【社説①・12.20】:中学生殺傷事件 未来ある命なぜ奪われたのか
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・12.20】:中学生殺傷事件 未来ある命なぜ奪われたのか
容疑者の男は一体、何の目的で中学生2人を襲ったのか。地域社会を揺るがした衝撃的な事件の背景と動機の解明を急がねばならない。
北九州市小倉南区のファストフード店で、いずれも15歳の市立中学3年の男女が刃物で刺されて死傷した事件で、福岡県警は19日、近くに住む43歳の無職男を殺人未遂容疑で逮捕した。
2人の中学生は今月14日夜、勉強するために店を訪れ、レジの前にできた客の列に並んでいたところ、入店してきた男にいきなり刃物で刺された。女子生徒が死亡し、男子生徒も深い傷を負って、現在も入院している。
男は、警察の調べに「確かにその行為をしました」と容疑を認めているという。警察は女子生徒殺害の容疑でも調べる方針だ。
男は生徒2人と面識がなかったとみられている。2人との間には、事件につながるようなトラブルも確認されていないという。
犯行は理不尽で卑劣極まりない。男は現場の近くに住んでおり、店には車で来ていた。なぜ刃物を持って、この店を訪れたのか。警察は男を厳しく追及し、事件の全容を明らかにしてほしい。
容疑者の逮捕は、防犯カメラや通行車両のドライブレコーダーの映像から、足取りをたどる「リレー捜査」が決め手になったとされる。こうした手法は近年、様々な事件の解決につながっている。
亡くなった女子生徒は塾帰りだった。勉強のできる元気で真面目な子だったという。大切な娘を突然奪われた遺族の心痛は察して余りある。男子生徒については、一日も早い回復を願うばかりだ。
北九州市立の小中高校では事件後、「怖くて出歩けない」などとして、延べ1万人の児童生徒が欠席したという。事件が地域の保護者や子供たちに与えたショックの大きさは計り知れない。
市教育委員会は、地域の学校にスクールカウンセラーを派遣するなどし、子供たちの心のケアに努める必要がある。
間もなく受験シーズンが本格化する。塾に通い、夜遅くまで勉強している子供たちも多いだろう。我が子が塾の行き帰りに事件や事故に巻き込まれないかと、不安になった保護者もいるはずだ。
逮捕された男の動機は、今のところはっきりしない。今回のような事件を未然に防ぐ方法はないのか。それを考えるためにも、事件の全容解明が不可欠だ。通塾ルートの点検など、各地域や家庭で今できる対策にも取り組みたい。
元稿:讀賣新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年12月20日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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