【社説②】:日韓首脳会談 対話の定着で関係前進させよ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②】:日韓首脳会談 対話の定着で関係前進させよ
国際情勢が激変し、アジアの安全保障環境も悪化する中、価値観を共有する日韓両国が協力する意義は大きい。首脳間で意思疎通を重ね、具体的な成果につなげていくべきだ。
岸田首相が韓国を訪問し、尹錫悦大統領と会談した。日韓首脳の相互訪問「シャトル外交」が、12年ぶりに再開された形だ。
尹氏の来日から2か月足らずで首相の訪韓が実現したのは、元徴用工(旧朝鮮半島出身労働者)訴訟問題で、尹政権が日本に賠償金の支払いを求めない解決策を示したからにほかならない。
ただ、韓国には「尹氏は譲歩し過ぎだ」といった批判がある。尹氏の努力を傍観しているだけでは、事態は逆戻りしかねない。
首相は会談で、植民地支配への反省やおわびを明記した1998年の日韓共同宣言の立場を踏襲する考えを強調した。さらに「多数の方々が苦しい思いをされたことに心が痛む」とも語った。
首相が自らの言葉で思いを述べたのは、尹氏の政治決断を評価し、韓国国内の反発を和らげる狙いがあるのだろう。
尹氏は会談で「歴史問題にけじめをつけない限り、未来の協力に一歩も踏み出せないという考えから、脱却せねばならない」と述べた。日韓関係を前進させるという、ぶれない姿勢は評価できる。
徴用工問題では、これまでに10人の遺族が韓国政府の解決策を受け入れ、支給金を受け取った。また、存命の原告のうち1人も解決策を受け入れる方向だという。
首相は、相手の立場に配慮する大切さを忘れてはならない。
3月の東京での首脳会談後、両政府は重層的な協議を再開している。先月には、約4年ぶりに互いを輸出手続きの優遇対象国に再指定する方針を決めた。
日韓関係は、新たな段階に移行したと言えるのではないか。様々な分野で協力を積み重ねたい。
両首脳はまた、東京電力福島第一原子力発電所の処理水問題で、韓国の専門家で作る視察団を日本に派遣することで合意した。
政府は、今夏にも処理水を海洋に放出する方針だ。処理水には放射性物質のトリチウムが含まれているが、国際基準に照らして問題はない。こうした海洋放出は、韓国を含め各国が行っている。
韓国のメンバーも入った国際原子力機関(IAEA)の調査団は昨年、放出計画は妥当とする報告をまとめた。政府は科学的な知見に基づき、処理水の処分について理解を求めていく必要がある。
元稿:讀賣新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2023年05月09日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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