【社説①】:育休取得率公表 男性も子育て担わねば
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①】:育休取得率公表 男性も子育て担わねば
男性による育児休業(育休)取得率の公表が、四月から従業員千人超の大企業に義務付けられた。早ければ六月末までに企業などのホームページで公表される。
子どもを産み、育てやすい社会とするには、男性も育休を取り、育児や家事を担うのは当然だ。育休取得率の公表がそのきっかけになるよう期待したい。
育休取得率は子どもが生まれた従業員のうち育休を取得した人の割合を示す。中小企業を含む取得率は女性約85%に対し男性は約14%にとどまる。政府が先週公表した少子化対策の試案(たたき台)は、男性の取得率を二〇二五年までに50%、三〇年までに女性並みの85%とする目標を掲げた。
男性の取得率が低い要因には、まず「男性は仕事、女性は家庭で育児・家事」という、性別による役割分担意識が挙げられる。
働く女性が仕事に加え育児・家事をより多く負担する現状は、女性の社会進出と収入増を阻む要因になっている。男性が育休を取得することは、仕事とは異なる気付きや喜びを感じ、生活者、父親としての自覚を促すことにもなる。
男性が育休取得をためらう背景に、育休中の育休給付が手取り給与の実質八割にとどまることもある。試案は期間を限定しつつも、育休中も実質十割を給付する案を打ち出した。財源確保を含めて実現に向けた検討を急ぐべきだ。
若い世代にとって、育休取得率は仕事選びの重要な指標になる。各企業は取得率公表が人材確保に欠かせないと認識すべきだ。大企業に続き、取得率の公表義務を中小企業にも広げる必要がある。
ただ男性は育休を短期間で終える例が少なくなく、子育てと向き合ったとは言い難い。取得日数の公表は任意だが、取得率と併せて日数も公表し、子育てを支援する企業の姿勢を示したらどうか。
非正規雇用の場合、解雇を恐れて育休取得を申請しにくいという問題もある。中小企業では人手不足と経営難から正社員でも取得を言い出せないのが現状だ。
政府は、仕事と子育ての両立支援に取り組む企業への助成金を拡充し、必要な費用を価格に転嫁できるよう支援すべきだ。育休制度のない自営業者には、それに代わる支援制度も必要となろう。
少子化に歯止めをかけるため、あらゆる手だてを講じるよう、政府には求めたい。
元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2023年04月05日 07:14:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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