【社説①・12.07】:東南海地震80年 「いつでも」に備えよう
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・12.07】:東南海地震80年 「いつでも」に備えよう
80年前の1944年12月7日、静岡県浜名湖沖から三重県沖までを震源域とする昭和東南海地震(M7・9)が起きた。死者は1183人に上るとされる。
その2年後の46年12月には四国沖で昭和南海地震(M8・0)が発生し、日本列島の南に位置する南海トラフでは歴史的に、巨大地震が繰り返し起きている。
前回の発生から80年。次の南海トラフ地震がいつ起きても不思議ではないと考えて対策を講じることが重要だ。それが不意の内陸地震に備えることにもなる。
昭和に起きた前回の巨大地震の前、つまり前々回は1854年12月に安政東海地震(M8・4)、その30時間後に安政南海地震(M8・4)が起きている。前回と前々回の間隔は90年。前回から80年がたつが、次の巨大地震が迫る状況を数字で表すことは難しい。
政府の長期評価は、南海トラフ地震が今後30年間に発生する確率を70~80%としている。
切迫感はあるが、これは南海トラフ地震だけに適用される特別な手法で算出した値で、他の地震と同じ方法による評価では20%程度となる。
手法を検討する際、地震学者らは「20%が妥当」としたが、低確率では防災予算が取りにくくなるとの意見に押し切られた形だ。
今年8月8日、日向灘でM7・1の地震が起き、南海トラフ地震の発生に注意を促す臨時情報が初めて発表された。この地震の影響により、南海トラフ地震が起こる確率は普段より数倍高くなったとされるが、その根拠にも地震学者の間に疑問の声がある。
高い確率や注意情報を発表することで防災対策が進めばいい、との考え方もあるかもしれない。
ただ、注意情報が発表されるのはまれで、南海トラフ地震はほとんどの場合、前触れなく起こる。南海トラフ地震よりも先に内陸の活断層で大きな被害を出す強い地震が起こる可能性もある。
政府は、地震の発生確率には依然、科学的な議論があることを率直に説明するとともに、確率の算出や発表の方法を再検討する必要がある。それが災害情報への信頼をより高めるのではないか。
地震に限らず、災害は「いつでも」「どこでも」起こり得る。家具の固定、家族との連絡方法や避難場所、食料や水の少なくとも3日分の備蓄など備えをいま一度、確認しておきたい。
元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年12月07日 07:27:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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