《社説②》:ラグビーの新リーグ 地域への浸透が未来開く
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説②》:ラグビーの新リーグ 地域への浸透が未来開く
ラグビーの国内新リーグ「リーグワン」が始まった。企業チームが中心だった従来のトップリーグが、地域性も加味した運営形態に衣替えした。3部まで計24チームが参加し、上位の1部には強豪12チームが顔をそろえる。
2019年に日本で開催されたワールドカップ(W杯)の盛り上がりを追い風に、当初はプロリーグを創設する構想だった。しかし、親企業に依存せず、地域密着で自立したサッカー・Jリーグのようなプロ化は見送られた。
新型コロナウイルス禍の影響でW杯の熱気は続かず、採算性を危ぶむ声も根強かったためだ。結果的には企業名と愛称に地域名を加えたチームが大半となった。
日本のラグビーは企業に支えられてきた。しかし、経済環境の変化で、今後も丸抱えのまま競技を続けられるとは限らない。
新リーグは、各チームにチケット販売や会場選定の「興行権」を認めた。これまでは日本ラグビー協会が権利を持っていた。
試合の興行権があれば、自前で商業活動ができ、収益をチームの強化にも使える。逆に赤字の運営が続けば、存続が危うくなるリスクもある。
新リーグ発足にあたり、会社本体の分割に揺れる東芝は、厳しい経営状況の中、ラグビー部を分社化した。今後は「東芝ブレイブルーパス東京」という名称で自立した運営を目指す。
一方で、あえて企業名を外したチームもある。「静岡ブルーレヴズ」はヤマハ発動機から分社化し、「日本一のプロラグビークラブをつくる」とうたう。元日本代表の五郎丸歩さんも、今はチケット販売を担う運営側の一人だ。
ただ、全体を見れば、課題は多い。地域性をPRするにも、名称に「東京」が入るチームは1部に五つも集中している。
競技人口は減少傾向が続いている。少子化に加え、子どもたちがラグビーに接する機会は少ない。将来を考えれば、集客だけでなく、低年齢層への普及や選手の育成にも力を注がなければならない。
W杯での日本代表の活躍に心打たれた人も多いだろう。新リーグが地域にもっと目を向けて魅力を浸透させれば、未来の展望は開けてくるはずだ。
元稿:毎日新聞社 東京朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2022年01月31日 02:01:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。