聞朝刊に掲載)
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【追悼・崇英さん】:祈りの僧侶、都心の街角で托鉢(2012年4月6日東京新聞朝刊に掲載)
東京・銀座で托鉢を続け、東日本大震災の被災地で死者を弔い続けた僧侶の崇英さんが18日、新型コロナウイルス感染症のため亡くなりました。在りし日の崇英さんを偲び、9年前に東京新聞に掲載された記事をWeb公開します。ご冥福をお祈りいたします。
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東日本大震災から1年、2012年3月11日の東京新聞1面記事
東日本大震災から1年に当たる2012年3月11日付本紙朝刊1面に作家の伊集院静氏の詩とともに掲載された写真は、読者の大きな反響を呼んだ。太平洋から迫る波に向かい、真っ白に雪が積もった海岸で祈りをささげる僧侶。この姿に感動したという声が多く寄せられたが、写真の僧侶は、東京のど真ん中の街角で托鉢を続ける修行僧だった。
新聞掲載から4日後、1人の中年男性が中日新聞東京本社を訪ね、1面の写真の購入を申し込んだ。帰り際に「写真の僧侶です」と述べ、申込書に住所と名前などが記されていた。
早速、連絡して数日後、撮影者の嶋邦夫記者と一緒に、托鉢を行っているという中央区内で会った。
東京都世田谷区在住の望月崇英さん(58=当時)。
東京生まれの東京育ち。10年前に僧侶になり、一昨年8月から、中央区内の繁華街の一角で正午から午後4時まで托鉢を続けている。「僧侶の基本。1000日は続けたい」と語る。
都心の繁華街の一角で托鉢を続ける崇英さん=2012年3月21日、東京都中央区で
昨年(2011年)4月、テレビで宮城県東松島市で自衛隊員と役場の人だけで営まれている土葬のシーンをみて、「供養になれば」と現地に赴き、読経して回った。以来、週末は被災地で読経したり、友人が運営するNPO法人のボランティア活動の手伝いなどで過ごした。
写真が撮影された3月4日は、NPO法人の友人から、11日午後2時46分に合わせてお祈りをする場所探しを依頼され、その下見のため、仙台市若林区荒浜の海岸にきていた。前日夕、荒浜で出くわした嶋記者と再び遭遇し、祈りをささげているシーンが撮影された。
「あそこで会えたのは、不思議な縁。まさか、その時の写真が新聞の1面に掲載されるとは」と望月さん。「亡くなった方々の遺族にとっては、毎日がどなたかの月命日であり、供養になれば、との思いで祈っていました」と静かに語った。
元稿:東京新聞社 主要ニュース 社会 【話題・東日本大震災】 2021年01月24日 10:49:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。