【社説①・12.16】:韓国弾劾案可決 真相の究明を徹底的に
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・12.16】:韓国弾劾案可決 真相の究明を徹底的に
韓国国会が14日、「非常戒厳」を宣言した尹錫悦(ユンソンニョル)大統領の弾劾訴追案を可決し、尹氏の職務が停止された。憲法裁判所が180日以内に罷免の可否を判断する。
野党の政治行動を封殺しようとするに至った真相の徹底解明と憲法との整合性についての審理を進めると同時に、分断や混乱を広げないよう、韓国の与野党や社会には冷静な対応を求めたい。
訴追案の採決では少なくとも12人の与党議員が賛成票を投じた。市民の怒りが弾劾に慎重だった与党議員の背中を押した形だ。
尹氏は採決2日前の談話で、国会への兵力投入を「秩序維持のためで、国会の機能をまひさせる意図はなかった」「野党の亡国的な行動を知らせる象徴的なもの」と釈明。野党が多数を占める国会を「自由民主主義の憲政秩序を破壊する怪物」だとも語った。
しかし、報道によると、内乱容疑で逮捕された警察庁長官は取り調べに対し、非常戒厳宣言後に尹氏から電話が6回かかり「国会議員を逮捕しろ」と指示されたと証言した。非常戒厳を解除させないよう国会審議を実力で抑え込もうとしたのなら、尹氏の説明に説得力は全くない。
尹氏は拘束すべき人物のリストに、与野党の代表や国会議長に加え、野党代表の裁判で無罪判決を言い渡した現職判事も挙げた、と伝えられている。
昨年から「緊急措置」に言及していたとの報道もあり、早い段階から立法や司法を力で弾圧しようとしていた可能性も浮上する。事実なら「憲政秩序を破壊」したのは尹氏自身にほかならない。
政治目的達成のため、強権的手法や法的根拠に乏しい手段を採れば民心が離れるのは当然だ。日本を含め、すべての為政者は「他山の石」にしなければならない。
非常戒厳を巡る動きは、民主的に選ばれた指導者が民主主義を破壊しかねない危うさも示した。憲法裁の判断を見守るとともに、民主主義を守るにはどうすべきか、考える機会にもしたい。
攻勢を強める進歩(革新)陣営と保守陣営との争いが激しくなるのは必至だが、社会の分断が拡大すれば、韓国の経済や国際的な信用にも影響を与えかねない。混乱長期化のツケは結局、市民自身に回る。民主主義への信頼を回復するには、対立を過度にあおらず、冷静に議論することも必要だ。
元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年12月16日 07:30:00 これは参考資料です。転載等は各自で判断下さい。
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