【社説①・12.16】:雑居ビルの安全 避難経路の確保促進を
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・12.16】:雑居ビルの安全 避難経路の確保促進を
札幌市の繁華街ススキノの雑居ビルで11月に起きた火災を巡り、避難経路の不備など安全上の問題が浮上している。
雑居ビルの防火や避難について、建築基準法など法令上の安全基準は、痛ましい火災が起きるたびに強化されてきた。
しかし法令の改正前に建てられたビルは新たなルールが適用されず、「既存不適格建築物」と呼ばれる。火災があったススキノのビルもそうだった。
既存不適格は違法ではない。とはいえビル火災は被害が甚大化しやすい。現行法への不適合を放置したままでは利用者や周辺地域の不安が拭えない。
国は自治体と協力して、各地に数多くある既存不適格ビルの実態把握に努めるべきだ。同時に、安全確保のための改修をより強く促す施策を積極的に進めなければならない。
雑居ビルは、1971年の改正建築基準法に基づき、外から救助隊が入る「非常用進入口」を3階以上の各階に設ける。74年には6階以上でバルコニーなどがない場合、建物内に2カ所以上の階段を設ける「二方向避難」も義務付けられた。
ススキノのビルは6階建てで68年に建てられた。ビルの階段は1カ所で、出火元のガールズバーがあった2~3階は進入口が大きく開かない構造だった。
閉鎖的な空間で発生した極めて危険な火災だった。
21年に大阪の雑居ビルのクリニックが放火され26人が死亡した事件を受け、国は階段の増設や避難に有効なバルコニーの設置、退避区画の確保などの改修費に補助を出す事業を始めた。
しかし申請は低調という。経費や手間を敬遠するビル所有者らが多いとみられる。事は人の生命にかかわる。国は利用しやすく、より実効性のある支援策を考えてもらいたい。
自治体はビル所有者らに安全の徹底を不断に求めることが欠かせない。利用者は避難経路などの確認を習慣付けたい。
ガールズバーの2~3階は、らせん階段でつながっていた。36人が死亡した19年の京都アニメーション放火殺人事件では、らせん階段を伝って熱風が一気に広がったとされる。そうした構造に有効な防火対策の導入も検討すべきではないか。
ガールズバーに放火した疑いのある男性は購入したガソリンを持ち込んだとみられる。
ガソリンの販売店は客に本人確認書類の提示を求めて使用目的を確認し、販売記録を作成する。だが、目的を偽り犯罪に悪用する例が後を絶たない。規制の厳格化も検討課題だろう。
元稿:北海道新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年12月16日 04:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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