路地裏のバーのカウンターから見える「偽政者」たちに荒廃させられた空疎で虚飾の社会。漂流する日本。大丈夫かこの国は? 

 路地裏のバーのカウンターから見える「偽政者」たちに荒廃させられた空疎で虚飾の社会。漂流する日本。大丈夫かこの国は? 

【HUNTER・2016.10.24】:「土人」発言の波紋 政権が拡散させる“沖縄蔑視” 

2022-01-31 08:17:20 | 【日米安保・地位協定・在日米軍・沖縄防衛局・普天間移設・オスプレー・米兵犯罪】

【HUNTER・2016.10.24】:「土人」発言の波紋 政権が拡散させる“沖縄蔑視” 

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【HUNTER・2016.10.24】:「土人」発言の波紋 政権が拡散させる“沖縄蔑視”  

 沖縄県東村(ひがしそん)高江の米軍ヘリパッド(ヘリコプター離着陸帯)建設現場で、警備にあたっていた大阪府警の機動隊員が抗議活動中の市民に暴言を吐いた。「ボケ」「土人」……。荒れる現場での出来事とはいえ、公務員の言葉とは思えぬ汚さだ。
 批判が渦巻く中、松井一郎大阪府知事が問題の警察官を擁護し、沖縄差別の深刻さを印象付ける状況に――。根底にあるのは、基地反対の民意を踏みにじる安倍政権と同じ沖縄蔑視の感情。戦後71年、沖縄は“捨て石”のままである。

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 ■まるでヤクザ
 報道された機動隊員の暴言。ヘリパッド建設に反対する市民グループが撮影したと思われる動画が、ネット上にアップされていた。フェンス越しのやり取り。怒号が飛び交う中、苛立つ機動隊員が怒鳴っている。

「さわるな、コラァ」
「さわるな、ボケ」
「どこつかんどんじゃ、ボケ。土人が」

 制服を着ていなければ、ただの暴力団。府警の発表によれば、これで巡査部長というだから呆れるしかない。ボケがチンピラの吐く言葉だとしても、「土人」の真意は図りかねる。≪沖縄県民=土人≫とイメージしているのなら、この警察官に公務員としての資格はあるまい。「土人」は差別語であり、公式には使われることのない言葉なのだ。機動隊員が抱いているのは、“沖縄県民は違う民族”だという歪んだ考え。でなければ、「土人」という言葉は出てこない。時代遅れの沖縄蔑視は、松井一郎大阪府知事も同じ。暴言問題が報じられた19日、松井氏は自身のツイッターで次のように述べている。

 ■維新・松井知事の不見識
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 『ネットでの映像を見ましたが、表現が不適切だとしても、大阪府警の警官が一生懸命命令に従い職務を遂行していたのがわかりました。出張ご苦労様』。「表現が不適切」としながら「ご苦労様」。これでは、沖縄蔑視の機動隊員を擁護したも同然だ。翌20日には、土人発言を問題視する報道陣に対し「警察官個人を叩くのは間違い」とした上で、「もともと混乱地で、無用な衝突を避けるために警察官が全国から動員されている。混乱を引き起こしているのはどちらか」と語り、ヘリパッド建設に反対する沖縄県民を非難した。松井氏は、問題の本質が理解できていない。

 機動隊員の暴言が問題になったのは、権力側の末端構成員である警察官が、死語となった「土人」という言葉を使って沖縄蔑視の感情を剝き出しにしたからに他ならない。土人発言は、機動隊を送り込んだ“安倍政権”が、沖縄県民を異民族だと思っている証拠。県民の4人に一人が犠牲になった沖縄戦以来、本土の捨て石にされ続けてきた沖縄の心情を、安倍政権も松井氏も汲み取ろうとしていない。

 松井氏は「混乱を引き起こしているのはどちらか」とまで踏み込んだが、沖縄の民意を無視して普天間飛行場の辺野古移設やヘリバット建設を強行しているのは政府。松井氏の主張は、悪党の子分が犯した過ちの責任を、被害者に転嫁する強弁に過ぎない。松井氏の不見識は明らかだが、維新の会全体が、沖縄を日本の捨て石と捉えているふしがある。

 2013年、当時日本維新の会共同代表を務めていた橋下徹氏は、旧日本軍の従軍慰安婦を巡る自身の発言が世論の猛反発にあったことを受け、次の様な発言を行っている。 

―― 「慰安婦制度が必要なのは誰だって分かる」
―― 「当時の歴史を調べたら、日本国軍だけでなく、いろんな軍で(慰安婦を)活用していた」
――(在沖縄米軍司令官に)「もっと日本の風俗業を活用してほしい」

 米兵による女性への暴行事件が相次ぐ現状の解決策として、沖縄の風俗嬢に米兵の慰安をしろと言ったも同然。沖縄県民を土人と罵った府警の警察官を擁護した松井知事の思考法と、通底するものがある。維新幹部の沖縄に対する認識とは、この程度のものなのだろう。

 ■沖縄蔑視を助長する政権の姿勢
 沖縄蔑視が拡散しているのは、沖縄の民意を黙殺してきた安倍政権の姿勢が原因だ。それは、沖縄・北方相となった鶴保庸介氏の言動からも明らか。8月の就任会見で、彼はこう述べている。

――「沖縄の振興策と基地問題は確実にリンクしている」

 9月の記者会見では、普天間飛行場の辺野古移設を巡る政府と沖縄県訴訟について笑いながら、

――「注文はたったひとつ、早く片付けてほしいということに尽きます」

 今月、沖縄出身の自民党衆院議員が東京都内で開いた政治資金パーティーでは、

――「沖縄県選出の国会議員に必ず、来たるべき選挙で勝利してもらわなければならない。ぜひご理解を頂きたい。(選挙結果は)振興策とリンクしています」

 就任以来、予算を盾にした確信犯的な恫喝と沖縄蔑視。戦後最低の男を沖縄担当大臣にしたのは、安倍首相である。その鶴保氏、土人発言についても、沖縄の怒りに油を注ぐような発言を行っている。

――「私は、今のこのタイミングで『これは間違っていますよ』とか言う立場にもありませんし、また、正しいですよということでもありません。自由にどうぞというわけにもいきません」

 土人は差別用語。公務員である警察官が市民に発していい言葉ではない。これを「間違っている」と断定できない人間が、大臣の地位にあるというのだから驚きである。鶴保氏の沖縄蔑視は筋金入り。首相の思いを体現していると見るべきだろう。

 ■「黙れ支那人」の滑稽
 沖縄蔑視が拡散するよう主導してきたのは安倍政権だ。辺野古移設に反対する沖縄の民意を黙殺して工事を強行し、ヘリバット建設でも同じことを繰り返している。民主主義が否定され、偏狭なナショナリズムが幅を利かせるようになると、おかしな風説が出回ることになる。土人発言を記録した動画には、別の機動隊員の暴言も記録されていた。こちらはもっと意味不明。「黙れ、コラ。支那人」である。一部の極右が流しているのが、“ヘリパッド建設反対を煽っているのは中国”というデマ。機動隊員にまでこうしたでっち上げが浸透している現実が、この国の歪んだ状況を如実に物語っている。滑稽と言うしかないが……。

 元稿:HUNTER 主要ニュース 政治・社会 【社会ニュース】  2016年10月24日  10:05:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

 
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【HUNTER・2015.11.13】:維新の内情

2022-01-31 08:17:10 | 【政党・自民・立憲・維新の会・公明・国民民主・共産・社民・れいわ・地域政党他】

【HUNTER】:維新の内情

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【HUNTER】:維新の内情 

 維新の党は11日、除籍処分とした“大阪組”の議員らを相手取り、政党交付金6億6,600万円が入金された銀行預金口座の通帳と印鑑の返還を求め大阪地裁に提訴した。交付金の配分ができないことから、職員への給与支払いなどが滞るなど、党務の運営に支障が出たためといい、政党の分裂騒ぎが、法廷に持ち込まれるという前代未聞の事態だ。
 そうした中、橋下徹大阪市長を中心とする大阪維新は府知事、市長を選ぶダブル選に狂奔。松野頼久氏らの東京組は、民主党との新党設立に前のめりとなっている。
 有権者不在の権力闘争に支持率が下がる一方だが、議員たちの幼稚な争いにうんざりなのは国民だけではない。ある大阪維新関係者が、実情を語った。

維新の党 

 ■戸惑う職員、会計責任者
 選挙目当ての寄せ集めが多い野党は、当然のことながらまとまりがない。民主党は内部抗争が続いて何も出来ず、最後は分裂。党首の不祥事が原因だったとはいえ、みんなの党も空中分解し、日本維新の会、さらには維新の党もバラバラになった。当選することが目的で集まった集団だから仕方ないと言えば仕方ないが、維新の党の分裂騒ぎは前代未聞。政党史を汚したうえ、議員たち以外のすべての関係者に多大の迷惑をかけている。無責任にも程がある。

 思いつきのように橋下市長が離党したかと思えば、いきなり「おおさか維新の会」を立ち上げた。分党して政党交付金をもらおうとしていた矢先、タウンミーティングで市民からの批判を受け、急遽、国への交付金返納を言い出す。猫の目のようにコロコロ発言が変わることで迷惑を受けているのが、党の職員と議員事務所の会計責任者である。

 大阪にいる党職員は本部ビルで「おおさか維新の会」として働き、東京の党職員は「維新の党」職員として国会近くの十全ビルに集められている。今後の立場は決まっていない。何しろ10月に振り込まれた政党交付金は銀行口座に凍結されたままで、12月に振り込まれる予定の交付金も引き出せるめどが立っていないからだ。

 分党や解党をはっきりさせれば手続きを済ませられるが、何も決まらず法廷闘争に持ち込まれると手が付けられない。交付金は1月1日から12月末日までの間で使い切るか、基金に入れて翌年に持ち越すかの手続きをしなければならない。このまま銀行口座が凍結されていると、自動的に国庫へ返納しなければならないのだが、誰も解決策を探っているようには見えない。こんな人たちに、国民の税金を使う資格があるのかと問われれば、「NO」と答えるしかないのが実情だ。

 ■支部解散もできず
 ちょっとわかりにくいが、各国会議員はいまだに「維新の党」の政党支部を持っている。政党がなくなり支部を解散するのなら2週間以内に解散届と収支報告書を選挙管理委員会、政党交付金の使途報告書を総務省に提出しなければならないし、交付金に残高があれば国庫に返納しなければならない。

 議員側が政党支部の解散届と収支報告書を選挙管理委員会に提出すると、期限内に政党から政党交付金の使途報告書を総務省に提出しなければならないのだが、維新の党の残留組と大阪系が正当性を争っているために、政党から総務省に提出する使途報告書が出せない状態に陥っている。

 こんな乱れた事態を国は想定していないので、維新の党の残留組と大阪系のどちらかが使途報告書を提出しても総務省は受け付けられない。こどもの喧嘩がいつまで続くのか分からないが、困っているのは給与をもらえない職員や、事務処理ができない会計責任者。足もとのことさえ始末できない人たちに、国や地方のかじ取りができるわけがない。東京も大阪も、全員辞職して国民に謝罪するべきだろう。騒ぎの張本人である橋下市長は、約束通り政治から身を引くべき。二度と政治に口出しするなと言いたい。

 元稿:HUNTER 主要ニュース 政治・社会 【政治ニュース】  2015年11月13日  09:05:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【HUNTER・2015.09.02】:橋下徹 「嘘つき」の証明

2022-01-31 08:17:00 | 【政党・自民・立憲・維新の会・公明・国民民主・共産・社民・れいわ・地域政党他】

【HUNTER2015.09.02】:橋下徹 「嘘つき」の証明明

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【HUNTER2015.09.02】:橋下徹 「嘘つき」の証明

 維新の党が分裂し、橋下徹大阪市長に近い大阪維新系と他党からの合流組が袂を分かつという。集団的自衛権という国の根幹を揺るがす政治課題の国会審議が大詰めを迎えようというなかでのドタバタ劇。この政党に所属する議員たちに、国政を語る資格があるとは思えない。
 党を割らないために離党するとした橋下氏だったが、舌の根も乾かぬうちに新党結成宣言。あまりの身勝手に、昨日の配信記事で橋下氏を「嘘つき」と断じたところ、その理由を明らかにしろという複数のメールを頂戴した。触れたくもないネタではあるが、読者からの要望。以下、橋下氏のペテン師ぶりについて――。

 ■分裂否定が一転「新党」
 まず、先月27日に橋下氏が党内の関係者らに送ったメールの全文からご覧いただきたい。

各位

国政においては、安保法制についての重大局面を迎えています。

国政政党として内紛劇にエネルギーを割いている場合ではありません。

さらに国のためには政権交代可能な野党を作り上げなければなりません。

また大阪維新の会においては、今般、大阪府知事選挙、大阪市長選挙で候補者を擁立する方針として、これから党内プロセスを踏んでいきます。

このような状況から

1、柿沢幹事長は辞任しない

2、公開討論会は開催しない

3、今、党が割れるようなことはしない

4、僕と松井知事は、国政政党維新の党を離れて大阪、関西の地方政治に集中する

このようにしたいと思います。

本来は直接説明しなければならないところ、こちらも府政、市政を執り行う身であり、その機会をすぐに設定できません。

今回の問題は急を要する問題だと思い、まずはメールでお伝えさせて頂きます。

今回の件の扱いは松野代表に一任となったと聞いておりますので、以上よろしくお願いします。

橋下 

 ゴタゴタの発端は、柿沢未途幹事長が山形市長選で民主党などが支援する立候補予定者を応援したこと。維新は自主投票だったが、なぜか松井一郎大阪府知事が猛反発。幹事長辞任を迫る松井氏に大阪系の議員が同調し、非大阪系との間で党内対立が深まっていた。

 この問題への回答が上のメール。橋下氏は、柿沢氏の辞任を否定した上で自身と松井氏の離党を宣言。≪内紛劇にエネルギーを割いている場合ではありません≫とした上で、≪今、党が割れるようなことはしない≫と明記。さらに、メールを送った直後の会見でも「党を割らない」と断言していた。

 ただ、なぜ橋下氏が離党しなければならないのか分からない。“おかしい”と思っていたところ、翌日になって橋下氏は豹変。大阪維新の会の会合で、新党結成を表明する。≪党が割れるようなことはしない≫と断言した橋下氏自身が、党分裂を主導した格好だ。この間、前言撤回の理由については何の説明もなされていない。

 橋下氏が態度を変えたのは、松野頼久代表が柿沢氏を更迭しなかったからだとされる。だが、メールの中で橋下氏は≪柿沢幹事長は辞任しない≫との裁定を下している。後になってごねるのでは、単なる言いがかりに過ぎまい。自分の発言に責任を持たないのが橋下氏の特徴だが、今回のケースは度を越えている。松井氏と示し合わせた分裂劇――そう見ると一連の動きにも合点がいくが、嘘をついたことは事実。信頼しろという方が無理だろう。

 ■ペテンの2例目
 維新の党は、8月末31日までに年2,000円の党費を納めた人に、11月の党代表選における「投票権」を与えるとして党勢拡大を図ってきた(下参照。同党のホームページより)。

<党員募集

 国会議員だけでなく地方議員や党員にまで同じ1票を与えるよう提唱したのは橋下氏。その橋下氏は6月、党内にあてたメールのなかで次のように述べていた。

 さらに党員に代表選挙の一票を与えるインセンティブは最大限に活用可能です。献金額に応じて。党員を一定数集めてくれたことに応じて。選挙活動等、党への貢献度に応じて。一票与えるインセンティブは工夫次第で最大限活用できます。ここが党勢拡大のための知恵の絞りどころかと。

 インセンティブとは、つまり馬の鼻づらにぶら下げるニンジン。党勢拡大のため、餌である「1票」を最大限に利用しろと言っているのである。このご指導を受けてはじめられたのが、2,000円で1票を売るという党員拡大キャンペーンだった。だが、分裂で代表選の実施は事実上なくなった形。代表戦参加に期待して2,000円支払った人が、「裏切られた」と思うのは当然だろう。嘘をついてカネを集めるのは詐欺。橋下流にペテンの臭いがつきまとうのは、いまに始まったことではないが……。

 ■橋下氏最大の嘘は…
 「2万%ない」と言った府知事選に出馬した橋下氏のこと。嘘やごまかしは政治家の常と思っているふしがある。大言壮語と挫折を繰り返してきたが、反省の色はまったく見えない。だが、「またか」で通用したのもここまで。下は、彼がTwitterに書き込んだ内容だが、政治家としては最低のレベルであることを示している。

橋下2.png

 国会前に集まって安保反対を訴えたのは12万人。全国で同様の動きがあったことも報じられている。数が多かろうが少なかろうが、老若男女の上げる声を否定するというのは、それこそが民主主義の否定ではないのか。気に入らぬ相手は罵倒し、自らの主張を正当化するのが橋下流だとすれば、これは民主主義とは程遠い独裁者の考え方というしかない。改革だの民主主義だのと叫んで庶民の味方を演じてきた橋下だが、そのすべてが、己の野望を達成するための「嘘」だったということになる。

 最後に、橋下氏のつぶやきをもう一つ。

橋下1.png

 「バカ」は国民全体に向けられた言葉。たしかに、こんな政治家は不要である。

 元稿:HUNTER 主要ニュース 政治・社会 【社会ニュース】  2015年09月02日  10:20:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【HUNTER・2015.07.10】:迷走維新 焦る橋下

2022-01-31 08:16:50 | 【政党・自民・立憲・維新の会・公明・国民民主・共産・社民・れいわ・地域政党他】

【HUNTER2015.07.10】:迷走維新 焦る橋下

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【HUNTER2015.07.10】:迷走維新 焦る橋下 

 安全保障関連法案への対応を巡り、迷走が続く維新の党。最高顧問である橋下徹大阪市長を信奉する「西」と、外様の集まりである「東」に分かれて分裂含みのドタバタを繰り広げているが、原因を作っているのは、他ならぬ橋下氏。所属議員に対し、連日のように送られてくるという同氏のメールを読むと、自己主張の強さと粘着性が浮き彫りとなる。
 安倍晋三首相との会談以後、安保法案の成立にむけて政権のアシストを実現しようと焦る橋下。HUNTERが入手した一連の橋下メールから、党内の様子をさぐった。

維新の党

 ■だらだら、くどくど――狙いは安倍のアシスト
 下は7月2日に発信された、橋下氏から党関係者へのメール。数あるメールの中でも、橋下氏の狙いがよく分かる内容だ。

 審議拒否、採決拒否には2つの理由があると思います。
実体的理由と手続き理由です。
実体的理由とは、政府与党の案に反対する方法としての審議拒否、採決拒否。
これは野党として最悪だと思います。
政策立案能力、国民への訴求能力の欠如の表れ。
しかも自らが与党になったときに、その時の野党に審議拒否、採決拒否の口実を与えます。悪しき先例になります。
僕はこういう審議拒否、採決拒否はほんとくだらないと思うし、税金泥棒だと思っています。
国民も冷めてみるでしょう。
しかし手続き的理由の審議拒否、採決拒否は十分理由があるし、むしろ国民の理解は広がると思います。
そして野党からの対案にきっちりと審議しなければならないという良い先例になります。
裁判では当然のことですが、十分審議が尽くされ機が熟したときに判決です。
これを誤ったときには違法となり、控訴理由になります。
民主主義である以上、不合理な欠席、審議拒否、採決拒否は許されませんが、しかし、十分審議を尽くすということも採決のための必要不可欠な絶対条件です。
維新の党はきちんとした対案を出しました。
これだけ大きな法案なのですから、維新の党も、政府与党並みに質問に晒されるべきです。
維新の党が自ら主張すべきでしょう。
「我々が徹底して首相・政府を追及したように、今回は我々を追及してくれ。維新の党案を完膚なきまでに叩きのめしてくれ。ボコボコにしてくれ。こちらは時間無制限で答える用意がある。」と。
このように言ってもなお、政府与党から自らスケジュール通りに採決をするなら、これは手続き違反です。
少なくとも政府与党が答弁した時間分は、維新の党も答弁する「義務」があります。
これは権利ではなく、「義務」です。
国民に対する義務です。
これを果たせないなら、堂々と審議拒否、採決拒否をすべきでしょう。
民主主義は、十分に審議を尽くした上で採決。
これは、譲れません。この先例は確立しなければなりません。

その代わり、十分な審議が尽くされた場合には、採決は当然です。ここで拒否することは許されません。

現在の国会の質疑を聞いても、もう論点は出尽くしたかなという感があります。

これが審議が尽くされたということでしょう

維新の答案についても同じ状態まで審議を尽くす必要があります。

対案を出さない審議拒否、採決拒否は単なるゴネです。

しかし維新の党は対案を出しました。

この対案を十分審議する必要と義務があります。

審議が尽くされたなというのは、それは質疑応答を聞いていたら何となく分かります。もうこの辺で、議論がぐるぐる回っているなと

維新の党案もそこまで審議を尽くすべきです。

識者などに徹底して国会で評価してもらうべきです。

そこまでやったなら採決拒否は許されません。

しかし、対案を出したのに、審議が不十分なら、それは審議拒否、採決拒否も許されるでしょう。

実体的理由での審議拒否、採決拒否は国民から理解を得られないでしょうが、審議不十分という手続きからの審議拒否、採決拒否は十分理由が立ち、国民からの理解も得られます。

採決拒否というカードを持つためにも、対案提出が必要です。
対案を出したからと言って何でもかんでも採決に応じなければならないというのは、手続き的理由の見落としです。

採決拒否ができなくなるから、対案提出を躊躇するのは、手続き的理由での採決拒否ということをこれまでの国会でしっかりとやったことがないからでしょう。

いつも政府与党の案に反対するための審議拒否、採決拒否ばかりですから。

野党が対案を出して、与党が十分審議しないからという理由での審議拒否、採決拒否はむしろ良い先例になります。

採決拒否ができなくなるから対案を出さないというロジックは誤りです。

むしろ合理的な、国民に理解を得られる審議拒否、採決拒否をするためにこそ、対案を国会に提出すべきです。

きちんとした対案が野党から出たのに、政府与党が十分な審議を尽くさず採決をするのであれば、そのダメージこそ計り知れませ(ん)。単なる強行採決の比ではありません。

その際、こちらが採決を拒否しても、国民は納得してくれます。

ただし、その前提として、維新の党案が十分審議するに値することを国民に理解してもらわなければなりません。

いずれにせよ、合理的な審議拒否、採決拒否をするカードを得るためにも、国会に維新の党案を出すべきです。

その上で、審議が十分尽くされない場合には、採決拒否等もあるのではないでしょうか?

この点でも、民主党の審議拒否、採決拒否とは決定的に異なることがはっきりとします。

橋下 

 長々と自己主張しているが、ようは以下の内容である。

  • 審議拒否や採決拒否は許さない。
  • 政府案については、すでに審議を尽くした。
  • 維新案にも一定の審議時間が必要。
  • その後は、速やかに採決に応じるべき。

 重要なのは、政府案についての「審議を尽くした」とする橋下氏の見解。国会での審議が深まるほどに法案の問題点が増えるという現状を、橋下氏は理解していない。審議が滞っているのは、政府側の責任だ。安倍首相をはじめとする政権側が、重要な質問に対し正面から答えたというケースは皆無に等しい。はぐらかし、答弁拒否が常態化しているのは明らかで、国民の不安が日増しに高まっているのが実情である。とても「審議を尽くした」と言えるような状況ではあるまい。 

 このまま採決に応じれば、維新は政権の補完勢力となってしまう。かつての「みんなの党」と同じだ。そこで対案を示して独自色を出し、国民の目を欺こうというのが橋下維新のシナリオ。最終的な狙いが安倍首相のアシストにあることは言うまでもない。だから、「採決拒否は許さない」のである。回りくどいことをやっているが、これが橋下流。政治家としては最低だが、ペテン師の素養は十分にある。そうした例が次のメール。これまた長くなるので、一部を抜粋した。

連日お疲れ様です。
安保法制で大変なところでしょうが、大阪の声として述べさせてください。
維新の勝負所として、安保法制の次は代表戦です。
年内はこの代表戦が最大のアピールポイントとなるでしょう。
このまま行けば10月でしょうか?
それでも今からもう3か月しかありません。
報道によると地方議員にも、そして党員にも(もちろん献金額等で差はあるのでしょうが)一票を与えるとのこと
日本で最初の大統領選挙型代表選挙になります。

 「報道によると地方議員にも、そして党員にも(もちろん献金額等で差はあるのでしょうが)一票を与えるとのこと」とある。だが、『1人一票』は橋下氏側が党に無理強いした結果。『報道によると』などとよく言えたものだ。詳細は、「橋下支配復活 維新が目指す政権との出来レース 」をお読みいただきたい。

 ■まるで駄々っ子
 だらだら、くどくどが橋下メールの特徴。読まされる維新関係者たちも、「思ったことをそのまま打ち込んでいるのだろうが、くどくて難解。もう少し整理すればいいのに……」などと困惑顔。数日前の橋下メールは、A4用紙で10枚にも及ぶもの。安全保障法案の維新案について、延々と持論を展開する内容だった。長くなるのは苛立ちの表れ。思惑と違う動きが顕在化すれば、言葉が激しくなる。駄々っ子そのものだが、下はその一部。

執行部へ確認を求めます。 維新の党の結党の党是に関わることです。 明確にお答え下さい。

維新の党は、個別的自衛権しか認めないという主張に変更したのかどうか?
維新の党の主張と、下地さんのパネル、それと今回の柿沢幹事長のペーパーに添付されている資料に集団的自衛権は×となっていることの整合性はどのように考えているのか?

(中略)

このようなやり方には断固反対するとともに、執行部に自衛権の考え方について説明を求めます。 

 政府の安全保障法案に否定的となっている「東」の議員たちに、頭にきたというところ。橋下氏をはじめ「西」は安倍の応援団。集団的自衛権の行使や解釈改憲には、もともと賛成なのである。法案への懸念が“集団的自衛権”そのものへの懸念に変わりつつある党内の現状に、かなり危機感をもっているのだろう。これでは安倍首相とのお約束が果たせない。この後のメールでは、ついに党の分裂を示唆して脅しにかかっている。

今回の維新の党は政府で言うところの存立危機事態概念である集団的自衛権を否定するものです。
存立危機事態概念を否定したわけで、集団的自衛権的な考えを一切否定したわけではありません。
この考えの違いのところが、立法事実の捉え方のところで、かなりの相違につながっているのではないかと思います。
新聞報道などで個別的自衛権の拡大と報じられても、ここは目くじらを立てても仕方のないところでしょう。
色んな説明のしぶり、ニュアンスの違いもあるでしょうから。
しかし党の文書として集団的自衛権が全て否定され、個別的自衛権拡大説となるような発信になることは、これは旧維新の会と結の党の合流時の確認事項の破棄・変更をまず表明してからだと思います。
それくらい重いことだと思っています。

 党側から≪各マスコミ等、やはり個別的と集団的の点について質問がかなり寄せられています。自衛権の再定義やコインの裏表だという表現を使っていますが、なかなか理解がいただけません。外形的には集団的自衛権のように見えるが、実質的には個別的自衛権の行使だといういい振りでは問題でしょうか。ご意見をいただきたく≫とのメールを受けた橋下氏は、激しくこれに反発している。

僕は反対です。

そんな逃げの答弁でなく、真正面から答弁をやるべきすし、できるはずです。
それくらいやるのが国会議員の仕事だと思います。
これくらいの説明を真正面からできなければ、既得権打破なんぞ全くできないでしょう。
大阪維新の会は、常に真正面からの説明を心がけてきました。
最後に住民投票で負けましたが、0からここまでこれたのは、逃げなかったからだと思います。

そんな逃げの答弁をやるのであれば、執行部で、旧維新の会と結の党の合意事項の破棄を宣言して下さい。 

 『関西維新の会』設立の意思があることを表明したのは、メールの内容がただの脅しではないと分からせるため。思惑通りに事が進まなければ、実際にそうするしかなくなるだろう。花火を打ち上げては失敗を繰り返す――これも駄々っ子の流儀ではあるが……。

 ■いびつな党内 
 下は、党内で安保法案の対案作りに携わっているある議員からの橋下氏へのメールの一部。いびつな党内事情をよく物語っている。

≪今回の法文は、個別的自衛権か集団的自衛権か峻別できないが、憲法適合性は確保している。これで十分なのでは?

『外形的には集団的自衛権であるが、実質的には個別的自衛権の行使』と言うことは、現時点では、許されるのではないかと考えました。しかしながら、その最終的な許諾は、橋下最高顧問と江田前代表にかかっておりますので、事前にお聞きした次第です≫

 大阪都構想の挫折で、表舞台から引っ込んだはずの橋下氏や江田憲司前代表が、党内の決定権を握っているのが実情。分裂でも分党でもいい。国民を欺き安倍との出来レースをやるような政党は、消えてなくなった方がいいに決まっている。

 元稿:HUNTER 主要ニュース 政治・社会 【社会ニュース】  2015年07月10日  10:40:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

 
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【岸田首相】:安倍のせいで「佐渡金山」世界遺産は逆に絶望的に! 

2022-01-31 08:10:50 | 【国連・ユネスコ・世界遺産・世界有形無形文化遺産・記念物遺跡会議

【岸田首相】:安倍のせいで「佐渡金山」世界遺産は逆に絶望的に!  ■歴史修正主義宣伝と影響力誇示のためだけに“安倍フォン”かけまくり関係者に圧力

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【岸田首相】:安倍のせいで「佐渡金山」世界遺産は逆に絶望的に!  ■歴史修正主義宣伝と影響力誇示のためだけに“安倍フォン”かけまくり関係者に圧力 

 2023年の世界文化遺産登録を目指す国内候補に選ばれた「佐渡島の金山」(新潟県佐渡市)について、政府がユネスコへの推薦を「見送る」とした報道から一転、28日、岸田文雄首相は「本年申請をおこない、早期に議論を開始することが登録実現への近道であるという結論に至った」と公表、ユネスコへ推薦すると表明した。

安倍のせいで「佐渡金山」世界遺産は逆に絶望的に! 歴史修正主義宣伝と影響力誇示のためだけに安倍フォンかけまくり関係者に圧力の画像1

              安倍晋三Facebookより

 岸田首相は「変わったとか(方針を)転換したとの指摘は当たらない」と述べたが、安倍晋三・元首相からのゴリ押しに屈したことは一目瞭然だ。

 佐渡金山は昨年末の2021年12月28日に文化庁が文化審議会においてが国内候補に選定されたと発表したのだが、この決定に対し、佐渡金山は戦時中に朝鮮人の強制労働がおこなわれた歴史があることから韓国政府が反発。外務省も「登録が見込めない」という理由からユネスコへの推薦に消極的な姿勢を示していた。

 ところが、急に安倍元首相がしゃしゃり出るようになり、「(韓国に)ファクトベースでしっかり反論すべきだ」「論戦を避けた形で申請しないのは間違っている」などと主張。自民党政調会長である高市早苗氏やネトウヨ論客たちも一斉に岸田バッシングを開始し、ついに岸田首相は見送りの方針を一転させたのだ。

 だが、暗澹とさせられるのは、今回のユネスコ推薦決定に対し、ネトウヨたちだけではなく、マスコミや世論からも「安倍元首相や高市氏の主張は当然」「韓国が政治問題化させているだけ」という声があがり、「岸田首相が弱腰すぎた」などと安倍元首相のゴリ押しを評価する向きがあることだ。

 まったく何を言っているんだか、という話だろう。まず、そもそも岸田首相や外務省がユネスコへの推薦に消極的だったのは、戦時中の朝鮮人強制労働の歴史を重く見たとか、そういう理由ではまったくなく、自分たちの「二枚舌」が国際的に問題となることを見越した上での判断だった。

 というのも、日本政府は2015年に中国が世界記憶遺産(現・世界の記憶)に申請した「南京大虐殺の文書」が登録されたことや2016年に日中韓などの民間団体が旧日本軍「従軍慰安婦」にかんする資料を申請したことに対して「政治利用されている」などと猛反発し、ユネスコに審査方法の見直しを要求。2017年には日本政府の強い反対によって慰安婦関係資料の登録判断が延期され、登録申請の受付も中断させていた。そうしたことを受けて、ユネスコの執行委員会は2021年4月、加盟国による異議申し立てを認め、関係国が無期限で対話するなど「加盟国の反対がある限り遺産登録を見合わせる」という制度改革案を承認したのだ。

 つまり、日本政府が南京大虐殺や従軍慰安婦にかんする文書・資料の登録・申請に猛反発し、加盟国の反対があれば遺産登録を見合わせられるという制度をユネスコに導入させたというのに、今回は韓国から反対の声があがっていることも無視して推薦しようというのだ。

 今回は世界文化遺産への登録をめざすもので「世界の記憶」とは制度が異なるが、無論、「言っていることとやっていることが違う」とユネスコや国際社会から反感を買うのは火を見るより明らか。だからこそ、外務省は佐渡金山のユネスコ推薦に消極的だったのだ。現に、〈外務省内では、「今回は日本が逆の立場になり、韓国の反発がある中で推薦すれば国際社会の信用を失いかねない」との判断も働いた〉(読売新聞20日付)といい、今回の推薦決定を受けて、〈韓国が反発する中で推薦することで「日本のこれまでの主張と整合性がとれなくなる」(外務省幹部)との懸念が出ている〉(毎日新聞29日付)という。 

 ◆「明治日本の産業革命遺産」では、「徴用の実施」をきちんと説明すると言いながら約束を反故に

 しかも、問題はこれだけではない。世界遺産登録をめぐっては、日本側はユネスコの世界遺産委員会との約束を堂々と破り、昨年には世界遺産委員会が「強い遺憾を示す」とする決議を採択しているからだ。

 問題となっているのは、2015年に当時の安倍首相の肝いりによって世界遺産に登録された「明治日本の産業革命遺産」。この世界遺産登録には韓国が反発していたが、日本側は朝鮮人徴用工について〈意思に反して連れて来られ、厳しい環境の下で働かされた多くの朝鮮半島出身者等がいたこと〉を認め、〈第二次世界大戦中に日本政府としても徴用政策を実施していたことについて理解できるような措置を講じる〉(内閣官房「産業遺産情報センターの在り方等について(第一報告書))」)と約束していた。

 ところが、世界遺産登録後の2017年に日本側がユネスコへ提出した「保全状況報告書」では、朝鮮人徴用工について「戦前、戦中、戦後にかけて日本の産業を支えた多くの朝鮮半島出身者がいた」という記述で強制連行や過酷労働の実態を矮小化。2019年に出された「保全状況報告書」では朝鮮人徴用工について一切触れないという下劣な手に出た。

 さらに、「徴用政策を実施していたことについて理解できるような措置を講じる」という約束から設置された「産業遺産情報センター」の一般公開では、徴用工の置かれた過酷な状況を説明するどころか、父親が軍艦島炭鉱で働いていたという人の「いじめられたとか、指さされて『あれは朝鮮人ぞ』とは全く聞いたことがない」という証言を紹介、給与やボーナスが支払われていた物証などを展示したのだ。

 あらためて言っておくが、戦時中の朝鮮人強制連行は、当事者の証言だけでなく、公文書を含んだ史料がいくつも残っている歴史的事実だ。また周知のように、徴用工は企業によって、一部、日本人と変わらない待遇を受けているケースもあったが、大半が日本人とまったく違う劣悪な環境で働かされ、虐待や暴力を受けていたこ。そのことは、戦時中の日本政府の文書など公文書にも記録されている客観的事実だ。

 ところが、同センターはそうした事実をほとんど無視して、逆にごく一部のケースを強調して強制労働の否定を宣伝したのだ。

 当然、こうした展示実態をユネスコの世界遺産委員会も問題視。2021年7月の報告書では、「産業遺産情報センター」への専門家の現地視察を踏まえて、「朝鮮半島出身者らが意思に反して連れてこられ労働を強いられたと認識するのは難しそうだという強い印象が残った」と指摘。そして、2021年7月22日に世界遺産委員会は朝鮮半島出身者らが強いられた労働についての説明が不十分なままだと判断し、「強い遺憾を示す」とする決議を全会一致で採択。「意思に反して連れてこられ、厳しい環境の下で働かされた多くの朝鮮半島出身者らがいたことや、日本政府の徴用政策について理解できるような措置」を考慮することを迫ったのだ。

 だが、このユネスコの決議に対しても、当時の加藤勝信官房長官は「約束した措置を含め誠実に実行し、履行してきた」と反論。まるで反省がないという絶句するような態度をとったのである。

 ◆安倍は自らネトウヨ用語の「歴史戦」を宣言! おかげで佐渡金山の世界遺産登録は絶望的に

 ユネスコとの約束を反故にして、突きつけられた決議に真摯に向き合うこともないのに、平然と次の世界文化遺産候補を推薦することは、怒りを買う行為にほかならない。しかも、前述したように「加盟国の反対がある限り遺産登録を見合わせる」という制度変更を要求してきたくせに、今度は加盟国から反発が起こっている案件を推薦しようというのだ。こんな不誠実な態度、下劣な二枚舌を使えば、国際社会は呆れ返り、すでにガタ落ちしている信頼はさらに失墜し、相手にされないのは目に見えている。外務省が消極的だったのは当たり前の話だろう。

 ところが、安倍元首相はこうした国際的な常識もおかまいなし。ここぞとばかりに佐渡金山のユネスコ推薦をゴリ押ししたのである。 

 言っておくが、安倍首相の目的は、「世界遺産登録によって佐渡金山の価値を広めたい」というようなものではまったくない。なぜなら、安倍首相がやろうとしているのはまったく逆の結果を生むものだからだ。

 もし、日本が本気で佐渡金山の登録をめざすのであれば、まずは「明治日本の産業革命遺産」に対して出された決議に基づいて「産業遺産情報センター」の展示を見直し、国際社会にその姿勢を示すのが先決だし、さらに今回の佐渡金山の推薦も「江戸時代の手掘りの伝統手工業遺産に対するものだ」(高市早苗政調会長の発言)などとただ反発するのではなく、佐渡金山における戦時中の強制労働の実態についてもしっかりと認めた上で韓国と対話することが必要だ。

 そうした努力もしないまま、強引に佐渡金山の世界遺産登録を主張しても、ユネスコがそれに応じることは、まずありえないだろう。それだけではない。一度世界遺産への登録が不可能と判断された推薦候補がその後、登録された例はない。  

 つまり、安倍元首相のこのゴリ押しによって、佐渡金山は今回だけでなく、将来にわたっても世界遺産登録が難しくなる可能性が高いのだ。

 しかし、安倍元首相は、そんなことはどうでもいいのだろう。なぜなら、安倍元首相やネトウヨの目的は、佐渡金山の世界遺産登録ではなく、今回の問題を朝鮮人強制労働の事実を否定する「歴史修正」に利用しようというものにすぎないからだ。

 事実、安倍元首相が勢いづいたのは、佐渡金山が国内候補に決定して韓国から反発を受けて以降のこと。しかも、27日には自身のFacebookでこう主張していた。

 「(韓国側に)歴史戦を挑まれている以上、避けることはできない」

 周知のように、「歴史戦」という言葉は先の戦争を肯定する歴史修正主義者の言論拠点である産経新聞が生み出したネトウヨ用語。そんな言葉を堂々と使ったことからも、「徴用工問題は絶対に認めない」という、歴史的事実を捻じ曲げるためだけにユネスコへの推薦をゴリ押ししたのは明らかだ。

 ◆安倍の頭の中は「ネトウヨ趣味」と「政治力維持」だけ、関係者に「安倍フォン」かけまくり

 そもそも、佐渡金山の世界遺産登録の大きな阻害要因となっている「明治日本の産業革命遺産」をめぐる国際公約破りや、「産業遺産情報センター」での歴史修正主義宣伝も、安倍元首相の意向に基づくものといわれている。

 実際、安倍元首相は2020年、「産業遺産情報センター」を視察した際、Twitterで展示パネルの「戦時中の長崎造船所 徴用工に支払われていた給与+ボーナス」写真を貼り付けた上で〈当時の彼らの労働に対する待遇が本当はどうであったかを物語る貴重な資料〉〈いわれなき中傷への反撃はファクトを示す事が一番〉などと主張していた。 

 当時、本サイトでは、安倍元首相が挙げた資料が徴用工の差別的待遇や強制労働を否定する「ファクト」ではけっしてなく、元徴用工の人びとが証言している強制動員・強制労働や差別的な扱いを「いわれなき中傷」などと決めつけている主張こそがフェイクであることを歴史的資料・証言に基づいて検証したが(既報参照→https://lite-ra.com/2020/10/post-5682.html)、安倍元首相は今回の佐渡金山をめぐっても、同じようなフェイク宣伝をやろうとしているのだろう。

 佐渡鉱山では長崎の端島をはじめとする地域と同様、朝鮮人が強制的に連行された上で危険な労働を強いられていたことが指摘されており、それは新潟県が編纂した通史でも記述されている事実だが、安倍元首相は佐渡金山の世界遺産登録働きかけ運動によって、同じように徴用工の強制労働、虐待否定を展開するはずだ。

 しかも、安倍元首相には、今回のユネスコへの推薦問題を歴史修正に利用しているだけではなく、自身の政治的影響力を誇示する目的もある。 

 実際、外務省が今回のユネスコへの推薦に消極的な姿勢を見せると、安倍元首相は安倍派の会合で「論戦を避ける形で登録を申請しないというのは間違っている」「しっかりとファクトベースで反論していくことが最も大切だ」と発言。これは〈推薦を見送れば、党内の安倍氏に近い議員らが首相を見放しかねないとのメッセージ〉(朝日新聞29日付)だったが、じつは安倍元首相は裏でも策動。息のかかった関係官僚やメディア関係者に次々と「安倍フォン」をかけまくり、「世論を盛り上げろ」と指示していたという。

 安倍元首相は最近、自分と距離を置こうとする岸田首相に対して焦っていたというが、そんななかで持ち上がった今回の問題は、自分の政治力を岸田首相に見せつける絶好のチャンスだった。安倍元首相は昨年の総裁選でも自分の影響力を誇示して岸田氏を服従させるべく、高市支持を呼びかける「安倍フォン」を発動させたが、今回も同じように岸田首相を揺さぶろうと必死になっていたのだ。

 そして、安倍元首相の目論見どおり事は運び、岸田首相は完全に屈服。NHK読売新聞までもついに産経用語の「歴史戦」という文言まで用いて推薦することを後押しし、世間も「弱腰の岸田」「安倍元首相の主張はもっとも」などと評価しているのだ。つまり、すべては安倍元首相の思うツボとなったわけだ。

 だが、繰り返すが、今回の決定は「約束破りな上、二枚舌を使う」という国際社会からの信頼を失墜させる自殺行為にほかならず、日本が歴史修正主義による“ならず者国家”だと印象づけるだけの、愚行以外の何ものでもない。世界遺産登録をめぐって「歴史戦」などというネトウヨ用語が飛び交う状況こそが異常なのだと強く言っておきたい。(編集部

 元稿:LITERA・リテラ(本と雑誌の知を再発見) 主要ニュース 社会 【中国・韓国】  2022年01月30日  08:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

 

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【裁判】:高裁でも伊藤詩織さんが勝訴、山口敬之氏の“性暴力”認める判決!  

2022-01-31 08:10:40 | 【裁判(最高裁・高裁・地裁、裁判員制度・控訴・冤罪・再審請求、刑法39条】

【裁判】:高裁でも伊藤詩織さんが勝訴、山口敬之氏の“性暴力”認める判決!  ■安倍政権の意向で捜査を握り潰した警察の問題が改めて浮き彫りに

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【裁判】:高裁でも伊藤詩織さんが勝訴、山口敬之氏の“性暴力”認める判決! ■安倍政権の意向で捜査を握り潰した警察の問題が改めて浮き彫りに 

 ジャーナリストの伊藤詩織さんが、安倍首相と昵懇の元TBS記者・山口敬之氏から意識がないなかで性暴力を受けたとして1100万円の損害賠償を求めた民事訴訟の控訴審で、きのう25日東京高裁が伊藤さんの訴えを認め「同意はなかった」として、山口氏に対し332万円の支払いを命じた。330万円の支払いを命じた1審から治療関係費として賠償金が増額された。

高裁でも伊藤詩織さんが勝訴、山口敬之氏の性暴力認める判決! 安倍政権の意向で捜査を握り潰した警察の問題が改めて浮き彫りにの画像1
伊藤詩織『Black Box』より

 2019年12月の1審でも東京地裁は「酩酊状態で意識のない伊藤さんに合意のないまま行為に及んだ」と認定していたが、今回の東京高裁の判決でも「伊藤さんと山口氏が性行為が想定される親密な関係になかった」「伊藤さんが性行為直後に友人や警察などに性被害を繰り返し訴えていた」「伊藤さんがほぼ一貫して性的被害を受けたことを具体的に供述している」などと指摘し、伊藤さんの主張を「信用できる」と判断。一方、山口氏による「伊藤さんが性行為に誘う挙動をした」などといった主張については「事実経過と明らかに乖離し信用できない」として退け、ホテル到着時点で伊藤さんは強度の酩酊状態にあったとし「意識を失っているなかで同意なく性行為を始めた」と結論づけた。

 一方、伊藤さんが性被害を公表したことに対し山口氏が名誉毀損で1億3千万円の損害賠償を求めた反訴では、伊藤さんが著書などで山口氏が薬物を使用したと表現したことについて、真実性・真実相当性が認められないとして、伊藤さんに対して55万円の支払いを命じた。この1点のみをもって伊藤さんの訴え全体を否定するようなネトウヨの声も散見されるが、これ以外の点については「公共の利害に関する事実で、その目的がもっぱら公益を図ることにある」「事実を公表されない法的利益が公表する理由に優越しない」と不法行為は成立しないとしている。なにより、1審につづき2審でも「山口氏が意識のない伊藤さんに対して合意なく性行為をおこなった」という根幹の部分については明確に認められており、なんら揺らぐものではない。

 伊藤さんは判決後の会見で「この民事裁判で(性行為の)同意がなかったことが認められたことはとても大きい」と判決の意義を語ったが、これは当然の判決だ。

 そもそも、タクシー運転手やベルボーイという第三者による証言のほか、伊藤さんを抱えて引きずる山口氏の姿が映った防犯カメラ映像も証拠として提出されている。東京高裁も、伊藤さんがホテル到着時点で強度の酩酊状態にあったと認めている。

 しかし、あらためて問わなければならないのは、なぜここまで証拠が揃った事件に対し、急に逮捕が取り消され、さらには嫌疑不十分で不起訴となったのか、という問題だ。

 簡単に振り返ると、元TBS記者で「安倍首相にもっとも近いジャーナリスト」と呼ばれていた山口敬之氏から性暴力を振るわれたという伊藤さんの相談を受け捜査を担当していた高輪署の捜査員が、2015年6月8日、逮捕状を持って成田空港で山口氏の帰国を待ち構えていた。ところが、この逮捕直前に上層部からストップがかかった。この逮捕取りやめを指示したのが、当時、警視庁刑事部長だった中村格氏だった。実際、山口氏の逮捕を取りやめるよう指示したことについて、本人が「週刊新潮」(新潮社)の直撃に対し、「(逮捕は必要ないと)私が決裁した」と認めている。

 この中村氏による逮捕取りやめ指示の背景にあるとみられてきたのが、中村氏と菅前首相の関係だ。中村氏は第二次安倍政権発足時に当時官房長官だった菅氏の秘書官をつとめており、“菅の懐刀”といわれてきた。このように、安倍氏と山口氏の関係、そして菅氏と中村氏の結びつきを踏まえれば、中村氏は安倍・菅体制の官邸の意向を受けて山口氏の逮捕取りやめを指示したとしか考えられない。しかも、この問題以降も中村氏は出世を重ね、昨年9月には警察トップである警察庁長官にまで上り詰めているのだ。

 この性暴力事件をめぐる逮捕取り消し、不起訴という警察と検察の対応がいかにおかしなものだったか。一審の判決が出た2019年12月18日に検証した記事を以下に再録するので、あらためてご一読いただきたい。(編集部

 ◆一審が「合意なき性行為」を認めた理由、山口敬之氏の供述の「不合理なぶれ」も指摘

 至極当然の判決が出た。ジャーナリストの伊藤詩織さんが、安倍首相と昵懇の元TBS記者・山口敬之氏から意識がないなかで性行為を強要されたとして1100万円の損害賠償を求めた民事訴訟で、本日(2019年12月18日)、東京地裁は「酩酊状態にあって意識のない原告に対し、合意のないまま本件行為に及んだ事実、意識を回復して性行為を拒絶したあとも体を押さえつけて性行為を継続しようとした事実を認めることができる」と認定し、山口氏に330万円の支払いを命じた。

 判決詳報を報じた「弁護士ドットコムニュース」の記事によると、裁判所は、山口氏と伊藤さんが会食した2015年4月3日、2軒目に訪れた寿司屋を出た時点で伊藤さんが「強度の酩酊状態にあった」と認定したほか、翌日に伊藤さんが産婦人科でアフターピルの処方を受けたこと、数日後に友人に相談し、その後原宿警察署に相談に訪れていることなどをもって「今回の性行為が伊藤さんの意思に反して行われたものであると裏付けるもの」と結論づけたという。

 一方、裁判所は山口氏の供述について「重要な部分において不合理な変遷が見られる」と指摘。たとえば、山口氏は2015年4月18日に伊藤さんに送ったメールで〈あなたは唐突にトイレに立って、戻ってきて私の寝ていたベッドに入ってきました〉と記述していたのに、裁判では「伊藤さんに呼ばれたために山口さんが窓側のベッドから伊藤さんの寝ている入口側のベッドに移動した」と証言していたとし、こうした点から、判決では山口氏の供述について「信用性には重大な疑念がある」と述べ、対する伊藤さんの供述は「相対的に信用性が高い」と認めた。
 さらに、山口氏は伊藤さんが性行為に同意していたと主張して、伊藤さんが『Black Box』(文藝春秋)を出版するなど被害を訴えたことによって名誉やプライバシーが傷つけられたとして、伊藤さんに1億3000万円の損害賠償を求める反訴を起こしていたが、これについても東京地裁は「伊藤さんが性犯罪の被害者をめぐる状況を改善しようと被害を公表した行為には、公共性や公益目的があり、内容は真実だと認められる」とし、山口氏の訴えを退けた。

 つまり、意識がないなかで性暴力をふるわれ、意識を戻して拒絶したにもかかわらず山口氏がやめずに継続しようとしたという伊藤さんの訴えが認定され、一方、告発を封じ込めようとするような山口氏側のスラップ訴訟も退けられるという、“全面勝訴”の判決といえる結果となったのだ。

 だが、繰り返すがこれは当然の判決だ。そもそも、タクシー運転手やベルボーイという第三者による証言のほか、詩織さんを抱えて引きずる山口氏の姿が映った防犯カメラ映像も証拠として提出されている。実際、裁判所も〈ホテルに到着し、山口さんに引きずられるようにして降車した〉ことや〈ホテルの部屋に向かう間、足元がふらついていて、山口さんに支えられる状態だった〉ことを事実として認めているのだ(前述・「弁護士ドットコム」より)。

 だが、こうした当然の判決が出たことによってあらためて問い直さざるを得ないのは、なぜここまで証拠が揃った事件に対し、急に逮捕が取り消され、さらには嫌疑不十分で不起訴となったのか、という問題だ。

 あらためて振り返ると、伊藤さんからの相談を受けて、当初捜査を担当していた高輪署の捜査員は山口氏の逮捕状をとり、2015年6月8日、山口氏を逮捕すべく複数の捜査員が成田空港で山口氏の帰国を待ち構えていた。ところが、この逮捕直前に上層部からストップがかかった。そして、この逮捕取りやめを指示したのが“菅義偉官房長官の子飼い”である当時の中村格警視庁刑事部長(現・警察庁官房長)だった。「週刊新潮」(新潮社)の直撃に対し、中村氏自らが「(逮捕は必要ないと)私が決裁した」と認めているのだ。つまり、官邸中枢と近い警察官僚の指示により、山口氏は逮捕をまぬがれたのである。

 しかも、山口氏の逮捕が取りやめになったあと、不可解にもこの高輪署の捜査員は担当から外されてしまった。結果的に事件は2015年8月26日に書類送検されたが、山口氏は翌年7月22日付けで嫌疑不十分で不起訴処分に。逮捕寸前までいった事件が、このように“ブラックボックス”のなかに押し込められてしまったのだ。

 ◆山口敬之が内調トップに相談メール、内調は詩織さん中傷のチャート図を作成

 このあまりに不自然な逮捕取りやめと不起訴処分には、当然、官邸の関与が疑われてきた。実際、「週刊新潮」が伊藤さんの問題で山口氏に問い合わせした際、山口氏はその対応を内閣調査室のトップで“官邸のアイヒマン”との異名を持つ北村滋内閣情報官(現・国家安全保障局長)に相談していた可能性まで指摘されている。というのも、山口氏は「週刊新潮」の取材メールに対し、誤ってこんな文書を送信しているのだ。

〈北村さま、週刊新潮より質問状が来ました。
伊藤の件です。取り急ぎ転送します。
山口敬之

 「Fw:」(転送)すべきところを「Re:」してしまうあたり、山口氏が相当焦っていたことが伺えるが、一方、北村氏率いる内調は、“伊藤さんの背後に民進党人脈がいる”というフェイク情報を流しバッシングを扇動していたという衝撃的な事実まで判明した。

 じつは伊藤さんが検察審査会に不服申し立てをして司法記者クラブで記者会見をおこなった直後から、ネット上では「詩織さんは民進党の回し者」なる風評が飛び交っていた。さらに半日も経たないうちに伊藤さんと伊藤さんの弁護士と民進党の山尾志桜里議員の関係をこじつけ、伊藤さんを「民進党関係者」だとするフェイクチャート図の画像がネット上に出回ったのだ。 

 だが、これについて「週刊新潮」は内調が流したものであると報道。記事では〈本誌が山口氏の問題を取り上げ、それから詩織さんが記者会見をする5月29日より少し前のこと。政治部のある記者は、知り合いの内調職員から右下の図を受け取った〉としてチャート図を紹介している。正確には、このチャート図自体は伊藤さんの会見写真が入っているため、会見後に作成されたものと考えられるのだが、内調が“こじつけの関係”を記した類似のペーパーを政治部記者に渡していたのはたしかだ。というのも、本サイトのもとにも会見前と会見後に「内調が伊藤詩織さんに対するカウンター情報をふれまわっている」という情報が届いていたからだ。つまり、内調は事前に関係を解説した資料を配布し、会見後、さらにそれを写真入りのチャート図に更新して配布したのかもしれない。さらに、本サイトの調査では、内調が情報を直接2ちゃんねるに投下した可能性すらうかがわれた。

 内調がフェイクニュースをでっち上げてマスコミにリークし、ネットにばらまく──。今夏に公開された映画『新聞記者』でも、この一件をモデルにしたと思われるシーンが登場するが、映画のなかの絵空事のような国家による謀略が、実際におこなわれていたのである。

 なぜ、元TBS記者の事件に、官邸の息がかかった警視庁刑事部長や内閣調査室がここまで動き回るのか。それは言うまでもなく、山口氏が「安倍首相にもっとも近いジャーナリスト」のひとりだからだ。

 ◆山口敬之と安倍首相の特別な関係! ヨイショ本出版の裏で「起訴なし」の検察情報入手か

 そもそも、山口氏はTBS時代から“安倍の太鼓持ち”と呼ばれるほど安倍首相と個人的に親しい関係を築いてきた。安倍首相は国会で山口氏について「取材対象として知っている(だけの関係)」などと言ってごまかしたが、山口氏の結婚披露宴に安倍首相が出席していたことを「FLASH」(光文社)が写真付きで報じている。しかも、山口氏の単行本デビュー作となったのは、2016年6月9日に発売された安倍総理礼賛本『総理』(幻冬舎)だった。

 しかし、この『総理』をめぐっても疑惑が出ている。山口氏はFacebookで“不起訴処分は2016年7月に関係者に伝えられ、その結論を得て本格的な記者活動を開始した”などと述べているが、山口氏が『総理』を出版したのは、前述したとおり2016年6月9日。つまり、山口氏は不起訴より1カ月も早く記者活動を開始していたのだ。

 そして、この事実について、作家の中村文則氏は毎日新聞2017年7月1日付愛知版で、こう疑義を呈した。

〈そもそも、首相の写真が大きく表紙に使われており、写真の使用許可が必要なので、少なくとも首相周辺は確実にこの出版を知っている(しかも選挙直前)。首相を礼賛する本が選挙前に出て、もしその著者が強かんで起訴されたとなれば、目前の選挙に影響が出る。〉
〈でも、山口氏の「総理」という本が16年6月9日に刊行されているのは事実で、これは奇妙なのだ。なぜなら、このとき彼はまだ書類送検中だから。
しかもその(『総理』発売日の)13日後は、参議院選挙の公示日だった。だからこの「総理」という本は、選挙を意識した出版で、首相と山口氏の関係を考えれば、応援も兼ねていたはず。そんなデリケートな本を、なぜ山口氏は、書類送検中で、自分が起訴されるかもしれない状態で刊行することができたのか。〉

 つまり、山口氏はなんらかのルートを使って起訴がないことを事前に把握していたのではないかと中村文則氏は分析したのだが、山口氏と中村格氏、内閣情報調査室トップだった北村前情報官との関係を考えると、裏で官邸が動き、首相のお友だちである山口氏にいち早く不起訴を知らせていた(あるいは不起訴になるようにも っていった)可能性は十分考えられるものだ。

 事件自体に数々の証拠が揃っていながら、なぜ不起訴となったのか。しかも、伊藤さんの不服申し立てに対し検察審査会は2017年9月に「不起訴相当」と議決。ネット上では「検察審査会の判断が出たのだから山口氏は無罪」とする擁護意見が溢れることになってしまった。

 ◆山口敬之は“性的マイノリティ認めるなら痴漢の権利も保障せよ”の小川榮太郎と会見

 だが、この検察審査会の議決についても、さまざまな疑問がある。まず、議決の理由は〈不起訴処分の裁定を覆すに足りる事由がない〉という、理由になっていない理由が記されているだけ。さらにどのような証拠をもって審査されたかもわからず、その上、補助弁護人も付いていなかったのだ。このことについて、元検事である郷原信郎弁護士は「補助弁護人が選任されていないということは、“法的に起訴すべきだった”という方向において、専門家の意見は反映されていないことを意味しています」と答えている(「週刊新潮」2017年10月5日号/新潮社)。

 しかも、検察審査会では安倍政権絡みの事件での不起訴に対する不服申し立てについては、同様の「不起訴相当」の議決がつづいている。かなり悪質だった甘利明・元経済再生相の現金授受問題でも、証拠隠滅のためハードディスクをドリルで破壊した小渕優子・元経産相の政治資金事件でも「不起訴相当」という議決だったからだ。

 このように、証拠が揃い、逮捕一歩手前までいったというのに、官邸周辺の人物が暗躍するなかで事件は闇に葬られようとしてきた。しかし、伊藤さんはネット上でひどい誹謗中傷に見舞われながらも、ブラックボックスを「オープン」にするため、民事裁判をおこなった。そして、ようやくその主張が民事司法によって認められたのだ。

 その道のりを想像するだけで胸が苦しくなるが、しかし、加害者の山口氏はさっそく会見を開き、控訴することを発表した。しかも、会見には同じく幻冬舎から安倍首相礼賛本を出版した小川榮太郎氏を同席させた。小川氏といえば、自民党杉田水脈衆院議員の“性的マイノリティには生産性がない”という差別言説を“性的マイノリティを認めるなら痴漢の触る権利も保障せよ”なるヘイトの上塗りで擁護し、さらに伊藤さんバッシングを繰り広げている人物だ。そのような人物を呼び寄せて会見を開くというのが、山口氏が何をバックにしてきたかを物語っている。

 しかし、ここまではっきりと伊藤さんの主張が認められたことを考えれば、求められるのは逮捕状取り消し、捜査圧力問題の再検証だ。これは伊藤さんひとりの問題ではない。この問題に黙ることは、権力に近い人物だというだけで逮捕が取り消されてしまうという、法治国家とは言えない状態を是としてしまうことになるからだ。今回の判決を受けて、ひとりでも多くの人がいま一度その意味の大きさ、重さを考えてほしいと願う。(編集部

 元稿:LITERA・リテラ(本と雑誌の知を再発見) 主要ニュース スキャンダル 【事件】  2022年01月26日  08:30:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説①】:トンガ海底噴火 ニーズに応じた支援を

2022-01-31 07:28:50 | 【災害・地震・津波・台風・竜巻・噴火・落雷・豪雪・大雪・暴風・土石流・気象状況】

【社説①】:トンガ海底噴火 ニーズに応じた支援を

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①】:トンガ海底噴火 ニーズに応じた支援を 

 南太平洋の島しょ国トンガで海底火山が噴火し2週間たった。

 現地では火山灰が降り積もり、最大15メートルの津波が押し寄せて、家屋が全て破壊された島もある。

 トンガ政府は死者3人と負傷者14人を確認した。津波と降灰による被害は、約10万人の国民の8割以上に及ぶと推計する。通信は回復しつつあるが、170の島々の被害の全容はつかめていない。

 各国の支援は本格化しつつある。オーストラリア、ニュージーランドに続き、日本は自衛隊機2機がまず飲料水などを届けた。

 食糧や医薬品、テントなども足りていない。国際社会は協調し、ニーズに応じた緊急支援をきめ細かく行う必要がある。

 現地では海底ケーブルが切れてインターネットがつながりにくい。港湾やリゾート施設は津波被害を受けた。降灰により主食のタロイモなどの栽培は当面困難だ。復興は長期化が予想されよう。

 ただトンガは外国人による救援活動を制限している。過去、はしかが大流行したことから、厳重な新型コロナウイルス対策を取る。

 現地派遣の自衛隊員が新型コロナに感染し、自衛隊機による支援は一時中断した。感染対策を可能な限り徹底した上で、支援活動に当たる必要がある。

 来月には自衛隊の輸送艦が、高圧洗浄機などの支援物資を積んで到着する予定だ。物資の受け渡しの際、接触時間をできるだけ短くするなどの工夫も欠かせまい。

 南太平洋唯一の王国トンガは伝統的な親日国で、皇室とも親交がある。東日本大震災の時は多額の支援金を寄せた。

 日本は島しょ国・地域との首脳会議「太平洋・島サミット」の開催を通じても関係を深めてきた。

 トンガ支援には中国のほか、南太平洋にも長年影響力を持つフランスも乗り出している。覇権主義を強める中国と日豪欧は対立しているが、トンガ支援を巡っては協力しながら対応すべきだ。

 今回の噴火では空気が強く震動する「空振」が津波を引き起こした。詳しいメカニズムの解明が急務だ。海底ケーブルが損傷しても、通信を途絶させないバックアップの重要性も浮かび上がった。

 日本はトンガと同様、太平洋の周囲約4万キロを取り巻く「環太平洋火山帯」に位置する。

 火山防災や復旧への知見と教訓をトンガ側と共有し合いながら、日本も含めた環太平洋地域の次の火山災害への備えを高めていってほしい。

 元稿:北海道新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2022年01月31日  07:28:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説②】:コロナ融資期限 破綻防ぐ再生探りたい

2022-01-31 07:28:40 | 【感染症(1類~5類)・新型コロナ・エボラ・食中毒・鳥インフル・豚コレラ】

【社説②】:コロナ融資期限 破綻防ぐ再生探りたい

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②】:コロナ融資期限 破綻防ぐ再生探りたい

 新型コロナ禍で打撃を受けた中小事業者に対し、政府が実質無利子・無担保融資(ゼロゼロ融資)を開始してまもなく2年となる。

 道内の政府系融資は計8千億円ほどで、道が対応する民間金融機関融資は1兆1700億円にも上る。元本返済は最大5年猶予できるが、9割が3年以内に設定する。

 当初はここまで影響が長引くとは思わなかったのだろう。無利子期間も3年間で切れてしまう。

 返済時期が近づくにつれ、金融機関と条件見直しを交渉する動きは活発化する。一方で返済できず倒産が多発する恐れも生じる。

 国は制度変更を図る必要があろう。その上で借り手の事業再建で破綻を防ぐことも大切だ。

 何度も経済危機に見舞われた道内は企業再生のノウハウが蓄積されている。道や経済界が主導して新たな枠組みを模索してほしい。

 この融資は国の経済対策として2020年3月に日本政策金融公庫が始めた。政府系は今も続く。

 当初は申し込みが殺到し、昨年5月までは民間金融機関の融資にも対象を広げた。この分の利子補給は道を通じて国が支払う形だ。

 メインバンク相手で政府系より利便性が高く、小売りや飲食業なども多く利用した。景気低迷でも倒産件数が少ない要因とされる。

 北海道新聞が先月行った全道商工会議所会頭アンケートでは制度拡充や回収期間延長を望む声が目立つ。一方で「既に限度額に近い企業が多い」として融資でなく給付金などを求める意見もある。

 確かに無利子とはいえ借金がかさめば経営の先行きは見えない。このため、道内信金の中には、融資先に資金繰りだけでなく収益改善やビジネスモデル転換をサポートする取り組みも見られる。

 取引先に寄り添う支援だ。ただ業態転換などのケースではまとまった資金も必要となる。ファンドなどの活用も考えられないか。

 日本政策投資銀行などは2年前、既存の胆振東部地震復興支援ファンドの対象をコロナ対応にも拡大してはいる。だが手軽さがないのか取り扱いはゼロという。

 自治体と銀行、信金が協力して地域ニーズをくみ取るべきだ。

 道は03年に道内行に声をかけ「北海道企業再生ファンド」を創設した実績がある。全国の地域再生ファンドの先行例となり、丸井今井救済などにも活用された。

 中小事業者は資金繰りとともに後継者難にも直面する。事業承継や技術支援も盛り込んだ新たな支援モデルをつくる必要があろう。

 元稿:北海道新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2022年01月31日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【卓上四季】:愛妻の日

2022-01-31 07:28:30 | 【学術・哲学・文化・文芸・芸術・芸能・小説・文化の担い手である著作権】

【卓上四季】:愛妻の日

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【卓上四季】:愛妻の日

 70年前、東京芸大に包括される前の東京美術学校で、「坐像(ざぞう)」という肖像画を描き上げ首席卒業した松山美知子さん。プロの画家へ歩み始めて3年後、結婚を機に筆を折る

 ▼絵は命と同じくらい大切だったが、「いちばん大切なもの、価値のあるものでなければ、捨てる価値はない」という決心である。結婚の相手は、卒業制作で二席に甘んじた同級生の平山郁夫さん。ご存じ、日本画の大家である

平山美知子5_2

 ▼「私のこと、どう、思っているの」と尋ねる美知子さんに、郁夫さんは顔を真っ赤にして答えた。「君と一緒だったら、世界を征服できると思うんだ」(「道はあとからついてくる」平山美知子)

平山郁夫

 ▼広島での被爆の後遺症に苦しみ、画業でも壁にぶつかる郁夫さんを、美知子さんは支えた。芸術家として戦うためには自分の城が必要と、家計簿を手に住宅資金を蓄えた。夫は妻を画家としての転機における「参謀のような存在」と称(たた)えた

 ▼1を英語のアイ、31をサイと呼ぶ語呂合わせで今日は「愛妻の日」なのだそうだ。「日本愛妻家協会」の山名清隆事務局長は「日本の男性は愛情表現が世界一苦手」といい、今夜は早めに帰宅し午後8(ハ)時9(グ)分に夫婦でハグするよう勧める

 ▼「愛夫の日」はないのかと、不平は言うまい。一緒に力を合わせればどんな苦難も乗り越えられると思えた日々を思い出し、照れずに、感謝の気持ちを伝えてみてはいかがか。2022・1・31

 元稿:北海道新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【卓上四季】  2022年01月31日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【風・論説委員室から】:改革なくして野党なし 志子田徹

2022-01-31 07:28:20 | 【政党・自民・立憲・維新の会・公明・国民民主・共産・社民・れいわ・地域政党他】

【風・論説委員室から】:改革なくして野党なし 志子田徹

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【風・論説委員室から】:改革なくして野党なし 志子田徹 

 昨年1年間で最も売れた本は「人は話し方が9割」(永松茂久著、すばる舎)だった。

 「相手の言うことを否定せず気持ち良くなるような発言を」「悪口を言う人に良い人はいない」などと書かれている。

 厳しい指摘が歓迎されない社会なのだろう。だから政治の世界でも「野党は批判ばかり」と責められるのか。

 立憲民主党の代表に47歳の泉健太氏が選出されてきょうで2カ月。泉氏は「政策提案路線」を掲げ「批判政党」とのレッテルをはがしたいという。国会の質問では党の政策を交えつつ政府を正すことを心がけているように見える。ただ、今のところ印象に残る提案や追及はない。

 野党が政策を提案しても実現させるのは政府・与党だ。採用されれば与党の実績、無視されたらそれまで。提案路線といっても前途は多難に違いない。

 既視感がある。

 2005年、立憲の前身である民主党は郵政選挙で敗北し、43歳の前原誠司氏が代表に就いた。前原氏は小泉純一郎政権との「改革競争」を目指し、政策の対案路線を打ち出した。

 ところが政府・与党に不祥事が相次いだのに追及しきれず、そのうちに偽メール問題が起きて半年余りで退陣した。

 立憲が同じ道をたどると言いたいのではない。基本姿勢が批判か提案かで揺れ、安定しない背景には、構造的な問題があることを指摘したい。

 野党第1党の役割が、日本では確立されていないのだ。

 1990年代の政治改革は、英国の「政権交代可能な政治」を手本とし、小選挙区制などを導入した。だが野党のあり方についての議論は乏しかった。

 英国で野党第1党の使命は明確である。いつでも政権を担う準備ができていることだ。そのために本格的な「影の内閣」をつくって与党と対峙(たいじ)し、選挙向けに精緻な政策を用意する。

 そもそも野党は与党のように官僚組織を活用できないため、政策立案は不利だ。これを補う目的で英国の野党には多くの「特権」が与えられる。日本で全政党が交付対象となる政党助成金は野党にだけ支給され、スタッフを雇う費用になる。

 また国会の審議は野党が議題を決めることも多く、党首討論は毎週行う。党首には閣僚並みの給与が支給され、式典では首相に次ぐ立場で参加する。

 野党を支援して政権監視を強化している国は多い。日本は政治改革で野党を支える仕組みを設けなかった結果、「弱い野党」を招いたのではないか。

 北大教授の時に「『野党』論」(筑摩書房)を書いた吉田徹・同志社大教授は言う。「日本は野党が与党とフェアに競える仕組みが整っていない。健全な野党を育てるための議論も必要だ」

 社会をより良くするためには、誰かが問題点を指摘しなければ解決に至ることはない。野党には率先して政府に異議を申し立てる役割がある。

 少数派など与党が顧みない声をすくい上げて可視化し、提起することも大事な使命だ。多様な民意を政府に反映させるため、野党の働きは欠かせない。

 批判と提案は表裏一体だ。核心を突いた追及ができてこそ、有権者の切望する政策が立案できるだろう。特に野党第1党は両方できることが求められる。

 こうした役割を果たしてもらうため、日本でも野党を支える制度が必要ではないか。独善的な政権運営を続けてきた現与党も野党になり得るのだから、必要性を自覚するべきだろう。社会も野党の役割の重要性を認識したい。多様性のある民主社会に野党は不可欠なのだから。

 元稿:北海道新聞社 主要ニュース 社説・解説・コラム 【風・論説委員室から】  2022年01月30日  10:51:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【通常国会】:開会2週間 首相の「聞く力」評価も…「議論」「検討」答弁に多用 「決める力」不足の声

2022-01-31 07:28:10 | 【国会(衆議院・参議院・議運 ・両院予算委員会他・議員定数・「1票の格差」...

【通常国会】:開会2週間 首相の「聞く力」評価も…「議論」「検討」答弁に多用 「決める力」不足の声

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【通常国会】:開会2週間 首相の「聞く力」評価も…「議論」「検討」答弁に多用 「決める力」不足の声 

 岸田文雄首相が初めて臨んだ通常国会の開会から2週間。首相は「議論する」「検討する」を連発し、かわす答弁が目立つ。一見前向きな言葉を多用して野党の言い分に理解や配慮を示し、挑発や否定を繰り返した安倍晋三元首相や菅義偉前首相のスタイルとは異なる。首相が強調する「聞く力」の表れとの評価がある一方、判断を曖昧にして難題を回避する姿勢もにじみ、「答える力」「決める力」不足の指摘も上がる。

  • 通常国会開会2週間 首相の「聞く力」評価も…「議論」「検討」答弁に多用 「決める力」不足の声

 首相は今国会の衆院予算委員会に計21時間出席し、「議論する」を78回、「検討する」を32回使った。国会会議録によると、昨年の臨時国会の衆参予算委でも計34時間の出席で「議論」181回、「検討」57回と連発。首相就任後初の予算委に35時間出席した菅氏の「議論」35回、「検討」42回と比べ際立って多い。

 元稿:北海道新聞社 朝刊 主要ニュース 政治 【国会・通常国会】  2022年01月31日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説】:DNA型捜査データ 保管基準の法制化急げ

2022-01-31 06:02:50 | 【警視庁・警察庁・都道府県警察本部・警察署・刑事・警察官・警部・監察官室・...

【社説】:DNA型捜査データ 保管基準の法制化急げ

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説】:DNA型捜査データ 保管基準の法制化急げ 

 容疑者本人や現場の遺留物から採取したDNA型を保管する警察庁のデータベース(DB)管理に、厳正な運用を求めた。妥当な判決だと言えよう。

 捜査時に取られたDNA型などのデータ抹消を名古屋市の男性が求めていた裁判で、名古屋地裁は男性の訴えを認めた。

 男性は暴行容疑で逮捕、起訴されたものの無罪が確定。無罪確定者のデータ保管はプライバシー侵害だと主張していた。

 地裁は無罪確定者のデータ保管には「具体的な必要性が示されるべきだ」と指摘。「国家公安委員会規則に基づいて運用している」とする警察の主張を退けた。公権力に恣意(しい)的に運用させないことを憲法上の権利だと位置付けた。

 犯人逮捕への重要な手掛かりになるDNA型は「究極の個人情報」である。にもかかわらず、日本ではデータ保管や抹消に関わる法が未整備なままだ。判決を機に、政府は明確なルール作りを急ぐ必要がある。

 DBに登録されたDNA型情報は、2020年末時点で141万件ある。国家公安委員会規則は、対象者の死亡時か「保管する必要がなくなったとき」にDBから抹消しなくてはならない、と定めている。

 だが実際の運用は警察次第。男性のように無罪や不起訴処分になった人のデータは抹消されずに残っているという。

 判決は公安委規則を「甚だ曖昧」とし「DNA型などには、みだりに使用されない一定の保護法益が認められるべきだ」とした。「すべて国民は個人として尊重される」という憲法13条を根拠に、警察が抹消したのかどうかも分からない現状では「国民の行動を萎縮させかねない」と指摘した。当然である。

 男性は「犯罪予備軍のような扱いを受けることは納得できない」と話したという。警察は重く受け止めなくてはならない。

 悪用されるとどうなるか―。危険な事例が隣国にあった。中国の新疆ウイグル自治区では住民のDNA型や指紋などが「健康診断」と称して採取されているという。集めたデータによって犯罪が捏造(ねつぞう)される恐れも否定できまい。そんな息苦しい社会を招かないためにも、明確なルールと厳正な運用が必要だ。

 一方で、DNA型のDBが難事件の解決に大きな力を発揮しているのも事実だろう。

 福山市では昨年秋、01年の明王台主婦殺害事件の容疑者が逮捕された。現場に残されていた犯人のDNA型がDBに登録されており、これが別件で捜査対象になった男のDNA型と一致したことが決め手になった。

 安心できる社会の実現は、凶悪事件の解決が重要である。DNA型鑑定のように時代とともに進歩する科学捜査は歓迎すべきだ。そのためには、日進月歩の捜査手法を法令で裏付けることも欠かせない。

 欧米では1990年代から法整備が進んでいる。ドイツは殺人や性犯罪などに条件を絞り、保管の是非も裁判所が判断する仕組みだ。カナダはデータと名前などの個人情報を切り離して運用しているという。

 いずれも科学捜査の手法を採り入れながら人権や個人情報に配慮する内容だ。日本も国民の理解が得られるよう十分に議論し、厳格で時代に即した法制化を実現しなければならない。

 元稿:中國新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2022年01月31日  06:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【天風録】:老朽化の警鐘

2022-01-31 06:02:40 | 【社会インフラの劣化(高速道路・国道等・橋・上下水道等の社会基盤の老朽化】

【天風録】:老朽化の警鐘

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【天風録】:老朽化の警鐘

 橋の手前でスクールバスを下ろされた児童たちが歩いて渡る。築57年の橋だけに、乗ったままより安全だからだ。米東部ペンシルベニア州の朝のそんな1こまをタイム誌が写真で紹介している。橋や道路の老朽化に警鐘を鳴らす40年余り前の記事である

 ▲その州で先週、長さ140メートルの橋が崩落した。建設から半世紀たった橋は「劣悪」な状態だと政府に判定されていたという。雪景色の中、真っ赤なバスや車が橋の上に取り残された映像は、見るだけで背筋が凍りそう

 ▲同じように劣悪だとされた橋は、その州だけで3千あり、全米では4万5千に上るという。40年前の警鐘は、抜本的改善にはつなげられなかったのだろうか

 ▲もちろん米政府も手をこまねいていたわけではない。例えば115兆円規模のインフラ投資法を昨年秋に成立させた。それをアピールしようと、バイデン大統領が同州を訪れる数時間前に、橋が崩壊したそうだ。あまりのタイミングの良さにも驚く

 ▲米国より30年遅くインフラ整備を本格化させた日本。10年後には道路橋やトンネルの半数が、建設から50年以上になるそうだ。老朽化は対岸の火事ではない。「聞く耳」発揮は警鐘にこそ、だろう。

 元稿:中國新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【天風録】  2022年01月31日  06:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説】:被買収県議ら「起訴相当」 責任認め、けじめつけよ

2022-01-31 06:02:20 | 【選挙・衆院選、参院選、補選・都道府県市町村長・地方議会・公職選挙法・買収事件】

【社説】:被買収県議ら「起訴相当」 責任認め、けじめつけよ

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説】:被買収県議ら「起訴相当」 責任認め、けじめつけよ 

 2019年夏の参院選広島選挙区の大規模買収事件で、河井克行元法相=実刑確定=らから現金を受け取った広島県議や広島市議ら35人を、検察審査会が「起訴相当」と議決した。

 既に辞職している市町議や後援会員ら46人については、再捜査を求める「不起訴不当」と議決。検察の捜査前に現金を返却していた県議や後援会員ら19人は「不起訴相当」とした。

 カネで票を動かすことは、民主主義の根幹を揺るがす。公選法の買収事件は買収する側と被買収側で成り立っており、双方が罪に問われる。しかし事件を捜査した東京地検特捜部は「受動的な立場」だったなどとして、被買収の100人全員を不起訴処分としていた。

 受け取った側だけ不問に付すのは極めて異例のことであり、何より公正を欠く。有権者が納得できるはずもない。検審の議決は公職にあるかどうかを重視しており、政治家により重い責任を求めてもいる。市民感情に沿う当然の判断だと言えよう。

 事件については、買収資金の出どころや、自民党本部から参院選前に提供された計1億5千万円の使途など、未解明の部分が多く、今なお真相はベールに包まれている。

 国民から選ばれた審査員による議決を、検察は重く受けとめるべきだ。現金を受け取ったのに責任を取ろうとしない議員はもちろん、巨額の資金を提供した党も、事件はまだ終わっていないことを肝に銘じなくてはならない。

 「起訴相当」の35人と不起訴不当の46人は、検察が今後再捜査し、起訴するかどうかを改めて決める。35人については再び不起訴としても強制起訴される可能性がある。

 議決は「起訴相当」の理由について「公職に就いていたにもかかわらず10万円以上の高額の金員を受領し、直後に返還するなどしておらず、辞職もしていない」「責任の重さ、情状の悪質性に鑑み、起訴するのが相当だ」としている。買収が法律違反であることは言うまでもなく、議員たちには分かりきったことだろう。

 そもそも被買収側の議員らは、起訴できるだけの証拠がありながら検察の裁量で不起訴処分となった。にもかかわらず、公職に居座り続けることに、有権者は不信感を募らせている。自らの罪や責任と向き合い、辞職するのが筋ではないか。

 議決は、検察の判断に対し「金員の受領が重大な違法行為であることを見失わせる恐れがある」とも述べている。至極まっとうな指摘であり誰しも納得できよう。早ければ3月下旬から順次時効が成立する。再捜査を急いでほしい。

 自民党も傍観できないはずだ。ところが広島選出の岸田文雄首相は議決を受けて「個別事件に関わるのでコメントは控える」と述べた。党本部が河井氏側に提供した選挙資金の使途についても「党から既に説明がなされたと承知している」と再調査の必要性を改めて否定した。党県連も「検察による今後の再調査を待って考える」としている。そんな悠長なことで許されようか。

 事件に関わったすべての人が事の重大さを認識すべきだ。うみを出し切り、あしき慣習を断ち切らなくてはならない。

 元稿:中國新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2022年01月30日  06:36:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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《社説①》:自殺者2万人超 孤独・孤立対策の深化を

2022-01-31 02:04:50 | 【自殺・自殺願望・過労、職責による自殺・集団自殺、社会から孤独・孤立の現状】:

《社説①》:自殺者2万人超 孤独・孤立対策の深化を

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説①》:自殺者2万人超 孤独・孤立対策の深化を

 昨年の自殺者数が警察庁の速報値で2万830人に上った。11年ぶりに増加した前年をやや下回ったが、依然として高い水準だ。

 深刻なのは経済・生活問題に起因する自殺の増加である。特に「生活苦」は前年同期に比べ約1割増え、1000人近くに達した。 

 新型コロナウイルスの感染拡大で、非正規労働者やフリーランスが職を失うケースが相次いだ。

 政府の生活困窮者対策が十分に届いていなかった可能性がある。検証が必要だ。

 女性の自殺者はコロナ下の2020年に急増し、高止まりしている。「介護・看病疲れ」など家庭の悩みが増えた。問題点を洗い出さなければならない。

 自殺対策を考えるうえで重要なのは「孤独・孤立」の問題だ。

 コロナ下で人の交流が制限され、望まない孤独や社会的孤立が深刻化した。誰にも助けを求められず追い詰められた結果、自殺につながった可能性が指摘される。 

 「社会全体で対応しなければならない問題」。政府は昨年末にまとめた重点計画で、孤独・孤立をこう位置付けた。

 各省庁の200以上の施策を「相談・支援」「官民の連携強化」など四つのテーマに整理した。

 だが、列挙しただけでは意味がない。限られた予算と人材を生かすため、省庁の壁を越えて取り組む必要がある。似た政策は統合し、強化すべき施策に重点配分するなど実効性を高めるべきだ。 

 現場の声を反映させることも欠かせない。

 生活困窮者を支援するNPOに「死にたい」という訴えが寄せられるなど、対応に苦慮するケースが増えている。どこにつなげばいいのかが分からないまま、救えないことがあってはならない。

 「支援のつなぎ目が切れ目」にならないよう、政府が主導して対策の深化を図るべきだ。適切な専門機関や担当部署を民間団体に伝える、「つなぎ役」に特化した窓口の設置も検討課題となる。

 日本は先進国の中でも自殺者が多く「自殺大国」と呼ばれる。

 状況を改善するには省庁の縦割りを排し、民間と連携した体制作りが求められる。不安を抱える人に必要な支援が届く社会を目指したい。

 元稿:毎日新聞社 東京朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2022年01月31日  02:01:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

 

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