【日報抄・11.14】:自動車もバイクも自転車すらない江戸時代である。
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【日報抄・11.14】:自動車もバイクも自転車すらない江戸時代である。
自動車もバイクも自転車すらない江戸時代である。そんな社会に道路交通法があったと言ったら言い過ぎか。罰則付き交通ルールだ。将軍徳川吉宗は1742年、幕府の基本法典である公事方御定書を作成させた
▼その中に大八車で人を死なせると死罪という規定がある。けがをさせただけでも厳罰が下った。大八車を2人で引いて事故を起こした場合、けが人側にいた引き手は島流し。反対側の引き手は江戸などから追放された。さらに荷主や引き手の家主も罰金である(笛吹明生「大江戸とんでも法律集」)
▼荷車の事故については「往来の人をよけ申さずわがままに引き通り候」と書かれた記録も残っている。周囲に注意を払わず、自分勝手な振る舞いが事故の原因になったと言いたかったようだ
▼今月、改正道路交通法が施行された。自転車走行中の携帯電話使用、いわゆる「ながら運転」と酒気帯び運転に対し、懲役と罰金の罰則が新たに設けられた。ながら運転の事故は2022年までの5年間、それ以前の5年間より5割も増えた
▼ながら運転での死亡・重傷者の7割以上が30歳未満という。動画や交流サイト(SNS)など画面を見詰めながらの運転は、自分も他人も傷つける恐れが大きい
▼酒気帯び運転では、当人だけでなく酒の提供者や同乗者にも罰則がある。大八車の荷主や家主を思い浮かべる。自転車は環境にも健康にもいい乗り物だ。江戸時代の記録にある「わがまま」に陥らぬよう戒めながら、ペダルを踏みたい。
元稿:新潟日報社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【日報抄】 2024年11月14日 06:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます