【社説①】:少子化対策法案 負担と給付、議論深めて
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①】:少子化対策法案 負担と給付、議論深めて
少子化対策関連法案の国会審議が始まった。人口減が続けば社会は確実に活力を失う。与野党は危機感を共有して議論を深め、実効性ある対策につなげてほしい。
2023年の将来推計人口によると、50年後の総人口は現在の7割に減り、高齢者はおよそ4割を占める。まずは厳しい現実を直視しなければならない。
法案の柱は対策の財源確保に、公的医療保険料に上乗せする「子ども・子育て支援金」を26年4月に創設することだ。28年度には必要な年3兆6千億円のうち1兆円を支援金で賄うと想定される。
岸田文雄首相は「支援金制度の構築は、歳出改革による保険料負担の軽減効果の範囲内で行い、歳出改革を中心として財源を確保する」と説明。野党側は歳出改革の見通しが不確実だとして「事実上の子育て増税だ」と指摘する。
政府は9日、年収別の支援金徴収額の試算を公表した。まずは国民の負担増で少子化対策を講じることの是非や徴収額の妥当性について議論を深めるべきだ。
政府は3月、支援金徴収額は個人が払う医療保険料の約5%に当たるとの試算も提示している。会社員なら給与明細に記載されている保険料額から徴収額を推計できるが、こうしたことの説明が不足しているのではないか。
政府は審議に必要なデータを速やかに国会に提示し、繰り返し丁寧に説明することが必要だ。
法案審議では負担にばかり焦点が当たるが、児童手当や育児休業給付などの現金給付、保育所の利用拡充、教育支援など給付についても多彩な対策が並ぶ。支援金制度で子どもが18歳までに受給できる現金やサービスの総額は1人当たり通算約146万円に上る。
少子化を克服するには若い世代が希望を持ち、子どもを産み育てやすい社会にすることが必要だ。直接的な給付にとどまらず、雇用政策や男女平等の推進、住宅政策など幅広い視点での対策を検討することも欠かせない。
日本世論調査会の調査では、少子化対策の費用を全ての世代で広く負担する政府方針に計63%が賛成するが、岸田政権の対策に期待しない人は計73%に上る。
いくら負担を増やしても、少子化を克服できなければ国民の理解は得られまい。審議では財源確保策はもちろん、対策の実効性についても議論も深めるべきだ。
元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年04月11日 08:03:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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