路地裏のバーのカウンターから見える「偽政者」たちに荒廃させられた空疎で虚飾の社会。漂流する日本。大丈夫かこの国は? 

 路地裏のバーのカウンターから見える「偽政者」たちに荒廃させられた空疎で虚飾の社会。漂流する日本。大丈夫かこの国は? 

【社説①】:年の終わりに考える 和解の記憶増やしたい

2019-12-31 06:10:29 | 【第二次世界大戦・敗戦・旧日本軍・広島、長崎原爆投下・核兵器禁止条約

【社説①】:年の終わりに考える 和解の記憶増やしたい

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①】:年の終わりに考える 和解の記憶増やしたい 

 皇居のお堀の脇に、銀色をした高い建物があります。「昭和館」です。国立の施設で、戦中、戦後の庶民生活を伝えています。

 小学生の社会科見学で選ばれる定番コースだそうです。確かに、首都圏からたくさんの小学生の団体が来ていました。

 人気の秘密は、なんと言っても昭和時代の服や生活用品の実物が展示されていることです。

 最も大きい展示物は「旋盤」でしょう。石川県の軍需工場に設置されていたものです。高速で回転する加工物を削り、部品に仕上げる機械です。

 ◆海外からの若者たち

 戦争末期には人手が足りなくなったため、勤労動員の学生たちが旋盤を動かしていました。

 昭和館にはどこにも説明はありませんが、実は動員、徴用された人の中には、日本本土以外から来た若者もいたのです。

 日本が統治していた朝鮮半島や、日本と戦争状態にあった中国から来た人たちが、工場のほか、炭鉱や製鉄所などで長時間、過酷な労働に従事させられました。

 「もし、彼らのことが昭和館のような公共の場所で紹介されていたら、彼らも心が安らぎ、問題はもつれなかったはずです」

 戦時中の強制動員を研究している専門家の一人が、そう話していたのが耳に残っています。

 問題とは、元徴用工の人たちが起こした一連の訴訟のことです。一九九〇年代以来、日本と韓国で長い裁判が続きました。その結果、二〇一八年十月になって韓国の大法院(最高裁)は、日本企業に賠償を支払うよう命じる確定判決を出したのです。

 その後、対立は経済、安全保障の分野にも広がりました。二十四日に一年三カ月ぶりの日韓首脳会談が中国で実現し、関係改善の動きがようやく見えてきました。

 ◆ぶつかる国民の物語

 ただ、根本的な原因は、日本と韓国の歴史認識の食い違いです。歴史とはそもそも、その国の事情に合わせた「国民の物語」として記憶されるものです。一つの歴史が、国によって違った内容で記憶されるのです。歴史学を専門とする、米コロンビア大学のキャロル・グラック教授の指摘です。

 日本と中国、韓国の間では摩擦が起きやすい構造があります。

 「過去の戦争についてのそれぞれの国民の物語がぶつかり合い、現在において政治的かつ感情的な敵対心が生まれている」(『戦争の記憶』講談社現代新書)と、教授は説明しています。

 一方日本側は、一九六五年の日韓国交正常化の際に結ばれた請求権協定で「完全かつ最終的に決着した」とされていることから、謝罪にも賠償にも応じていません。

 戦時中、外国人への強制労働を行ったドイツは、各地にあった関連の施設を保存しています。

 例えば首都ベルリン郊外にあるザクセンハウゼン強制収容所。今は追悼博物館となっています。四五年までに数十万人が、強制労働させられたそうです。

 今年の夏、ベルリンから電車で四十分ほどかけて、現地に行ってみました。

 欧州各地からの観光客で大変な人出でした。さらに地元の高校生たちも、バスで訪れていました。展示は写真や記録文書などを網羅した、詳細なものでした。

 ◆隣国の価値を再認識

 強制労働をさせたドイツの企業は基金を通して、多くの被害者への補償を行いました。日本とは単純に比較できないとはいえ、歴史を語り伝えようというドイツの人たちの強い意志を感じました。

 逆に、自分たちの記憶や物語をぶつけ合い、「記憶の政治」を進めれば何が起きるのでしょうか。今年一年、われわれはそれを、実際に体験しました。

 メディアに刺激的な記事が増え、交流が減り、経済にも影響が出ました。

 日本と韓国は隣国として多方面で密接につながっています。このことを、改めて認識する結果になったともいえるでしょう。

 歴史の記憶を全面的に書き換えるには大変な労力が必要ですが、新たな歴史を加え、「共通の記憶」に変えることはできると、グラック教授は言います。その例はハワイの真珠湾です。

 二〇一六年十二月、日米の首脳が、そろって、この地を訪問しました。初めてのことでした。

 そして、太平洋戦争の開戦につながった一九四一年の真珠湾攻撃を振り返りながら、犠牲者を慰霊したのです。

 安倍晋三首相は、この時「日本は平和国家としての歩みを貫く」と重ねて誓っています。

 こうして「戦争の記憶」は、新しい「和解の記憶」に生まれ変わったのです。

 日韓の間でも、記憶を新たにする努力を始めたい。きっとできるはずです。

 元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2019年12月29日  06:10:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【筆洗】:<バカだな バカだな だまされちゃって 夜が冷たい 新宿の女>は

2019-12-31 06:10:26 | 【社説・解説・論説・コラム・連載】

【筆洗】:<バカだな バカだな だまされちゃって 夜が冷たい 新宿の女>は藤圭子さんの「新宿の女」。

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【筆洗】:<バカだな バカだな だまされちゃって 夜が冷たい 新宿の女>は藤圭子さんの「新宿の女」。

 <夜の新宿 裏通り 肩を寄せあう通り雨>は八代亜紀さんの「なみだ恋」▼忘年会のカラオケが抜けていないわけではないが、いずれも東京・新宿を舞台にした流行歌。歌に出てくる新宿の人々の顔はあまり幸せそうに見えない。<はぐれ者たちが生きる辛(つら)さ忘れて酒をくみかわす町>は森進一さんの「新宿・みなと町」。人生に疲れ、涙ぐんでいる▼大繁華街のきらめくネオン、にぎわい。新宿という町のまぶしさがかえってその裏側の悲しみや孤独を想像させやすいのか。その人が引き受けていたのは新宿の悲しみや苦悩の方だったのだろう。「新宿の母」と呼ばれた占い師の栗原すみ子さんが亡くなった。八十九歳▼新宿三丁目、伊勢丹の脇。一九五八(昭和三十三)年から占いを始め、相談者は五十年間で、三百万人を超えると聞く。ご自身も貧しさの中で育った。お子さんの死、離婚。人の痛み、つらさがわがことのように感じられる方だったのだろう▼人が占いを求めるのは行く末を知りたいという願いに加え、まずは誰かに自分の身の上を聞いてもらいたいという気持ちがあるのだろう▼高度成長期。大都会の真ん中で人の痛みに耳を傾けた「新宿の母」。これもまた、記憶しておきたい「戦後日本」の光景である。

 元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【筆洗】  2019年12月29日  06:10:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。 

 

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【首相の一日】:12月28日(土)

2019-12-31 06:10:23 | 【政策・閣議決定・マイナカード・2025大阪万博、優生訴訟・公権力の暴力他】

【首相の一日】:12月28日(土)

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【首相の一日】:12月28日(土) 

 【午前】来客なく、東京・富ケ谷の私邸で過ごす。

 【午後】2時55分、東京・渋谷の美容室「HAIR GUEST」。散髪。4時50分、私邸。5時54分、東京・紀尾井町の中国料理店「維新號」。母親の洋子さん、実弟の岸信夫自民党衆院議員ら親族と食事。8時32分、私邸。

 元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 政治 【政局・首相の一日】  2019年12月29日  06:10:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説①】:自衛隊の中東派遣 国会の統制欠く危うさ

2019-12-31 06:10:20 | 【防衛省・自衛隊・防衛費、大綱・核兵器・武装・軍需産業・Jアラート・シェルター】

【社説①】:自衛隊の中東派遣 国会の統制欠く危うさ

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①】:自衛隊の中東派遣 国会の統制欠く危うさ 

 政府が中東地域への自衛隊派遣を閣議決定した。調査・研究が名目だが、国会の議決を経ない運用は、文民統制の観点から危ういと言わざるを得ない。

 自衛隊の中東派遣は、日本関係船舶の航行の安全確保のため、防衛省設置法四条の「調査・研究」に基づいて実施される。

 活動領域はオマーン湾やアラビア海北部、アデン湾の三海域。海上自衛隊の護衛艦一隻を派遣し、アフリカ・ソマリア沖で海賊対処活動に当たるP3C哨戒機二機とともに、海域の状況について継続的に情報収集する。派遣期間は一年で、延長する場合は改めて閣議決定する、という。

 ◆米追随、イランにも配慮

 自衛隊派遣のきっかけは、トランプ米大統領が、ペルシャ湾やホルムズ海峡などを監視する有志連合の結成を提唱し、各国に参加を求めたことだ。米軍の負担軽減とともに、核問題で対立するイランの孤立化を図る狙いだった。

 しかし、イランと友好関係を築く日本にとって、米国主導の有志連合への参加は、イランとの関係を損ないかねない。

 そこでひねり出したのが、有志連合への参加は見送るものの、日本が独自で自衛隊を派遣し、米軍などと連携して情報共有を図るという今回の派遣方法だった。

 急きょ来日したイランのロウハニ大統領に派遣方針を説明し、閣議決定日も当初の予定から遅らせる念の入れようだ。自衛隊の活動範囲からイラン沖のホルムズ海峡を外すこともイランへの刺激を避ける意図なのだろう。

 米国とイランのはざまでひねり出した苦肉の策ではあるが、トランプ米政権に追随し、派遣ありきの決定であることは否めない。

 そもそも、必要性や法的根拠が乏しい自衛隊の中東派遣である。

 ◆船舶防護の必要性なく

 中東地域で緊張が高まっていることは事実だ。日本はこの地域に原油輸入量の九割近くを依存しており、船舶航行の安全確保が欠かせないことも理解する。

 とはいえ、日本関係船舶の防護が直ちに必要な切迫した状況でないことは政府自身も認めている。

 そうした中、たとえ情報収集目的だとしても、実力組織である自衛隊を海外に派遣する差し迫った必要性があるのだろうか。

 戦争や武力の行使はもちろん、武力による威嚇も認めていない憲法九条の下では、自衛隊の海外派遣には慎重の上にも慎重を期すべきではないのか。

 調査・研究に基づく派遣は拡大解釈できる危うさを秘める。米中枢同時テロが発生した二〇〇一年当時の小泉純一郎内閣は、法律に定めのない米空母の護衛を、この規定を根拠に行った。

 今回の中東派遣でも、現地の情勢変化に応じて活動が拡大することがないと断言できるのか。

 日本人の人命や財産に関わる関係船舶が攻撃されるなど不測の事態が発生し、自衛隊による措置が必要な場合には、海上警備行動を新たに発令して対応するという。

 この場合、自衛隊は武器を使用することができるが、本格的な戦闘状態に発展することが絶対にないと言い切れるのだろうか。

 最大の問題は、国権の最高機関であり、国民の代表で構成される国会の審議を経ていないことだ。国会による文民統制(シビリアンコントロール)の欠如である。

 自衛隊の海外派遣は国家として極めて重い決断であり、そのたびに国会で審議や議決を経てきた。

 国連平和維持活動(PKO)協力法や、インド洋で米軍などに給油活動するテロ対策特別措置法、イラクでの人道支援や多国籍軍支援を行うイラク復興支援特措法、アデン湾で外国籍を含む船舶を警護する海賊対処法である。

 自衛隊の活動を国会による文民統制下に置くのは、軍部の独走を許し、泥沼の戦争に突入したかつての苦い経験に基づく。

 日本への武力攻撃に反撃する防衛出動も原則、事前の国会承認が必要だ。自衛隊を国会の統制下に置く意味はそれだけ重い。

 今回の中東派遣では、閣議決定時と活動の延長、終了時に国会に報告するとしているが、承認を必要としているわけではない。

 ◆緊張緩和に外交資産を

 国会の関与を必要としない調査・研究での派遣には、国会での説明や審議、議決を避け、政府の判断だけで自衛隊を海外に派遣する狙いがあるのだろうが、国会で説明や審議を尽くした上で可否を判断すべきではなかったか。

 閣議決定にはさらなる外交努力を行うことも明記した。米イラン両国との良好な関係は日本の外交資産だ。軍事に頼ることなく緊張を緩和し、秩序が維持できる環境づくりにこそ、外交資産を投入すべきだ。それが平和国家、日本の果たすべき役割でもある。

 元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2019年12月28日  06:10:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【筆洗】:花の暦にも似て、花札は一年のそれぞれの月を、

2019-12-31 06:10:17 | 【第二次世界大戦・敗戦・旧日本軍・広島、長崎原爆投下・核兵器禁止条約

【筆洗】:花の暦にも似て、花札は一年のそれぞれの月を、十二の花木で表している。

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【筆洗】:花の暦にも似て、花札は一年のそれぞれの月を、十二の花木で表している。

 一月の松に始まり、梅、桜と続き、最後の今月は桐(きり)である。花は五月頃で、冬には葉を落とす桐が十二月である理由は乏しい。「ピンからキリまで」のキリにしゃれたのだと、国語学者の金田一春彦さんは『ことばの歳時記』に書いている▼紋所にも似た図柄は、鳳凰(ほうおう)を伴い、派手な五色で彩られる。しゃれから生まれたにせよ、締めを飾るにふさわしい、厳かにして華やかな趣を感じなくもない▼昨日は多くの職場で今年のキリである仕事納めだった。心を軽くしつつ過ぎ行く一年を厳粛にかみしめる。そんな方もいただろう▼貿易商の家に育った作家の陳舜臣さんが桐にまつわる戦後の思い出を随筆に書いている。中国から仕入れた桐に電動ノコギリをかけると、突然歯がはじかれることがあった▼ひそんでいた銃弾のいたずらという。日本軍の弾かもしれず、輸出元に文句は出なかった。戦後の家庭に、家具になって届くことも多かった木材である。<平和な植物にも、戦争の影は覆いかぶさっていたのである>と作家は書いた▼戦争を知る人たちが今年も世を去った。桐の中から時折響いてくる硬い音のように、わが国の進む道に硬質の言葉を発してきた人、道しるべを示そうとした人は、年々少なくなる。失われるものの重みを思う年のキリである。

 元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【筆洗】  2019年12月28日  06:10:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

 

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【首相の一日】:12月27日(金)

2019-12-31 06:10:14 | 【政策・閣議決定・マイナカード・2025大阪万博、優生訴訟・公権力の暴力他】

【首相の一日】:12月27日(金)

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【首相の一日】:12月27日(金) 

 【午前】8時43分、公邸から官邸。53分、国家安全保障会議の9大臣会合。9時8分、閣議。39分、東京・富士見の日本歯科大付属病院。歯の治療。10時44分、官邸。11時4分、皇居。内奏。38分、官邸。

 【午後】0時43分、萩生田光一文部科学相。1時59分、山口泰明自民党組織運動本部長。2時36分、東京・六本木のテレビ東京。BSテレ東の報道番組の収録。3時30分、公邸。55分、自民党の月刊女性誌「りぶる」掲載用のラグビー・ワールドカップ(W杯)日本大会に出場した姫野和樹、中島イシレリ、田中史朗各選手との対談。平沢勝栄同党広報本部長同席。4時54分、官邸。5時1分、二階俊博同党幹事長。19分、北村滋国家安全保障局長、林肇官房副長官補、今井尚哉首相補佐官、外務省の秋葉剛男事務次官、滝崎成樹アジア大洋州局長。31分、林官房副長官補、外務省の山田重夫総合外交政策局長、正木靖欧州局長、岡野正敬国際法局長。41分、アフガニスタンの発展に尽力した故中村哲さんへの感謝状を遺族らに授与、叙勲を伝達。6時5分、内閣記者会との懇談会。31分、官邸職員との懇談会。55分、東京・赤坂の日本料理店「京都 瓢〓 赤坂店」。長谷川栄一首相補佐官、原邦彰内閣総務官、秘書官らと食事。8時2分、東京・虎ノ門のホテル「アンダーズ東京」。レストラン「ザ タヴァン グリル&ラウンジ」で橋下徹元大阪市長、日本維新の会代表の松井一郎大阪市長と会食。菅義偉官房長官同席。10時48分、東京・富ケ谷の私邸。

 ※〓は口へんに喜

 元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 政治 【政局・首相の一日】  2019年12月28日  06:10:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説①】:安倍首相の7年 議会民主制を蝕む驕慢 

2019-12-31 06:10:11 | 【国会(衆議院・参議院・議運 ・両院予算委員会他・議員定数・「1票の格差」...

【社説①】:安倍首相の7年 議会民主制を蝕む驕慢 

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①】:安倍首相の7年 議会民主制を蝕む驕慢  

 安倍晋三首相の政権復帰から七年がたった。通算在職日数が歴代最長となる一方で、(おご)緩みなど長期政権の弊害は、民主主義基盤(むしば)つつある。

 年の瀬に現職国会議員らの逮捕に至った「カジノ汚職」が、政権来し方象徴しているようでもある。二〇一二年十二月に発足した第二次安倍内閣以降の七年間、日本の民主主義がいい方向に進んだとはとても言えない現状だ。

 第一次内閣を含む安倍首相の通算在職日数は今年十一月、最長だった明治・大正期の桂太郎首相を抜いた。自民党総裁任期の二一年九月まで続投すれば、最長記録を更新し続けることになる。

 ◆近しい関係者への厚遇

 まれに見る長期政権だ。政策実行力や外交交渉力を醸成する政権安定は、一般的には望ましい。

 しかし、安倍政権は長期政権ゆえの弊害の方が目立つようになった。その典型が今年後半に野党の追及が本格化した「桜を見る会」の問題であり、さかのぼれば森友・加計学園を巡る問題だろう。

 共通するのは、首相に近しい関係者への厚遇であり、それが発覚した後、首相に都合の悪い記録を抹消する政権全体の姿勢である。

 国有地の格安売却が問題となった森友問題では、財務官僚が公文書の改ざんにまで手を染めた。官僚機構の頂点に君臨したエリート集団の落日を思わざるを得ない。

 桜を見る会では招待者名簿が規定を理由に破棄され、復元しようと努力する姿すら見せない。記録を残して評価を後世に委ねるという基本姿勢の欠如が、安倍政権の全体に広がっている。

 なぜこうなってしまったのか。最も大きな理由は、政権中枢の力が過度に強まったことだろう。

 政策決定の主導権を、かつて行政を牛耳っていた官僚機構から、国民を代表する政治家に取り戻すことは「平成の政治改革」の主眼だった。いわゆる政治主導だ。

 ◆後継不在が緊張感奪う

 首相官邸に権限や権力を集めることは自民党に限らず、旧民主党政権も目指したことではある。

 しかし、政権中枢の増長は想定を超え、中枢に君臨する政治家には多少の無理なら押し通せるという「全能感」を、内閣人事局に人事権を掌握された高級官僚には、政権幹部への忖度(そんたく)を恥じない気風を生んでしまった。

 カジノ解禁法に限らず、特定秘密保護法や安全保障関連法、「共謀罪」法など反対が強い法律を成立させる強引さは、そうした全能感や忖度と無関係ではあるまい。

 一つの政権が長く続けば続くほど、その弊害も積もり重なる。私たちが今、目の当たりにしているのはその惨状にほかならない。

 共同通信社の最新全国世論調査によると、安倍内閣を支持する理由で最も多いのは「ほかに適当な人がいない」で48・1%に上る。

 政権交代の可能性があれば、政権運営の緊張感につながる。逆に首相に交代を迫る政治勢力の不在は政治から緊張感を奪い、政権中枢の増長を促し、長期政権を許す大きな要因となっている。

 衆院小選挙区制導入を柱とする平成の政治改革は政権交代可能な二大政党制を目指し、選挙を派閥同士の争いから政党・政策本位にする狙いがあった。派閥単位で無理な資金集めをしなくてもすむように政党交付金も導入された。

 こうした改革により、かつてのロッキードやリクルートのような大型疑獄事件は鳴りをひそめたものの、公認権や政治資金の配分権をも握る政権中枢に物言えぬ空気は与党内にも広がり、安倍首相の任期が迫る中、有力な後継候補すら見えてこないのが実態だ。

 野党側も旧民主党の政権転落後は離合集散が続く。立憲民主、国民民主両党の合流に向けた協議がようやく始まったが、政権奪還を視野に入れた土台ができるか否かが、厳しく問われる局面である。

 最も深刻な問題は、政権中枢の驕慢(きょうまん)さが、首相官邸を頂点とする行政と、国民の代表で構成される国会との関係をも変えてしまったことだ。三権分立の危機である。

 国会審議の形骸化は指摘されて久しいが、安倍政権の長期化とともに、そのひどさが増している。

 ◆権力集中の弊害を正す

 国会は国権の最高機関であり、唯一の立法機関だ。行政監視や国政の調査は、民主主義の基本である三権分立を構成する重要な役割だが、国会を軽視する政権の振る舞いで大きく損なわれている。

 安倍政権は要請があっても国会を開こうとせず、予算委員会の開催にも応じようとしない。野党の質問にはまともに答えず、文書の提出も拒む。これでは国会が自らの権能を果たせるわけがない。

 権力集中の弊害は正し、民主主義を立て直さねばならない。切迫性を欠く憲法改正よりも、よほど緊急を要する政治課題である。

 元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2019年12月27日  06:10:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

 

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【筆洗】:放課後の校庭だろうか、夕暮れどきの公園だろうか。

2019-12-31 06:10:08 | 【少子化問題(異次元の対策・子どもの居場所・不妊治療・少母化・婚姻数の激減・

【筆洗】:放課後の校庭だろうか、夕暮れどきの公園だろうか。

  『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【筆洗】:放課後の校庭だろうか、夕暮れどきの公園だろうか。

 初めて鉄棒の逆上がりができたそのときを小学五年生の女の子が詩にしている。昭和五十二年の作品を詩集『子どもの詩サイロ』でみつけた▼<まめだらけの手で/鉄ぼうをにぎり/うでをぎゅっと締めて/力いっぱい地面をける/地球がぐるっと一回転した…うれしさをこらえきれなくて/友達の間をとび歩いた>。挑んでもできなかったことが、ついに可能になる。一回転する光景と友だちの顔、高ぶり…。運動する力が驚くほど伸びた記憶が、強く心に刻まれる年ごろだろう▼そんな年ごろの体力に残念な傾向があるという。小学五年生と中学二年生を対象とする全国体力テストの成績が下がった。特に小五の男子は走力が落ち、過去最低の成績だ。スポーツ庁はたいへんな事態とみているそうで、対策の検討を始めた▼遊ぶことも何かに挑むことも、友人とのやりとりも小さなゲーム機器や携帯端末で可能になった時代だ。運動時間の減少は体力の低下の理由のひとつらしい▼かつてあった放課後の外遊びをまったくしない小学生が、特に都会で大多数だという調査の結果が少し前に報じられた。関係は大いにありそうである▼走力が低下する重みはよく分からないが、校庭や公園で友人と味わう喜びや、光景が一変するような驚きの経験まで失われているのなら残念だ。

 元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【筆洗】  2019年12月27日  06:10:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。 

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【首相の一日】:12月26日(木)

2019-12-31 06:10:05 | 【政策・閣議決定・マイナカード・2025大阪万博、優生訴訟・公権力の暴力他】

【首相の一日】:12月26日(木)

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【首相の一日】:12月26日(木) 

 【午前】11時17分、皇居。帰国の記帳。34分、官邸。報道各社のインタビュー。49分、岡村善文経済協力開発機構(OECD)政府代表部大使らの新任あいさつ。

 【午後】0時50分、東京・大手町の経団連会館。経団連審議員会に出席し、あいさつ。1時21分、官邸。30分、石川正一郎拉致問題対策本部事務局長。2時12分、北村滋国家安全保障局長、林肇官房副長官補、今井尚哉首相補佐官、秋葉剛男外務事務次官、高橋憲一防衛事務次官。56分、山口新聞のインタビュー。3時53分、衛藤晟一少子化対策担当相。4時25分、公邸。テレビ朝日のインタビュー。54分、官邸。5時4分、滝沢裕昭内閣情報官。20分、バリアフリー・ユニバーサルデザイン推進功労者表彰式。56分、山口那津男公明党代表。6時38分、公邸。警察庁の栗生俊一長官、松本光弘次長、北村博文交通局長、大石吉彦警備局長、警視庁の三浦正充警視総監、斉藤実副総監と会食。8時25分、全員出る。32分、杉田和博官房副長官。34分、杉田氏出る。宿泊。

 元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 政治 【政局・首相の一日】  2019年12月27日  06:10:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【ローマ教皇】:再審請求中の袴田さんと接触希望してた

2019-12-31 02:00:30 | 【人権・生存権・同性婚・人種差別・被差別部落・ハンセン病患者・強制隔離】

【ローマ教皇】:再審請求中の袴田さんと接触希望してた

  『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【ローマ教皇】:再審請求中の袴田さんと接触希望してた 

 11月下旬に来日したローマ教皇フランシスコ(83)が東京ドームでのミサの中で、静岡県一家4人強盗殺人事件で死刑が確定し、冤罪(えんざい)を訴え再審請求中の袴田巌さん(83)との接触を希望していたことが30日、カトリック関係者への取材で分かった。教皇が参列者と交流する機会に袴田さんに近寄って顔を合わせる予定だったが、会場で姿を確認できず、実現しなかったという。

羽田空港に到着したフランシスコ教皇=23日午後、東京都大田区

羽田空港に到着したフランシスコ教皇=23日午後、東京都大田区

羽田空港に到着し、出迎えた関係者と握手するフランシスコ教皇(中央)=23日午後、東京都大田区

 羽田空港に到着し、出迎えた関係者と握手するフランシスコ教皇(中央)=23日午後、東京都大田区

 教皇は死刑廃止を訴えており、実現すれば死刑制度を巡る議論が深まるとの期待があった。教皇はこれまで公の場で、袴田さんのことはミサ後に知ったとしていた。ただ関係者によると、ミサの前にバチカン関係者が袴田さんの情報を伝え、教皇も接触に強い意欲を示していた。

ローマ教皇フランシスコのミサが終了し、会場の東京ドームを後にする袴田巌さん(共同)

  ローマ教皇フランシスコのミサが終了し、会場の東京ドームを後にする袴田巌さん(共同)

 個別に面会する機会を設けることは難しかったため、信者である袴田さんを11月25日の東京ドームでのミサに招待することで折り合いをつけたとされる。当日は約5万人の信者らと共に袴田さんも参列した。

 ミサに先立ち、教皇が専用オープンカーで会場を回りながら参列者と触れ合う際、袴田さんに近寄り、言葉は交わさなくても祝福を与えるよう段取りされていた。途中で教皇が車を降りて参列者と言葉を交わす場面もあったが、袴田さんが当初予定されていた席にいなかったため、接触はかなわなかった。

 教皇は26日にローマに戻る特別機中での記者会見で、袴田さんについて問われ「その人は知らなかった。(ミサの後に)知った」と応じていた。関係者は、死刑制度を維持する日本政府に配慮した可能性を指摘している。(共同)

 元稿:日刊スポーツ社 主要ニュース 社会 【話題・ローマ教皇フランシスコの来日】  2019年12月31日  02:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。


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【2019年12月29日 今日は?】:94年・秋篠宮家に次女の佳子さま誕生

2019-12-31 00:00:10 | 【社説・解説・論説・コラム・連載】

【2019年12月29日 今日は?】:94年・秋篠宮家に次女の佳子さま誕生

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【2019年12月29日 今日は?】:94年・秋篠宮家に次女の佳子さま誕生

 ◆12月29日=今日はどんな日

  秋篠宮家に次女の佳子さま誕生(1994)

25歳の誕生日を迎えられた秋篠宮家の次女佳子さま=3日、秋篠宮邸(宮内庁提供)

  25歳の誕生日を迎えられた秋篠宮家の次女佳子さま=3日、秋篠宮邸(宮内庁提供)

 ◆出来事

  ▼北朝鮮で金正日総書記の中央追悼集会。金正恩氏が最高指導者に(2011)▼ボクシングのIBFライトフライ級王座戦で八重樫東が判定勝ち、日本選手3人目の世界3階級制覇(2015)

 ◆誕生日

  ▼浜田省吾(52年=歌手)▼岸本加世子(60年=女優)▼鶴見辰吾(64年=俳優)▼Mina(77年=MAX)▼森崎友紀(79年=料理研究家)▼生駒里奈(95年=女優)▼菖蒲まりん(99年=NMB48)▼吉橋柚花(99年=AKB48)

 元稿:日刊スポーツ社 主要ニュース 社会 【話題・今日は?】  2019年12月29日  00:03:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【政府】:馬毛島、22年度着工へ調整、米軍機訓練候補地

2019-12-30 21:22:00 | 【日米安保・地位協定・在日米軍・沖縄防衛局・普天間移設・オスプレー・米兵犯罪】

【政府】:馬毛島、22年度着工へ調整、米軍機訓練候補地

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【政府】:馬毛島、22年度着工へ調整、米軍機訓練候補地 

 政府は、米軍空母艦載機による陸上空母離着陸訓練(FCLP)の移転候補地となっている鹿児島県西之表市の馬毛島について、2022年度に飛行場など関連施設の工事を始める方向で調整に入った。関係者が30日、明らかにした。早期に訓練が実施できるよう整備を急ぐが、地元では騒音や事故へ強い懸念が出ているのが現状。政府方針通りに進むかどうかは見通せない。

 鹿児島県西之表市の馬毛島=2018年10月

 鹿児島県西之表市の馬毛島=2018年10月
 
  政府は20年1月にも中断していた環境調査を再開。20年度から環境影響評価(アセスメント)を行う段取りだ。関連費として20年度予算案に約5億円を計上した。着工は環境アセスを終えた後となる。(共同)

 元稿:東京新聞社 主要ニュース 政治 【政策・防衛省・自衛隊・米軍空母艦載機による陸上空母離着陸訓練(FCLP)の移転候補】  2019年12月30日  21:21:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【HUNTER】:「馬毛島」買収交渉 160億円で仮契約へ

2019-12-30 21:21:50 | 【防衛省・自衛隊・防衛費、大綱・核兵器・武装・軍需産業・Jアラート・シェルター】

【HUNTER】:「馬毛島」買収交渉 160億円で仮契約へ

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【HUNTER】:「馬毛島」買収交渉 160億円で仮契約へ 

 政府が、米空母艦載機の陸上離着陸訓練(タッチアンドゴー)に供することを決めている「馬毛島」(鹿児島県西之表市)の買収交渉が、よくやくまとまる方向となった。
 関係者の話によれば、島の大半を所有する「タストン・エアポート」と防衛省との間で合意に達した契約金額は160億円。島の土地のうち、細かく区分されている部分についての整理などに時間がかかっているものの、早ければ今月中にも「仮契約」を結ぶ見通しだという。

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 ■タストン社と防衛省、攻防に終止符
 馬毛島は、種子島の西方約12㎞に浮かぶ周囲16.5km(南北4.50km、東西:3.03km)、面積820ヘクタール(東京ドーム175個分)の島。鹿児島出身の立石勲氏が創業した立石建設のグループ企業「タストン・エアポート」(旧社名:馬毛島開発)が大半の土地を所有し、従業員を常駐させ滑走路を整備するなどして長年、維持管理を行ってきていた。

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 馬上島の基地化が米国との約束事項になったのは2011年6月。日米安全保障委員会(2プラス2)における共同文書に、硫黄島で行っている陸上離着陸訓練の移転先として明記されたことから、同島は「国防の島」として注目を集める存在となっていく。

 こうした中、タストン社と防衛省は2016年11月に、米空母艦載機の離発着訓練場の移転先候補地として島を買い取る交渉に入ることで合意。あとは金額の詰めを待つだけの状態となっていたが、現在滑走路となっている部分の造成費やこれまでの維持管理にかかった経費を上乗せして4百億円超の契約金額を提示したタストン社と、44億6,000万円を主張する防衛省側との溝が埋まらず、両者の駆け引きが続く状況となっていた。

 事を急ぐ必要があった防衛省は、タストン社の債権者を煽って破産申し立てをさせ、同社を破綻に追い込もうと画策したが失敗。今年に入って別の債権者が強引にタストンの役員を変更して防衛省との仮契約にこぎつけたが、追放された格好となっていた立石勲・立石建設会長らが反撃に転じ、代表に復帰して契約を白紙に戻す事態となっていた。その後もゴタゴタが続いたが、関係者の努力もあって先月から打開に向けた動きが加速していた。

 関係者によれば、タストン社と防衛省との間で合意に達した契約金額は160億円。いったん仮契約を結び、島の土地に設定された抵当権などを抹消したのち、本契約になる予定だという。抵当権抹消に要する費用は、いったん政府が貸し付ける形になるものとみられている。

 元稿:HUNTER 主要ニュース 政治・社会 【政治・社会ニュース】  2019年11月29日  07:55:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

 

 
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【HUNTER】:国防に揺れる「馬毛島」の現状

2019-12-30 21:21:40 | 【防衛省・自衛隊・防衛費、大綱・核兵器・武装・軍需産業・Jアラート・シェルター】

【HUNTER】:国防に揺れる「馬毛島」の現状

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【HUNTER】:国防に揺れる「馬毛島」の現状

20180516_h01-01-thumb-autox447-24420--2.jpg 鹿児島港から高速船で1時間30分。鉄砲伝来の地として知られる種子島(西之表市)の西之表港に着く。目的地は、そこからさらに小型船で40分。国防計画に揺れる島「馬毛島」に上陸する機会を得た。
 米空母艦載機の離発着訓練場予定地とされる馬毛島については、防衛省と地主との交渉経過ばかりに注目が集まり、島の歴史や現状についての報道は、ほとんどなかった。改めて訪れた馬毛島は……。

 

 


 ■海軍遺構に小・中学校舎、固有種の鹿も
 馬毛島は、種子島の西方約12㎞に浮かぶ周囲16.5km(南北4.50km、東西:3.03km)、東京ドーム175個分にあたる面積820ヘクタールの島だ。太平洋戦争末期には、海軍の防空監視所(下の写真)が設置されたため無人島となったが、1950年台に農業開拓団が入植し、ピーク時の59年頃には110世帯約600人が住んでいたという。島には現在も、西之表市立馬毛島小・中学校の校舎が残る。

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旧海軍の監視塔

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「海軍用地」の石碑

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今も残る馬毛島小・中学校の校舎

 のどかな島に転機が訪れたのは1970年代はじめ。旧・平和相互銀行が馬毛島開発を設立してリゾート開発を始めたころから雲行きが怪しくなり、石油備蓄基地の候補になったことで土地を手放す島民が増え始める。右翼活動家が暗躍した不正経理事件の余波で平和相互銀行が住友銀行に合併された後は、鹿児島出身の立石勲氏が創業した「立石建設」が馬毛島開発を買収して「タストン・エアポート」に社名変更。その後、タストン社が馬毛島のほぼすべての土地を買収し、同社の従業員10人以上が常駐してきた。

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立石建設の現地事務所

 かつての馬毛島は、自然豊かな島だった。トビウオの良い漁場を抱え、島には固有種のマゲシカ(県絶滅危惧2種)が生息し、野鳥の繁殖地としても知られていた。いまもガジュマルの林が残り、島の固有種である「マゲシカ」(県絶滅危惧2種)が700頭あまり生息している。

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ガジュマルの林

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島内には約700頭の「マゲシカ」

 ■25年間、1企業が島を守る
 自然豊かな島は、「国防」の拠点として注目されるようになって変貌を遂げる。島の大半を所有するタストン社は、国の要請に応える目的で造成を開始。巨額な投資で滑走路用地を整備し、社員を常駐させて維持管理を図ってきた。25年間、タストン社の親会社である立石建設が島を保有してきたことで、妙な企業の手に渡ることなく「国防の拠点」は守られてきた。

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造成された滑走路

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旧海軍監視塔から、造成された滑走路を見る

 タストン社と防衛省は2016年11月、米空母艦載機の離発着訓練場の移転先候補地として島を買い取る交渉に入ることで合意。あとは金額の詰めを待つだけの状態だ。

 島の今後に注目が集まる状況だが、取材した当日は陸自の離島防衛専門部隊「水陸機動団」が、種子島で米海兵隊と島嶼奪還に向けた共同訓練を実施中。上空を陸自のヘリが飛んでいた。「国防の島」に自衛隊が上陸する日が来るのだろうか。

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馬毛島上空を飛ぶ自衛隊のヘリ

 元稿:HUNTER 主要ニュース 政治・社会 【社会ニュース】  2018年10月16日  08:20:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

 

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【HUNTER】:「馬毛島」所有企業を追い詰める債権者と加藤自民党総務会長の関係

2019-12-30 21:21:30 | 【防衛省・自衛隊・防衛費、大綱・核兵器・武装・軍需産業・Jアラート・シェルター】

【HUNTER】:「馬毛島」所有企業を追い詰める債権者と加藤自民党総務会長の関係

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【HUNTER】:「馬毛島」所有企業を追い詰める債権者と加藤自民党総務会長の関係 

 日米安全保障委員会(2プラス2)における共同文書に、硫黄島で行われている陸上離着陸訓練(タッチアンドゴー)の移転先として明記された「馬毛島」(鹿児島県西之表市)。安倍政権は、債権者を煽って島の大半を所有する「タストン・エアポート」が破綻するよう仕向けてきたが、失敗して売却交渉自体が頓挫している。今年1月に結ばれた仮契約も、同社の交渉打ち切り通告によって白紙に戻った格好だ。
 膠着状態が続く中、動き出したのがタストンの債権者である不動産会社。タストンの親会社である立石建設が受注した、“公共事業”の工事代金を差押えるという乱暴な手段で、再び揺さぶりをかけている。改めて、関係者を取材した。

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 ■五輪アメリカ選手団のキャンプ地に危機
 国側を代表して売却交渉にあたってきたのは防衛省。タストン社の代表に、親会社である立石建設の会長・立石勲氏が返り咲いたとたん、交渉の窓口を閉ざしてしまった。これまで通り、手ごわい相手とは交渉せずに、別の債権者がタストン社及び同社の親会社である立石建設を潰すのを待つ作戦だ。

 実際、タストンの債権者である不動産会社「リッチハーベスト」(東京都)が立石建設に対する債権差押えに動き、今月5日、東京地裁が世田谷区に対し、立石建設に支払われる予定となっている工事代金の差押命令を出していた。下は、HUNTERが入手した「差押債権目録」から記述部分だけを抜粋したものである。

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 リッチハーベストが、立石建設に対し6億円近くの債権を有している形で、差押えられた債権は3件。立石建設が請け負っている3件の公共事業で支払われる予定の工事代金を、世田谷区から回収しようという算段だ。

 問題は、12億4,880万円が支払われる予定となっている⑵の「世田谷区立総合運動場陸上競技場等改装工事」。同工事が行われている世田谷区立総合運動場(大蔵運動公園陸上競技場)は、来年開催される東京オリンピックで、アメリカ選手団がチャンプ地として使用する施設なのだ。債権差押えの影響によって工事が遅れるようなことになれば、アメリカ側に迷惑をかけることになりかねないのだという。

 随分乱暴な取り立てに見えるが、リッチハーベストとはいかなる会社なのか――。調べていくと、独特の錬金術的カネ儲けの手法と、安倍政権中枢とのつながりが見えてくる。

 ■「リッチハーベスト」の裏に加藤勝信自民党総務会長?
 前述したとおり、リッチハーベストの立石建設側に対する債権の額は、確認されているだけで約6億円。返済しない立石建設側に責任がありそうに思えるのだが、同社の関係者は「とんでもない」と否定する。差押えになった債権は、不動産取引を装った賃貸借契約を巡る違約金などが膨らんだもので、実際に立石建設側が受け取った金額は1億円程度でしかないというのだ。以下、同社関係者との一問一答である。

Q:リッチハーベストとの関係と、これまでの経緯について知りたい。
A:馬毛島の維持管理にアップアップだったため、知人から紹介されたリッチハーベストに融資を申し込んだのは確かです。平成24年頃。借りたのは5,000万円が2回で1億円。ところが同社は、『うちは貸金業者ではないから』と言って不動産売買契約書を作り、1億円を売買契約の手付金としたのです。契約の対象となったのは、立石建設の本社社屋など当社関連の不動産でした。もちろん、建前上の契約だと思っていましたから言われたとおりにしました。借りる側は立場が弱いですから。

Q:金銭貸借だったということか?
A:そうです。あくまでも貸し借り。ところが、返済期限が来たところでリッチハーベストは「売買契約だ」と言い出し、物件を売らないのなら違約金として1億円を払えと請求してきたのです。裁判になりましたが、残念ながら当社の負け。書類上は、完璧だったのです。違約金だの遅延損害金などが積もり積もって、いつの間にか債権は6倍、7倍。本社ビルは差押えられるわ、代表者の自宅の競売申し立てを受けるわで、大変な騒ぎになりました。

Q:しかし、本社の土地も建物も、抵当権はついているが所有権者は変わっていない。なぜか?
A:リッチハーベストとのゴタゴタは4、5年前から。とっくの昔に大事な不動産を取り上げられているはずなのに、状況は変わっていません。リッチハーベストは、債権回収の期限を延ばす代わりに、馬毛島の専任媒介契約を要求してきたのです。たしか、最初の売買価格は380億円。その契約を結んだことで、リッチハーベストは競売を取り下げたのです。

Q:リッチハーベストの狙いは、馬毛島だったということか?
A:そうです。

Q:1億程度の貸し借りでしかないのに、なぜリッチハーベストの言いなりになったのか?
A:リッチハーベストは、いまの自民党総務会長・加藤勝信代議士との関係を強調していました。なんでも、(リッチハーベストの)役員が加藤代議士の先代である加藤六月からの深い付き合いということで。勝信代議士は大臣経験者である六月さんの娘婿。リッチハーベストに任せれば、なんとか希望の額の範囲内で島の土地を売却できると考えたのです。
  
Q:リッチハーベストの裏に、加藤勝信自民党総務会長の存在があるとみているのか?
A:もちろんです。リッチハーベストからの指示で、加藤代議士あての嘆願書を書かされたこともあります。馬毛島の売却交渉は、防衛省ではなく官邸の主導。菅義偉官房長官と加藤代議士が組んで、うち(タストンと立石建設)を潰して、安く馬毛島を手に入れようという魂胆だとしか思えないのです。
  
Q:160億円で仮契約を結んでいたが、それでは不足か?
A:既に報道されているとおり、タストンの負債額は240億円に上っています。160億円では足りないのです。防衛省も官邸も、そのことは十分に理解されているはずです。160億で島を売ればタストンは破産、立石建設も連鎖倒産ということになります。国の方から売ってくれと言っておきながら、それはないでしょう。160億を基準にするにしても、条件面での交渉は受けるべきではないのでしょうか。しかし、防衛省の担当は、私どもと会おうともしない。

Q:倒産を待っていると……?
A:だから、差押えだの、競売だのと言ってくる。加藤代議士と関係の深いリッチハーベストが。

Q:リッチハーベストとタストンとの間で、馬毛島の土地を200億円でリッチハーベストに売るという契約があったと聞いている。事実か?
A:事実です。リッチハーベストが「あくまでも所有者として防衛省と交渉するための形式的な契約書」と申し立ててきたので、馬毛島を200億円でリッチハーベストに売る売買契約書を作ってしまったんです。ですが、リッチハーベストは購入契約の契約金を一銭も払っていません。リッチハーベストは、契約書上で馬毛島を200億円で買って、防衛省に300億円で売却するつもりだったとみています。

Q:立石建設の経営は大丈夫なのか?
A:そこは、ご心配には及びません。資金の手当てもできそうですから。

Q:馬毛島に、東京電力福島第一原子力発電所の事故に伴って発生した「汚染土」を持ち込むという話があるが?
A:いろいろな話があるのは事実ですが、まずは国との協議が最優先だと考えてきました。しかし、国は私どもとの話し合いにも応じない。言いなりになる前社長はしょっちゅう呼び出していたのに、(立石建設会長の)立石勲とは話もしない。160億円では不足だと言われるのが嫌なんでしょう。先ほども申し上げましたように、負債は240億円あるんです。足りないに決まっている。タストンが欲張りのように言われてますが、自分の会社を潰してまで国に尽くす経営者がいますでしょうか?

Q:防衛省と話し合う気持ちはあるということか?
A:もちろんです。何度も協議を申し入れたわけですから。でも、連絡さえしてこない。そのうち、リッチハーベストが債権の差押えに動いてきました。国は、私どもが潰れるのを待っているのでしょう。こんなことが許されるのでしょうか?

Q:今後、どう動くつもりか?
A:差押えに対処しながら、国の動きを見守ります。 

 下が、立石建設関係者の話に出てきた「200億円の土地売買契約書」の一部である(赤いアンダーラインと書き込みはHUNTER編集部)。契約日は「平成30年6月26日」。リッチハーベストが本当に契約金額を支払うつもりだったのかどうか分からないが、不可解な債権・債務の延長線上に、この契約書が生まれたのは確かだ。

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 調べてみたところ、リッチハーベストの資本金は1,500万円、年間の売上は8,000万円(2017年時点)ほどだった。200億円の土地代金を、どうやって調達するつもりだったのか疑問だ。立石建設側の言い分が事実なのか否かも確認する必要がある。23日、リッチハーベスト側に取材を申し入れところ、「けっこうです」で一蹴。取材拒否だった。

 事実上とん挫した馬毛島の買収交渉。このままなら、2プラス2の合意事項は守られないことになる。原因が、島の持ち主を破産させようと企んで失敗した安倍政権にあると知った場合、トランプ大統領はどう出るのか――。大統領は25日、2度目の来日となる予定だ。

 元稿:HUNTER 主要ニュース 政治・社会 【社会ニュース】 2019年05月24日 09:25:00 これは参考資料です。転載等は各自で判断下さい。

 
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