《社説②・12.08》:南海トラフ情報 備えを積み重ねる機会に
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説②・12.08》:南海トラフ情報 備えを積み重ねる機会に
8月の南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)について内閣府が行ったアンケート結果が公表され、取るべき対応に悩む自治体の現状が浮かんだ。
回答した市町村の65%が「戸惑うところもあった」としたほか、13%は「何をすべきかすぐには分からなかった」とした。
調査対象は南海トラフ地震の防災対策推進地域に指定されている707市町村。県内も南信地方などの34市町村が含まれる。
巨大地震の発生確率が普段よりも高まっているが、起きると決まったわけではない。その可能性自体はそもそも低いという、曖昧な情報である。
政府は、予知を前提に組み立てていた巨大地震対策の枠組みを2017年に転換し、震源域で異常現象を観測した場合に防災対応を促す臨時情報の仕組みを設けた。今回が初めての発表だった。
危険性をいつもより気にかける一方、日常の社会経済活動は継続する。そんな相反する課題に直面した自治体が対応に戸惑ったのは当然とも言える。
政府は今後、自治体や企業向けの指針見直しを検討する。今の科学で地震の正確な予測は難しく、曖昧にならざるを得ない情報をどう扱うか。単純な答えはない。日常と非常対応の両立の道を粘り強く探っていかねばならない。
8月の発表時、自治体の対応は分かれた。高知市のよさこい祭りや徳島市の阿波おどりは、注意を呼びかけつつ開催。一方、和歌山県白浜町は海水浴場を閉鎖し、花火大会も中止にした。
今回のアンケートでは、30自治体が避難所を開設。37自治体がイベントの中止や延期に踏み切ったと答えている。
自治体からは、取るべき対応を政府が統一的に示してほしい、との声が上がっている。ただ、防災対策推進地域は茨城県から沖縄県の広範囲にわたり、海抜や津波到達想定などの条件も違う。
大枠は政府が示すとしても、実際の対応は自治体が主体的に考える必要がある。発生に至らずに終わった今回の臨時情報を、巨大地震を具体的にイメージして備えを積み重ねる契機としたい。
南海トラフでは100~150年ほどの間隔で巨大地震が発生している。近いところでは1944年12月7日の昭和東南海地震がある。きのうで80年が過ぎた。2年後の昭和南海地震は、これに連動して起きたと考えられている。
揺れ動く大地に生きている事実を、改めて理解したい。
元稿:信濃毎日新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年12月08日 09:30:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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