【主張②・12.14】:トランプ氏の布陣 力による平和を追求せよ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【主張②・12.14】:トランプ氏の布陣 力による平和を追求せよ
トランプ次期政権の外交・安全保障、経済通商分野の閣僚や高官の陣容が固まった。
トランプ氏はレーガン元大統領が東西冷戦の勝利に導いた「力による平和」の実現を志向している。それには抑止力となる強固な軍事力と民主主義諸国の結束が欠かせない。しかし、その陣容からみえる政策の優先度には不安も覚える。
トランプ氏はまず、国務長官にルビオ上院議員、国家安全保障問題担当の大統領補佐官にウォルツ下院議員を起用した。外交安保政策の要に対中強硬派で同盟関係を重視してきた実力派を据えたことは評価できる。
だが、国防長官候補のヘグセス氏は性的暴行疑惑が浮上し、上院承認が危ぶまれる。イラク、アフガニスタンに従軍したが、政府や軍で要職に就いた経験はない。トランプ氏は、現政権が推進した人種や性別の多様性重視の是正、国防総省のリストラを指揮させるという。
実力主義に基づく強靱(きょうじん)な軍組織への回帰には不断の努力が必要だが、1期目と異なり世界は欧州、中東、アジアで危機が連鎖し、全面戦争に発展する危うさがある。国防長官には現実主義の戦略観を持ち、米軍将官や同盟諸国からの信頼を得る資質が欠かせない。1期目の初代長官、マティス氏のような人物がふさわしいのではないか。
トランプ外交が最初に試されるのは早期停戦に意欲を見せるウクライナだろう。担当特使に指名されたケロッグ退役陸軍中将は、現行の最前線を停戦ラインとし、ウクライナの北大西洋条約機構(NATO)加盟を凍結する和平案をトランプ氏に進言したことで知られる。
だが、停戦を急いでウクライナに安全の保証を提供できなければ、ロシアに再侵略の機会を与え、日本周辺での専制国家による侵略も誘発しかねない。
通商政策の司令塔となる大統領上級顧問には1期目で対中貿易戦争を主導したナバロ氏が指名された。中国だけでなく同盟・同志国にも関税引き上げを突きつけ、米国の実利を最優先した取引外交を復活させるつもりだろう。「力による平和」を追求するのであれば同盟国との亀裂を繰り返してはならない。
日本は米国の世界規模の同盟網のつなぎ役となるべきだ。石破茂首相にその気概はあるだろうか。
元稿:産経新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【主張】 2024年12月14日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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