ASEAN報道について、その後、見つけたものをあげておこう。今日のところはこれくらい。今日一日多忙、明日は早朝から多忙にて失礼。
日米同盟優先マスコミの視点は、憲法9条を持つ国のマスコミとしては腰が引けている。そもそもアメリカが、この地域に出てくることそのものに異論を唱えつつ、中国にものを申すことが必要ではないだろうか。この南シナ海問題も、歴史的にどのような経緯があるか、ASEAN、国際機関で話しうことが必要になってきたということか。その際に日本のリーダーシップは欠かせない。アジア太平洋に戦争を仕掛けたか外国としての責任だろう。
これに成功すれば、世界から信頼の目が寄せられることは確実だ。
西日本・京都・日経の社説を掲載しておこう。どれもこれも9条のことを言わないのがミソとクソだ。「安全保障は非軍事で」というのが、真の安全保障なのだが、そこまでの発想は、未だ日本では、コピーとしては小さなものでしかない。これが苦しいところだ。世界的には多数派になってきたというのに・・・。
あらためて日本の立ち居見渡せば9条持つ国活躍の時
では、ポイントを要約しておこう。最後は全文を掲載しておくのでご参考まで。
西日本
中国は大国を自任するのなら、周辺国への軍事的な圧力を自制し、領有権や漁業権の争いを対話によって平和的に解決する姿勢に転換すべきだ。…フィリピンやベトナムは米国との軍事的連携を強化することで、中国の圧力に対抗しようとする動きを強めている。米国のこの海域への関与は心強いが、中国封じ込めの性格が強まりすぎれば、かえって地域の緊張を高める恐れがある。南シナ海を米中の覇権争いの舞台にしないよう、米中両国の対話も必要だ。
京都
南シナ海が米中衝突の舞台になりかねない、との指摘もある。行動規範づくりの成否は大きな意味を持つことになろう。
日本は東シナ海の尖閣諸島問題で中国と対立しており、南シナ海の平和に向けたASEANと中国のルールづくりは、けっして他人事ではない。
これらの国々と密接な関係をもつ日本として、対話を促す役割を果たし、南シナ海の緊張緩和に少しでも貢献したい。
日経
中国とASEANは非公式会合で、9月から南シナ海での活動を法的に規制する「行動規範」策定に向けて協議を始めることで大筋合意していた。ところが、ASEAN側が中国への懸念表明を検討していると伝わるや、中国側は「条件整備を待たねばならない」(傅瑩外務次官)と協議開始時期の先送りを示唆。懸念表明を思いとどまるよう圧力をかけた。
中国は米国の対応を瀬踏みするように、ASEANなど周辺国への圧力をじわりと高めつつある。その矛先が尖閣問題を抱える日本に向かう可能性も高まっている。
これまでASEANはゆるやかな連帯感を維持しながら独自の外交を繰り広げてきた。11月にプノンペンで開く東アジア首脳会議までに、今回生じた溝を埋めなければ、再び中国の外交攻勢で分断を誘発されかねない。
(要約はここまで)
西日本新聞社説 南シナ海 対話解決の仕組みつくれ 2012年7月7日 10:39
南シナ海の島々の領有権をめぐり、中国と東南アジア諸国との緊張が高まっている。
中国とフィリピンがともに領有権を主張するスカボロー礁(中国名・黄岩島)では、4月上旬から約2カ月間、両国の艦船のにらみ合いが続いた。
フィリピン当局が、現場海域に停泊中の中国漁船を発見し、艦船を急行させて違法操業の疑いで調べたのが発端だ。中国も海洋監視船を急派し、双方の艦船や監視船が対峙(たいじ)する事態となった。
武力衝突も懸念されたが、6月上旬に双方の艦船が環礁外に移動し、衝突は避けられた。ただ、漁船は残っており、同じ事態がいつ発生してもおかしくない。
また、6月下旬には、南シナ海の南沙諸島と西沙諸島に関し、ベトナムが両諸島の領有権を定めた海洋法を国会で可決した。一方、中国も同じ日に、南沙、西沙諸島などを管轄する行政区を設置したと発表した。いずれも、領有権が自国にあるとアピールするのが狙いである。
東南アジア諸国に比べ、中国の軍事力は圧倒的だ。2010年にはインドネシアが南シナ海で中国の漁船を拿捕(だほ)したところ、中国の武装監視船が現場で解放を要求し、にらみ合いの末にインドネシアが解放を余儀なくされたこともある。
中国は、フィリピンとのにらみ合いの最中にも「弱小国でも強力な反撃に遭う運命にある」との論評を人民日報に掲載するなど、大国意識を丸出しにし、相手を威嚇する態度を示している。
中国は大国を自任するのなら、周辺国への軍事的な圧力を自制し、領有権や漁業権の争いを対話によって平和的に解決する姿勢に転換すべきだ。
中国と東南アジア諸国連合(ASEAN)は、02年に合意した「南シナ海行動宣言」で、武力の行使や威嚇の禁止、新たな占有の自制などを約束している。
中国もASEAN諸国も、同宣言を守り、国際海洋法裁判所への提起も含め、国際ルールにのっとった解決を目指すことが必要である。9日からは、ASEANや中国、日本、米国なども参加する一連の外相会議がカンボジアで開催される。「南シナ海行動宣言」を法的拘束力のある「行動規範」に格上げするための協議を、早急に始めるべきだ。
フィリピンやベトナムは米国との軍事的連携を強化することで、中国の圧力に対抗しようとする動きを強めている。
米国のこの海域への関与は心強いが、中国封じ込めの性格が強まりすぎれば、かえって地域の緊張を高める恐れがある。南シナ海を米中の覇権争いの舞台にしないよう、米中両国の対話も必要だ。
東シナ海でも、日本の領土である沖縄県尖閣諸島について、中国が領有権を主張していることから、両国間に摩擦が生じている。背景や構図は南シナ海の問題と共通する。日本はASEAN諸国と連携しながら、平和的解決の仕組みづくりを進めることが重要だ。
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/item/311575
京都新聞社説 南シナ海の規範 中国は受け入れるべき 2012年07月11日掲載]
南シナ海での活動を法的に拘束する「行動規範」の策定に向け、東南アジア諸国連合(ASEAN)と中国が9月に協議を始めることで合意した。
南シナ海問題を力ではなくルールで解決しようと、ようやく動きだした。協議の行方を期待を込めて注視したい。
南シナ海の南沙諸島や西沙諸島では、ベトナムやフィリピン、マレーシア、ブルネイなどASEAN各国と中国がそれぞれ領有権を主張し、長く対立が続いている。
南シナ海問題の平和的解決をうたった2002年の「南シナ海行動宣言」を履行するための指針が昨年7月にできたものの、まったく実効性がみられない。
先月までスカボロー礁をめぐって中国とフィリピンの艦船が2カ月以上もにらみ合うなど、対立は激化するばかりだ。
「行動宣言」は無視されたも同然といえる。法的拘束力を持つ「行動規範」を早急につくらなければ、対立がエスカレートし、一触即発の最悪事態に発展しかねない。
これまで南シナ海で軍事活動を繰り返してきた中国がまず、法的拘束力のあるルールを受け入れなければなるまい。経済・軍事の大国となった責任をわきまえ、国際協調の姿勢を見せてもらいたいところだ。
中国との協議開始を決めたASEAN外相会議は、同時に規範に盛り込む重要要素を承認した。
南シナ海での行動を管理・統制する枠組みや航行、上空飛行の自由の尊重、行動規範履行の監視-などの仕組みを検討する。
しかし、中国側がどこまで法的拘束力を認めるのか不透明で、協議は難航しそうだ。
南シナ海は石油や鉱物など海洋資源の宝庫であることが分かり、周辺国の利害が交錯するようになった。特に中国は近年、島に軍事施設を建てたり、ベトナム探査船のケーブルを切断するなど、海域の実効支配を誇示している。
こうした動きに米国はアジア太平洋地域を重視する新国防戦略を打ち出しており、フィリピンやベトナムから頼りにされている。
南シナ海が米中衝突の舞台になりかねない、との指摘もある。行動規範づくりの成否は大きな意味を持つことになろう。
日本は東シナ海の尖閣諸島問題で中国と対立しており、南シナ海の平和に向けたASEANと中国のルールづくりは、けっして他人事ではない。
これらの国々と密接な関係をもつ日本として、対話を促す役割を果たし、南シナ海の緊張緩和に少しでも貢献したい。
http://www.kyoto-np.co.jp/info/syasetsu/20120711_3.html
日経 ARF閉幕 中国、領有権問題で「攻勢」 2012/7/12 21:00
アジア太平洋地域の安全保障を話し合う東南アジア諸国連合(ASEAN)地域フォーラム(ARF)閣僚会議が12日に閉幕した。焦点だった中国とフィリピンなどが領有権を争う南シナ海問題では、中国の攻勢が目立った。米国は中国の同海域での活動をけん制したが、肝心のASEAN内部で足並みが乱れた。
「国際法に基づいて、南シナ海で航行の自由と安定が維持されるかどうかに関心を寄せている」。クリントン米国務長官は南シナ海での影響力を強める中国をけん制。玄葉光一郎外相も「国際社会共通の関心だ」と同調した。
中国の楊外相は「これまで中国が航行の自由を妨げたことはない」と反論。問題解決は当事国同士の協議にゆだねるべきで、米国などの介入は問題を複雑にするだけだと指摘した。
ただ、言葉上の米国との応酬とは裏腹に、楊外相は温和な表情を崩さなかった。積極的な海洋進出を巡って日米韓から集中砲火を浴びた昨年とは異なり、今年は「良い話し合いができている」と余裕を見せた。
こうした雰囲気を逃さず、中国側は南シナ海での活動を積極化する方針だ。中国同行筋は12日、2013年までに新たに36隻の大型海洋監視船を建造し、南シナ海などの監視強化に充てる考えを明らかにした。中国メディアは同日、30隻からなる中国海南省の大規模漁船団が南沙諸島周辺海域で操業するために出港したことを伝えた。
中国の積極的な海洋進出に、ASEANの総意として「懸念」を表明すべきか否か――。南シナ海問題を巡る議論を通じ、中国への反発を強めるベトナムやフィリピンと、中国からの経済支援強化を望む議長国カンボジアなどとの立場の違いが浮き彫りになった。
中国とASEANは非公式会合で、9月から南シナ海での活動を法的に規制する「行動規範」策定に向けて協議を始めることで大筋合意していた。ところが、ASEAN側が中国への懸念表明を検討していると伝わるや、中国側は「条件整備を待たねばならない」(傅瑩外務次官)と協議開始時期の先送りを示唆。懸念表明を思いとどまるよう圧力をかけた。
中国側の自信の背景には、対米関係維持への自信がありそうだ。中国同行筋は、4月上旬に北京で開いた米中戦略・経済対話で「米国と一定の信頼関係を構築できたことが大きい」という。
「米中関係さえ良ければ、米国はアジア太平洋での中国の行動に口出ししなくなるのではないか」。米国の反応を注視していた中国はその後、ベトナム近海での資源開発計画、ベトナムと領有権を争う南シナ海の南沙(スプラトリー)諸島を管轄する行政単位「三沙市」の新設などの強硬策を相次いで発表した。
中国は米国の対応を瀬踏みするように、ASEANなど周辺国への圧力をじわりと高めつつある。その矛先が尖閣問題を抱える日本に向かう可能性も高まっている。
これまでASEANはゆるやかな連帯感を維持しながら独自の外交を繰り広げてきた。11月にプノンペンで開く東アジア首脳会議までに、今回生じた溝を埋めなければ、再び中国の外交攻勢で分断を誘発されかねない。(プノンペン=島田学)
http://www.nikkei.com/article/DGXNASGM1205M_S2A710C1FF1000/
日米同盟優先マスコミの視点は、憲法9条を持つ国のマスコミとしては腰が引けている。そもそもアメリカが、この地域に出てくることそのものに異論を唱えつつ、中国にものを申すことが必要ではないだろうか。この南シナ海問題も、歴史的にどのような経緯があるか、ASEAN、国際機関で話しうことが必要になってきたということか。その際に日本のリーダーシップは欠かせない。アジア太平洋に戦争を仕掛けたか外国としての責任だろう。
これに成功すれば、世界から信頼の目が寄せられることは確実だ。
西日本・京都・日経の社説を掲載しておこう。どれもこれも9条のことを言わないのがミソとクソだ。「安全保障は非軍事で」というのが、真の安全保障なのだが、そこまでの発想は、未だ日本では、コピーとしては小さなものでしかない。これが苦しいところだ。世界的には多数派になってきたというのに・・・。
あらためて日本の立ち居見渡せば9条持つ国活躍の時
では、ポイントを要約しておこう。最後は全文を掲載しておくのでご参考まで。
西日本
中国は大国を自任するのなら、周辺国への軍事的な圧力を自制し、領有権や漁業権の争いを対話によって平和的に解決する姿勢に転換すべきだ。…フィリピンやベトナムは米国との軍事的連携を強化することで、中国の圧力に対抗しようとする動きを強めている。米国のこの海域への関与は心強いが、中国封じ込めの性格が強まりすぎれば、かえって地域の緊張を高める恐れがある。南シナ海を米中の覇権争いの舞台にしないよう、米中両国の対話も必要だ。
京都
南シナ海が米中衝突の舞台になりかねない、との指摘もある。行動規範づくりの成否は大きな意味を持つことになろう。
日本は東シナ海の尖閣諸島問題で中国と対立しており、南シナ海の平和に向けたASEANと中国のルールづくりは、けっして他人事ではない。
これらの国々と密接な関係をもつ日本として、対話を促す役割を果たし、南シナ海の緊張緩和に少しでも貢献したい。
日経
中国とASEANは非公式会合で、9月から南シナ海での活動を法的に規制する「行動規範」策定に向けて協議を始めることで大筋合意していた。ところが、ASEAN側が中国への懸念表明を検討していると伝わるや、中国側は「条件整備を待たねばならない」(傅瑩外務次官)と協議開始時期の先送りを示唆。懸念表明を思いとどまるよう圧力をかけた。
中国は米国の対応を瀬踏みするように、ASEANなど周辺国への圧力をじわりと高めつつある。その矛先が尖閣問題を抱える日本に向かう可能性も高まっている。
これまでASEANはゆるやかな連帯感を維持しながら独自の外交を繰り広げてきた。11月にプノンペンで開く東アジア首脳会議までに、今回生じた溝を埋めなければ、再び中国の外交攻勢で分断を誘発されかねない。
(要約はここまで)
西日本新聞社説 南シナ海 対話解決の仕組みつくれ 2012年7月7日 10:39
南シナ海の島々の領有権をめぐり、中国と東南アジア諸国との緊張が高まっている。
中国とフィリピンがともに領有権を主張するスカボロー礁(中国名・黄岩島)では、4月上旬から約2カ月間、両国の艦船のにらみ合いが続いた。
フィリピン当局が、現場海域に停泊中の中国漁船を発見し、艦船を急行させて違法操業の疑いで調べたのが発端だ。中国も海洋監視船を急派し、双方の艦船や監視船が対峙(たいじ)する事態となった。
武力衝突も懸念されたが、6月上旬に双方の艦船が環礁外に移動し、衝突は避けられた。ただ、漁船は残っており、同じ事態がいつ発生してもおかしくない。
また、6月下旬には、南シナ海の南沙諸島と西沙諸島に関し、ベトナムが両諸島の領有権を定めた海洋法を国会で可決した。一方、中国も同じ日に、南沙、西沙諸島などを管轄する行政区を設置したと発表した。いずれも、領有権が自国にあるとアピールするのが狙いである。
東南アジア諸国に比べ、中国の軍事力は圧倒的だ。2010年にはインドネシアが南シナ海で中国の漁船を拿捕(だほ)したところ、中国の武装監視船が現場で解放を要求し、にらみ合いの末にインドネシアが解放を余儀なくされたこともある。
中国は、フィリピンとのにらみ合いの最中にも「弱小国でも強力な反撃に遭う運命にある」との論評を人民日報に掲載するなど、大国意識を丸出しにし、相手を威嚇する態度を示している。
中国は大国を自任するのなら、周辺国への軍事的な圧力を自制し、領有権や漁業権の争いを対話によって平和的に解決する姿勢に転換すべきだ。
中国と東南アジア諸国連合(ASEAN)は、02年に合意した「南シナ海行動宣言」で、武力の行使や威嚇の禁止、新たな占有の自制などを約束している。
中国もASEAN諸国も、同宣言を守り、国際海洋法裁判所への提起も含め、国際ルールにのっとった解決を目指すことが必要である。9日からは、ASEANや中国、日本、米国なども参加する一連の外相会議がカンボジアで開催される。「南シナ海行動宣言」を法的拘束力のある「行動規範」に格上げするための協議を、早急に始めるべきだ。
フィリピンやベトナムは米国との軍事的連携を強化することで、中国の圧力に対抗しようとする動きを強めている。
米国のこの海域への関与は心強いが、中国封じ込めの性格が強まりすぎれば、かえって地域の緊張を高める恐れがある。南シナ海を米中の覇権争いの舞台にしないよう、米中両国の対話も必要だ。
東シナ海でも、日本の領土である沖縄県尖閣諸島について、中国が領有権を主張していることから、両国間に摩擦が生じている。背景や構図は南シナ海の問題と共通する。日本はASEAN諸国と連携しながら、平和的解決の仕組みづくりを進めることが重要だ。
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/item/311575
京都新聞社説 南シナ海の規範 中国は受け入れるべき 2012年07月11日掲載]
南シナ海での活動を法的に拘束する「行動規範」の策定に向け、東南アジア諸国連合(ASEAN)と中国が9月に協議を始めることで合意した。
南シナ海問題を力ではなくルールで解決しようと、ようやく動きだした。協議の行方を期待を込めて注視したい。
南シナ海の南沙諸島や西沙諸島では、ベトナムやフィリピン、マレーシア、ブルネイなどASEAN各国と中国がそれぞれ領有権を主張し、長く対立が続いている。
南シナ海問題の平和的解決をうたった2002年の「南シナ海行動宣言」を履行するための指針が昨年7月にできたものの、まったく実効性がみられない。
先月までスカボロー礁をめぐって中国とフィリピンの艦船が2カ月以上もにらみ合うなど、対立は激化するばかりだ。
「行動宣言」は無視されたも同然といえる。法的拘束力を持つ「行動規範」を早急につくらなければ、対立がエスカレートし、一触即発の最悪事態に発展しかねない。
これまで南シナ海で軍事活動を繰り返してきた中国がまず、法的拘束力のあるルールを受け入れなければなるまい。経済・軍事の大国となった責任をわきまえ、国際協調の姿勢を見せてもらいたいところだ。
中国との協議開始を決めたASEAN外相会議は、同時に規範に盛り込む重要要素を承認した。
南シナ海での行動を管理・統制する枠組みや航行、上空飛行の自由の尊重、行動規範履行の監視-などの仕組みを検討する。
しかし、中国側がどこまで法的拘束力を認めるのか不透明で、協議は難航しそうだ。
南シナ海は石油や鉱物など海洋資源の宝庫であることが分かり、周辺国の利害が交錯するようになった。特に中国は近年、島に軍事施設を建てたり、ベトナム探査船のケーブルを切断するなど、海域の実効支配を誇示している。
こうした動きに米国はアジア太平洋地域を重視する新国防戦略を打ち出しており、フィリピンやベトナムから頼りにされている。
南シナ海が米中衝突の舞台になりかねない、との指摘もある。行動規範づくりの成否は大きな意味を持つことになろう。
日本は東シナ海の尖閣諸島問題で中国と対立しており、南シナ海の平和に向けたASEANと中国のルールづくりは、けっして他人事ではない。
これらの国々と密接な関係をもつ日本として、対話を促す役割を果たし、南シナ海の緊張緩和に少しでも貢献したい。
http://www.kyoto-np.co.jp/info/syasetsu/20120711_3.html
日経 ARF閉幕 中国、領有権問題で「攻勢」 2012/7/12 21:00
アジア太平洋地域の安全保障を話し合う東南アジア諸国連合(ASEAN)地域フォーラム(ARF)閣僚会議が12日に閉幕した。焦点だった中国とフィリピンなどが領有権を争う南シナ海問題では、中国の攻勢が目立った。米国は中国の同海域での活動をけん制したが、肝心のASEAN内部で足並みが乱れた。
「国際法に基づいて、南シナ海で航行の自由と安定が維持されるかどうかに関心を寄せている」。クリントン米国務長官は南シナ海での影響力を強める中国をけん制。玄葉光一郎外相も「国際社会共通の関心だ」と同調した。
中国の楊外相は「これまで中国が航行の自由を妨げたことはない」と反論。問題解決は当事国同士の協議にゆだねるべきで、米国などの介入は問題を複雑にするだけだと指摘した。
ただ、言葉上の米国との応酬とは裏腹に、楊外相は温和な表情を崩さなかった。積極的な海洋進出を巡って日米韓から集中砲火を浴びた昨年とは異なり、今年は「良い話し合いができている」と余裕を見せた。
こうした雰囲気を逃さず、中国側は南シナ海での活動を積極化する方針だ。中国同行筋は12日、2013年までに新たに36隻の大型海洋監視船を建造し、南シナ海などの監視強化に充てる考えを明らかにした。中国メディアは同日、30隻からなる中国海南省の大規模漁船団が南沙諸島周辺海域で操業するために出港したことを伝えた。
中国の積極的な海洋進出に、ASEANの総意として「懸念」を表明すべきか否か――。南シナ海問題を巡る議論を通じ、中国への反発を強めるベトナムやフィリピンと、中国からの経済支援強化を望む議長国カンボジアなどとの立場の違いが浮き彫りになった。
中国とASEANは非公式会合で、9月から南シナ海での活動を法的に規制する「行動規範」策定に向けて協議を始めることで大筋合意していた。ところが、ASEAN側が中国への懸念表明を検討していると伝わるや、中国側は「条件整備を待たねばならない」(傅瑩外務次官)と協議開始時期の先送りを示唆。懸念表明を思いとどまるよう圧力をかけた。
中国側の自信の背景には、対米関係維持への自信がありそうだ。中国同行筋は、4月上旬に北京で開いた米中戦略・経済対話で「米国と一定の信頼関係を構築できたことが大きい」という。
「米中関係さえ良ければ、米国はアジア太平洋での中国の行動に口出ししなくなるのではないか」。米国の反応を注視していた中国はその後、ベトナム近海での資源開発計画、ベトナムと領有権を争う南シナ海の南沙(スプラトリー)諸島を管轄する行政単位「三沙市」の新設などの強硬策を相次いで発表した。
中国は米国の対応を瀬踏みするように、ASEANなど周辺国への圧力をじわりと高めつつある。その矛先が尖閣問題を抱える日本に向かう可能性も高まっている。
これまでASEANはゆるやかな連帯感を維持しながら独自の外交を繰り広げてきた。11月にプノンペンで開く東アジア首脳会議までに、今回生じた溝を埋めなければ、再び中国の外交攻勢で分断を誘発されかねない。(プノンペン=島田学)
http://www.nikkei.com/article/DGXNASGM1205M_S2A710C1FF1000/