【社説②・12.17】:外国人の労災 「使い捨て」は許されぬ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②・12.17】:外国人の労災 「使い捨て」は許されぬ
日本で働く外国人労働者の労働災害が増えている。昨年の死傷者は過去最多水準に達し、雇用者が労災を隠すケースも後を絶たない。労災防止の徹底に加え、人権の擁護に努めるべきは当然だ。
厚生労働省によると、国内の外国人労働者は2023年10月時点で過去最多の204万人を超え、10年前の2・86倍。一方、労災による外国人の死傷者数は昨年5672人(死者32人)、10年前の3・66倍となり、労災件数は労働者の増加比率を上回る。
日本人も含めた労働者千人当たりの昨年の労災死傷者数は2・36人だが、外国人に限ると2・77人。さらに在留資格別では製造業や建設業で働く人の多い特定技能で4・31人、同じく技能実習では4・10人と突出している。
中には、装着が義務付けられている安全帯や防護メガネを「作業効率が悪い」として着けさせず、高所から転落したり、破片で失明したりした労災事例がある。
雇用者側が労災を隠すために自費診療扱いで病院に行かせたり、病院へ同行して医師に「自転車で転んだ」などと虚偽の説明をするなど、より悪質な例もあった。
全国の労働基準監督機関が22年に技能実習制度を対象に監督指導した9829件のうち、73%で労働基準法や労働安全衛生法違反が発覚している。由々しき事態と言わざるを得ない。
外国人の労災防止のため、厚労省は漫画や多言語による教材を制作しているが不十分だ。分かりやすい日本語の使用を職場で徹底したり、労働者を企業に仲介する監理団体に安全説明の通訳派遣を義務付ける必要がある。
労働安全衛生法違反で指導や改善命令を受けた企業には、外国人の受け入れ制限など制約を科すことも検討されるべきだ。
労災被害者は治療費や休業補償のほか損害賠償も請求できるが、外国人には言語の壁もあり、容易ではない。雇用者や監理団体がもみ消そうとした例もある。
こうした圧力を受けた外国人労働者が労働組合や支援団体に相談できる環境の整備も不可欠だ。
27年までに技能実習制度に代わる育成就労制度が導入される。政府は外国人労働者の一層の増加を見込むが、日本が働き先に「選ばれる国」になるには「使い捨て」の発想を根絶し、労働者保護を拡充することが前提となる。
元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年12月17日 07:45:00 これは参考資料です。転載等は各自で判断下さい。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます