【政界マル秘紳士録】:自民党・石破茂元幹事長 何だかんだ言っても総理候補 2021年は“臥薪嘗胆”の年に
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【政界マル秘紳士録】:自民党・石破茂元幹事長 何だかんだ言っても総理候補 2021年は“臥薪嘗胆”の年に
自民党の石破茂元幹事長は昨年の総裁選で、菅義偉首相と岸田文雄前政調会長の後塵(こうじん)を拝した。その後、自ら率いる石破派(水月会)会長を辞任した。理由は「総裁選敗北の責任を取ることにした」というものだった。一部には、「潔さを党内外にアピールして再起を期す狙い」と解説する向きもあるが、そんな戦略的な行動ではないだろう。
石破氏は、世論調査で「ポスト安倍」の筆頭にあげられていた。しかし、それは反自民、反安倍のメディアに頻繁に出演し、厳しい論評を展開した結果に過ぎなかった。
自民党の国会議員、党員・支持者の多くからは、「後ろから鉄砲を撃っている」という思いで見られていたのだ。要するに、いわゆる「逆張り戦略」が裏目に出てしまったのである。
おそらく、石破氏の「逆張り戦略」は、安倍晋三前首相が2021年秋の総裁選に出馬することを念頭に置いた戦略ではなかったか。ところが、安倍氏の突然の辞任でもくろみが狂ってしまったのが実情だろう。
いずれにせよ、戦いに勝敗はつきものである。大切なのは、その結果をどう次に生かすかである。
その意味では、総裁選で3位に甘んじたことより、派閥会長を辞し、総裁候補から降りようとしたことの方が、よほど「石破氏への失望」を大きくさせたといえる。若手の頑張りによって、派閥は当面、集団指導体制で存続することになったが、これを石破氏はどう受け止め、今後、どう行動するかが問われることになるだろう。
一方、首相候補不足のなか、何だかんだ言っても、石破氏が総理候補の一人であることに違いはない。まして、新型コロナウイルスの感染拡大という予測不可能な事態にある。安倍首相の辞意表明を受けて突然、菅氏が首相候補に浮上したように、いつどこで新たな合従連携が行われるか分からないのである。
2021年は石破氏にとって、「針のむしろ」「臥薪嘗胆」の年となるだろう。それは一つ一つの行動を積み重ね、失われた期待を回復していく作業にほかならない。
石破氏が心中深く秘めているのは、川島正次郎・元自民党副総裁の「政界、一寸先は闇」という言葉かもしれない。政界においては「昨日の敵は今日の友」「今日の友は明日の敵」は十分あり得ることである。それは、当選11回を超える政治家としての本能というべきものかもしれない。
■伊藤達美(いとう・たつみ) 政治評論家。1952年、秋田県生まれ。講談社などの取材記者を経て、独立。永田町取材三十数年。政界、政治家の表裏に精通する。著作に『東條家の言い分』『検証「国対政治」の功罪』など多数。『東條家の言い分』は、その後の靖国神社公式参拝論争に一石を投じた。
元稿:夕刊フジ 主要ニュース 政治・社会 【政治ニュース】 2021年01月09日 15:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。