【シリーズ Voice!】:マイナ保険証⑧「選べないのは、不便です」マイナ保険証に納得いかない…自治体窓口職員が日々向き合っている現実は
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【シリーズ Voice!】:マイナ保険証⓼「選べないのは、不便です」マイナ保険証に納得いかない…自治体窓口職員が日々向き合っている現実は
〈シリーズ Voice!マイナ保険証⓼〉
マイナ保険証の問題に関して、取材班に届いたご意見を紹介する「Voice!マイナ保険証」。第8回は、マイナンバーカードの交付やマイナ保険証の登録を担う自治体現場の声を取り上げます。
政府のマイナ保険証の普及策について、窓口職員の目には、どう映っていたのでしょうか。(マイナ保険証取材班)
◆一本化は「事情を抱えた人への想像力も配慮も足らない」
【49歳女性 市役所の会計年度職員 埼玉県】
今年3月まで、埼玉県内の市役所で3年半マイナンバーカードの交付や更新の仕事をしました。今は別の市役所で働いています。
保険証の一本化には反対です。
単純に、現行の保険証もマイナンバーカードも保険証として「使える=選べる」のならば便利なのであって、一本化で「選べない」のは不便です。
さらにマイナンバーカードの交付や更新をしていて、そのやり方をみていると、いろいろな事情を抱えた方への想像力も配慮も足りません。
本当に便利なものだったら、スマホのようにいつの間にか浸透するはずです。
ちなみに私はマイナンバーカードに懐疑的でしたが、マイナポイントにつられて作りました。私は高校生の子供がおり、授業料の援助申請や、住民票や課税非課税証明のコンビニ交付で助かっています。
ただ、そういうことに無縁な方もいらっしゃいます。
マイナンバーカードを浸透させたいならば、10年、20年のスパンで考えるべきだと思います。
特にお年寄りが訳も分からないまま、取得しなければと右往左往されているのは本当にお気の毒に感じました。
市町村によって交付の仕方(時間、場所など)があるとは思いますが、引きこもりや精神疾患等で本人確認用の写真を撮ることも難しい方々、申請か交付時に来庁しないといけないけれども、移動が難しい方もいらっしゃいます。
寝たきりなど本人の意思確認が難しい状態であるので、申請できていない方々もいらっしゃいます。
現行の保険証も引き続き使用できれば、そのような方々のご家族が心配する必要もなくなると思います。
今ある保険証などと併用できれば助かる方がいらっしゃるのに、乱暴に一本化しようとしているように感じます。
夫婦別姓もそうですが、選択肢があるから豊かなのであって、既存の保険証で問題がないのであれば、既存の保険証かマイナ保険証かを選べることがよいと思っています。
どうしてマイナ保険証だけにする必要があるのか、多くの方々が納得できる説明はされていないと思います。
これでは「本当の目的は他にあるのではないか」と疑われても仕方ないと思います。
【取材班から】
「いろいろな事情を抱えた方への想像力も配慮も足らない」
マイナンバーカードの交付を担った女性職員の実感です。
マイナ保険証に一本化する、その制度設計自体に無理があるようにしか思えません。
マイナ保険証のほうが使いやすい、便利だと言う人はマイナ保険証を使えばいい。でもマイナ保険証を使いづらい人は、これまで通り保険証を使えるようにすればいい―。取材班にも、読者の方々から、こういった指摘がよく届きます。
この女性職員がマイナンバーカードの交付に携わっていた頃、カードを取得したり、カードに保険証をのひも付けたりすると最大2万円分のポイントを付与する政府の「マイナポイント」事業が行われていました。
女性職員が勤めていた役所でも、ポイント効果で多くの人がカードの申し込みに訪れたそうです。
ただ、高齢者の人たちは「保険証がすぐ使えなくなるのでは」などの漠然とした不安から嫌々作るというケースが目立ったとのこと。
「ポイント付与について、しっかり理解されている方はまれで、現金を振り込んでもらえると思っていたり、ポイントをもらうためにキャッシュレス決済を用意したはいいが、それからどうしたらいいのか分からず。また窓口に戻ってこられたり…。手間がかかっている方ほどちゃんとポイントを使えたのかなと心配しました」
こう振り返ります。
マイナ保険証のメリットを理解して登録した人が、どれほどいたのでしょうか。ポイント頼みの普及策では、いまだにマイナ保険証の利用率が低いのも、うなずけます。
マイナ保険証の普及は、医療のデジタル化推進のための手段に過ぎないはずです。
マイナ保険証を普及させることが、いつの間にか政府の目的に置き換わってしまったようにしか思えません。
女性職員は「選択肢があるから豊か」だと言います。
効率化や利便性も必要でしょうが、マイナ保険証を選択しづらい人であっても、安心して医療を受けられる社会であることを願います。
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