【社説②・12.20】:ロケット失敗 開発初期には不可避の試練
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②・12.20】:ロケット失敗 開発初期には不可避の試練
世界では民間主導の宇宙開発が進みつつある。日本も出遅れを挽回し、宇宙ビジネスで世界と渡り合える態勢を整えなければならない。
宇宙新興企業スペースワンが、再び小型の新ロケット「カイロス」の打ち上げに失敗した。搭載していた5基の小型衛星を軌道に投入できれば、日本では民間初となるはずだっただけに残念だ。
3月に打ち上げた初号機は、打ち上げ直後の速度が予測より遅く、異常検知システムが作動して爆破された。今回の2号機は上空100キロ・メートル超まで上昇したものの、ノズルの異常で機体の姿勢が乱れ、飛行が中断された。
新ロケットの開発では、初期段階での打ち上げ失敗はつきものだ。こうした失敗によって機体に潜んでいた欠陥があぶり出され、修正を重ねながら完成に近づけていくことも多い。
スペースワンは2度の失敗にくじけることなく、原因を究明し、次に挑んでもらいたい。
同時に、スピード感も大切である。米国の新興企業は失敗から数か月ほどで次の打ち上げに臨むことも珍しくない。
カイロスは、顧客企業の要望に応じて小型衛星を素早く打ち上げる「宇宙宅配便」の役割を目指している。まずは3号機を成功させ、安定した打ち上げサービスを確立することが必要だ。
近年は、多数の小型衛星を連携させ、通信ネットワークを構築するといった需要が増えている。打ち上げ受注競争も激化している。スペースワンも、少しでも早く市場に参入し、アジアなど内外の顧客を開拓しなければならない。
日本の小型ロケットには、カイロスのほか、宇宙航空研究開発機構(JAXA)などが開発している「イプシロンS」がある。しかし、こちらも地上のエンジン燃焼試験で2度の爆発事故が起き、打ち上げの見通しが開けない。
予定していた9回の打ち上げのうち7回は取りやめとなった。このまま官民のロケット開発が足踏みするようでは、「2030年代前半に年30件の打ち上げを目指す」という政府の目標も達成が危ぶまれるのではないか。
宇宙開発は安全保障にも密接に関わる。カイロスなど取り扱いやすい複数の固体燃料ロケットに加え、液体燃料の大型ロケットを官民で開発し、自前の打ち上げ能力を保持することが欠かせない。
関連メーカーは、技術継承に問題が生じないよう、長期的な視点から人材育成に努めてほしい。
元稿:讀賣新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年12月20日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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