人気作家の村上春樹さん(69)が4日、37年ぶりに国内で記者会見を開いた。母校の早大(東京都新宿区)で開かれた、研究センター「村上ライブラリー」(仮称)の設立発表会見に出席。自身の原稿や世界各国で翻訳された資料などを寄贈すると明らかにした。大学はこれを活用し、名前を冠した施設の設置を検討。来年度から整備を進める。早大には、創立者の大隈重信の名前を取った「大隈講堂」など、功労者の名前を付けた施設がある。村上氏も、卒業生のレジェンドに仲間入りする。

早大にハルキ殿堂!村上春樹さん母校に資料寄贈発表
早大への所蔵資料の寄贈と文学に関する国際的研究センター構想についての記者会見に出席した村上春樹氏(撮影・山崎安昭)
早大にハルキ殿堂!村上春樹さん母校に資料寄贈発表
会見で村上春樹氏(右)は鎌田総長にサイン本を手渡す(撮影・山崎安昭)

 村上さんは、黒いTシャツにカーキ色のジャケット、青いスニーカーで登場した。37年ぶり記者会見の理由を聞かれ、「37年前は映画『風の歌を聴け』(村上さんのデビュー作)が作られた時。今回は、僕にとってすごく大事なことだし、きちんと話さなきゃいけないと思った」と強調。「子どもがいないので、僕がいなくなった後、資料が散逸すると困る」と、資料寄贈について説明した。蔵書や2万点近くあるレコードが並ぶ書斎のような空間が、設置される計画がある。

 ライブラリーには、文学研究や、留学生を含めた学生の交流など、4つ~5つの機能が構想に上がる。「僕の作品を研究したい人の役に立つのなら、それに勝る喜びはない。第2の村上春樹が出てくるといい。文化交流の1つのきっかけになればと思う」。また、研究者向けの「スカラシップ(奨学金制度)も立ち上げられれば、言うことはない」とも述べた。「村上春樹記念館」という名前も挙がったが、「まだ死んでないので」と笑いを誘った。

 現時点では、施設はキャンパス内の「坪内博士記念演劇博物館」(通称「エンパク」)の近くに設けられる予定という。従来の施設を改装するのか、新設するかは未定。会見に同席した鎌田薫総長は、「世界中の村上ファン、日本文学、日本文化をより深く学びたいと考える研究者が、必ず訪れるような拠点にしたい」と力を込めた。

 早大には大隈講堂、早大教授を務めた明治時代の文学者・坪内逍遥の名前を冠したエンパク、美術史家の会津八一の名を連ねた「会津八一記念博物館」がある。今年3月には早大歴史館も開館。「村上さんの施設も、キャンパスのミュージアム化の柱になる」と、広報室では期待を込める。

 約1時間の会見では、村上さんが大学在学中に経営を始めたジャズバーに大学の教授がやってきて、「君もいろいろ大変だな」と単位をくれた思い出などを語り、しばしば笑いに包まれた。最後に「もっと厳しい質問が出るかと思ったら、みんなが親切でよかった」と、にこやかに話した。【赤塚辰浩】