【社説②】:トランプ氏起訴 公正な審理を進めよ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②】:トランプ氏起訴 公正な審理を進めよ
大統領経験者といえども「法の下の平等」の原則に従わなければならないのは当然である。起訴されたトランプ前米大統領が裁判所に出廷し罪状認否に臨んだ。裁判を政争の具にせず、法と証拠に基づく公正な審理を進めるべきだ。
トランプ氏は罪状認否で、三十四件の罪状に対し全面無罪を主張した。自身が当選した二〇一六年の大統領選のさなかに、ポルノ女優との不倫スキャンダルをもみ消すために口止め料を払った疑惑などをめぐり、トランプ氏が経営する企業の業務記録に虚偽の記載をした罪を問われた。
二四年の次期大統領選で雪辱を期したいトランプ氏は出廷後、起訴について「大掛かりな選挙妨害だ」と検察批判を繰り広げた。野党・共和党からもこれに同調する発言が相次ぐ。
だが、検察の捜査に加え、一般市民から選ばれた大陪審が起訴相当と下した判断を「党派的だ」と決め付けて、司法に圧力をかけるようなまねが許されるのなら、法治は崩れる。
疑惑はこれだけではない。
トランプ氏の支持者による二一年の連邦議会襲撃事件では、調査した下院特別委員会が大統領選敗北の結果を覆そうとしたトランプ氏こそが事件の主因だと断じ、トランプ氏を反乱扇動などの容疑で刑事訴追するよう司法省に要求した。司法省は特別検察官を任命して捜査している。
トランプ氏は大統領選で負けた州の選挙管理者に選挙結果を覆すよう圧力をかけた疑いも持たれている。
ホワイトハウスから大量の公文書を持ち出し、自宅に隠匿した疑いで連邦捜査局(FBI)の家宅捜索も受けた。
ところがトランプ氏は疑惑を追及されるたびに「魔女狩りだ」と被害者を装い、主に民主党へ責任を転嫁してきた。
大統領経験者の起訴という前代未聞の事態だが、トランプ氏の支持率はむしろ上昇傾向だ。民主主義をむしばんだトランプ政治と決別できず、分断が一層深まりそうな米社会の先行きを憂慮する。
元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2023年04月06日 08:04:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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