オスプレイの配備が強行され、訓練が繰り返されている。日米合同委員会の「合意」のデタラメさ、すなわち屈辱性がますます明らかになったが、このことは、この委員会が設置されて以降の歴史を見れば明瞭だったし、「合意」文書を読めば、何らの歯止めにならないことは最初から判っていたことだ。
このことは愛国者の邪論も、指摘してきた。
ただ言えることは、これだけ反対運動が発展したことを受けて、国民の前に委員会の姿を明らかにしたことは、歴史の大いなる前進だった。だが、これだけ大きな反対の声を受けても、なお、このようなウソとペテンを堂々と断行するところに、日米両政府のしたたかさとじゃも見えてきた。
こうした日米政府のしたたかさ、姑息さをひっくり返していくためには、「このままでは日米同盟が大変なことになるぞ」などという「脅し」は止めて、日米軍事同盟を廃棄して、軍事基地の撤去、軍事費の地域振興費への転用、日米平和友好条約の締結、憲法第9条に基づくアジア平和共同体の構築を高らかに宣言することだ。中世以後の沖縄の中継貿易基地としての役割を見直し、沖縄の地政学的位置を平和の砦、平和のためのハブ基地として、積極的に発信していくことだ。
沖縄の位置そのものは、観光資源としても、貿易中継地としても、貴重だ。このことは「抑止力」論の裏返しとして考えてみれば、ハッキリする。歴史的に見ても証明できる。ペリー来航の狙いが、中国との貿易基地としての琉球を位置づけたこと、これは産業革命が世界を一つにしたという意味もあるし、それを軍事力によって具体化しようとするアメリカの意図もあった。このことは沖縄戦をソ連や中国の最前線基地として位置づけたことなどを見れば判る。
だが、沖縄が本来持っている役割を、「軍事的抑止力」論から憲法第9条にもとづく「平和的抑止力」論に転換していくことこそ、沖縄の発展、日本改革の方向と言える。東アジアにおける平和のための発信基地としての日本、東太平洋から太平洋全域に渡って平和の枠組みを構築する展望を明らかにすることだ。そのための理論的枠組みを、全国に、東アジアに、太平洋全域に、より強力に発信していくのだ。別名「黒潮抑止力」論と言ってもいいだろう。
以下、沖縄タイムスと琉球新報社説から沖縄県の自縄自縛論をみてみよう。
沖縄県の要請内容は以下のとおりだ。矛盾に満ちていないだろうか。
オスプレイの配備反対と同時に(1)本土への配置分散の実施(2)日米合意の徹底的な順守(3)住民地域に隣接する着陸帯の運用停止(4)普天間移設・返還の加速化-の4点を要求。
宜野湾市も配備の即時撤回と普天間の即時閉鎖・返還を文書で求めた。
仲井間知事の発言の中で、注目するのは、以下の発言だ。日米合同委員会の「合意」の「実効性」は「難しいと思っていた」と、茶番であることは判っているにもかかわらず、安全性を求めているのだ。「子どもだまし」と言う点では、森本大臣、いや日米政府と同じではないか?
(1)日米合意について「(米軍の運用で)実効性を担保するのは難しいと思っていたら、案の定無理がある」「沖縄から(本土への)分散は強い願い。配置換えも含めてしっかり取り組んでほしい」などと求めた。言葉では直接、配備撤回に触れなかったものの、反対を前提としつつ安全運用や負担軽減を具体的に求めた。
(2)仲井真知事は、日米合同委で合意した安全対策について「住民地域を通らないのは事実上無理。実効性を担保するのは難しく、無理があると思う」と述べ、米軍普天間飛行場の返還も含めた負担軽減を求めた。
森本防衛大臣の発言は、沖縄県の要請の弱点を如実に、というか、アメリカの意向を正直に代弁してくれた。本土で訓練を行えば、沖縄にいないので負担軽減になるという。沖縄の主張する「分散配置」による負担軽減論の矛盾をよく示している。しかも「人員を一緒に置く」「遠く離れれば訓練もしづらい」など、アメリカの思惑を代弁している。だが、「実効性」が「難しい」とする「日米合同委員会などを通して説明を求める」と、ここでもウソとペテンを繰り返しているのだ。
(1)要請書で求めた本土への分散配置について「訓練のためには人員も一緒に置くことが必要。オスプレイの機体だけを分散して配置するのは、現実的ではない」
(2)配置そのものの分散に「人員と機体が遠く離れれば訓練もしづらく、米側も難色を示すだろう」と否定的な見方を示した。
(3)沖縄の負担軽減策として「(日米合意に盛り込んだ)訓練移転が現実的」との考えを強調
(4)「例えば1カ月間、自衛隊東富士演習場(静岡県)で訓練を行えばその間は沖縄にいないことになる」と訓練移転による効果を説明。
(5)沖縄に限らず本土の関係自治体への情報提供のため、米軍の訓練計画の全容を明らかにするよう米側に求める考えも示した。「日米合同委員会などを通じて説明を求める」と述べ、現時点で回答はない
こうした森本大臣の発言に対して仲井間知事の発言は、沖縄県の弱点をさらに明らかにした。日米軍事同盟を「抑止力」とする森本大臣に対して、仲井間知事の発言は、同じ枠内で論じていることが判る。これは解決の道を遅らせるだけだ。「沖縄復興」というアメをしゃぶらされて、日米軍事同盟というムチで叩かれることを「良し」とすることに他ならない。県民の要望を裏切るものだ。
(1)森本敏防衛相が「現実的ではない」と否定的な考えを述べたことについて「大変失礼な話だ。セーフティー(安全性)とセキュリティー(安全保障)を混乱して話している。防衛相としてしっかりやってもらいたい」と反論した。
(2)日米合同委員会合意への違反を指摘し「現実に合わないものは安全の保証にならない。子どもだましだ」と批判。
こうしたなかで、野田首相の発言は、何ら重みのない、薄っぺらな発言だ。この首相の言葉の軽さが、ここでも明らかになった。消費税増税・原発などでもそうであったように、この時点で、最悪最低の首相を更新中と言える。
(1)「(要請は)重く受け止める」とする一方で配備撤回には言及せず、日米で合意した安全確保策の順守を米側に求め、全国への訓練移転を推進する従来の政府方針を説明するにとどめた。
(2) 野田首相は、合意違反を指摘する声が知事はじめ県内で相次いでいることを踏まえ「順守されるよう政府としてしっかりフォローアップする」「基地負担軽減、沖縄振興にこれまで以上に一層取り組みを強める」と述べ、今後は普天間の移設・返還に取り組む姿勢を示した。
こうした沖縄県と政府のやり取りに対して、沖縄のメディアはどう伝えたか、ここにも目を向けなければならない。これが県民世論、県民意識を形成していくからだ。
「沖縄タイムス」は「社説」を掲載していない。記事を伝えているだけだ。印象としては、その伝え方は、沖縄県を代弁しているように見える。社説が出た段階でコメントしてみよう。
「琉球新報」は、このやり取りを「社説」に掲載した。ポイントは以下のとおりだ。
「不純な動機を隠そうともしない無神経さに、怒りを禁じ得ない」「許し難いのは、首相会談直後に、沖縄政策に関する関係閣僚と知事との意見交換の場が政府側の提案で設定されたことだ。沖縄の基地負担軽減と沖縄振興策をセットにして話し合うこと自体、『アメとムチ』で問題解決を図ろうという魂胆が見え隠れしており、やはり不純なものを感じる」と激しい言葉を使って、その怒りを表現している。
だが、この激しい言葉とは裏腹に、「琉球新報」の主張は、極めて不十分だ。以下みてみよう。
「裏を返せば、野田政権や防衛官僚などの間には、『沖縄はしょせん、金次第で片が付く』との差別意識が根強いことを示している。より悪質なのは、そのような誤った認識を、国民にも植え付けようと躍起になっている」「本来ならば安全対策の順守徹底を確約するのが筋だ。そうしない、いや、できないのは、配備ありきで、米軍の運用を制限する安全対策が“空手形”であることを知っているからにほかならない。 首相―知事会談や関係閣僚会合は、沖縄は懐柔できるとの国民向けのパフォーマンスであり意図的な印象操作だとの疑いを指摘せざるを得ない。県民は単なるセレモニーやガス抜きの場など望んでいない。日本政府は即刻、オスプレイ配備の見直しを米側に要求すべき」としている。
が、この間の経過をみれば、日本政府は「要求」などするはずもない、できないことは明らかだ。だが、それでも日米政府を「信頼」しているのかどうか判らないが、政府に米側に要請することを求めているのだ。日本政府が要請すれば米側が呑むと思っているとしか言いようがない。この主張が「空手形」であることは明らかだ。
何故、こういう主張になるか。それは国民を分断させる「差別意識」論と軍事基地を容認する「抑止力」論の呪縛に囚われているからだ。
「単なるセレモニーやガス抜きの場など望んでいない」「日本政府は即刻、オスプレイ配備の見直しを米側に要求すべき」と主張するのであれば、真に県民の要求を米側に呑ませるためにはどうするかを考えなければならない。
それは、最初に述べた構想を打ち出すこと、フィリピンや南米のような政権づくりを、日本的に実現していくことだ。実効性ない安全対策から脱却し、実効性のある安全保障論を展開し、そのための世論を喚起していく、これがジャーナリズムの真骨頂としなければならない。
以下、資料とした記事を掲載しておこう。
知事、分散配置めぐる防衛相発言に反論2012年10月12日 11時32分
仲井真弘多知事は12日午前の定例記者会見で、県が要請したオスプレイの県外への分散配置をめぐり、森本敏防衛相が「現実的ではない」と否定的な考えを述べたことについて「大変失礼な話だ。セーフティー(安全性)とセキュリティー(安全保障)を混乱して話している。防衛相としてしっかりやってもらいたい」と反論した。 沖縄で始まったオスプレイの訓練飛行について、日米合同委員会合意への違反を指摘し「現実に合わないものは安全の保証にならない。子どもだましだ」と批判。飛行実態のデータを集めた上で、あらためて政府に申し入れる考えを示した。 県地域安全政策課は同日午前、知事が21日から米ワシントンを訪問する日程を発表した。23日に沖縄の米軍基地に関するシンポジウムを開き、24日にオスプレイ配備反対を求める米政府への要請を予定している。http://article.okinawatimes.co.jp/article/2012-10-12_40123
オスプレイ分散:防衛相「現実的でない」2012年10月12日 09時15分
【東京】森本敏防衛相は11日夜、垂直離着陸輸送機MV22オスプレイの米軍普天間飛行場配備をめぐり、仲井真弘多知事が野田佳彦首相に提出した要請書で求めた本土への分散配置について「訓練のためには人員も一緒に置くことが必要。オスプレイの機体だけを分散して配置するのは、現実的ではない」との考えを示した。 都内でフジテレビの番組出演後に、記者団に語った。 配置そのものの分散に「人員と機体が遠く離れれば訓練もしづらく、米側も難色を示すだろう」と否定的な見方を示した。 同時に、沖縄の負担軽減策として「(日米合意に盛り込んだ)訓練移転が現実的」との考えを強調した。 番組では「例えば1カ月間、自衛隊東富士演習場(静岡県)で訓練を行えばその間は沖縄にいないことになる」と訓練移転による効果を説明。番組出演後には、東富士演習場はあくまで例示とする一方で「実際に、海兵隊はこれまで訓練で同訓練場を使用している」とも述べた。 さらに、沖縄に限らず本土の関係自治体への情報提供のため、米軍の訓練計画の全容を明らかにするよう米側に求める考えも示した。「日米合同委員会などを通じて説明を求める」と述べ、現時点で回答はないとした。
http://article.okinawatimes.co.jp/article/2012-10-12_40097
オスプレイ:配備撤回要請 知事、首相に直談判2012年10月10日 09時40分
野田首相(中央右)と会談する仲井真弘多知事(同左)。左端は宜野湾市の佐喜真淳市長=9日午前、首相官邸
【東京】仲井真弘多知事と佐喜真淳宜野湾市長は9日、野田佳彦首相と首相官邸で会談し、垂直離着陸輸送機MV22オスプレイの米軍普天間飛行場への配備中止を求める要請書を提出し、配備撤回を求めた。野田首相は「(要請は)重く受け止める」とする一方で配備撤回には言及せず、日米で合意した安全確保策の順守を米側に求め、全国への訓練移転を推進する従来の政府方針を説明するにとどめた。 森本敏防衛相は同日の会見で首相と同様の考えを示しつつ、配備見直しは考えていないとの姿勢をあらためて表明した。
県の要請書はオスプレイの配備反対と同時に(1)本土への配置分散の実施(2)日米合意の徹底的な順守(3)住民地域に隣接する着陸帯の運用停止(4)普天間移設・返還の加速化-の4点を要求。宜野湾市も配備の即時撤回と普天間の即時閉鎖・返還を文書で求めた。
仲井真知事は野田首相に対し、日米合意について「(米軍の運用で)実効性を担保するのは難しいと思っていたら、案の定無理がある」と指摘。具体的な対応として「沖縄から(本土への)分散は強い願い。配置換えも含めてしっかり取り組んでほしい」などと求めた。言葉では直接、配備撤回に触れなかったものの、反対を前提としつつ安全運用や負担軽減を具体的に求めた。
佐喜真市長は「さらなる過重負担で、とうてい受け入れることはできない」と配備撤回を強く訴えた。 野田首相は、合意違反を指摘する声が知事はじめ県内で相次いでいることを踏まえ「順守されるよう政府としてしっかりフォローアップする」と説明。同時に「基地負担軽減、沖縄振興にこれまで以上に一層取り組みを強める」と述べ、今後は普天間の移設・返還に取り組む姿勢を示した。 仲井真知事らは同日、官房長官、防衛、外務、沖縄担当、財務の各閣僚でつくる沖縄関係閣僚会議にも出席し、オスプレイを含めた基地負担軽減、沖縄振興について意見交換した。http://article.okinawatimes.co.jp/article/2012-10-10_40028
オスプレイ:知事、首相に分散配備を要請2012年10月9日 12時51分
【東京】仲井真弘多知事と宜野湾市の佐喜真淳市長は9日、首相官邸に野田佳彦首相を訪ね、沖縄に12機が移動した垂直離着陸輸送機MV22オスプレイの配備見直しや、全国への分散配備を要請した。野田首相は安全対策の順守に向けて「政府としてもフォローアップしたい」と述べたが、配備見直しへの言及はなかった。 仲井真知事は、日米合同委で合意した安全対策について「住民地域を通らないのは事実上無理。実効性を担保するのは難しく、無理があると思う」と述べ、米軍普天間飛行場の返還も含めた負担軽減を求めた。 首相との面会後、仲井真知事と佐喜真市長は樽床伸二沖縄担当相や森本敏防衛相、玄葉光一郎外相、城島光力財務省、藤村修官房長官と懇談。あらためてオスプレイの配備見直しを求めたほか、振興策について意見交換した。http://article.okinawatimes.co.jp/article/2012-10-09_40012
琉球新報社説 知事・首相会談 意図的な印象操作はやめよ2012年10月10日
野田政権は沖縄の声に耳を傾けるという体裁を繕ってはいるが、県民の痛みと真剣に向き合うつもりなど、さらさらないことがあらためてはっきりした。それ以上に不純な動機を隠そうともしない無神経さに、怒りを禁じ得ない。 仲井真弘多知事は9日、野田佳彦首相と官邸で会談し、米海兵隊の垂直離着陸輸送機MV22オスプレイの普天間飛行場への配備撤回を求めた。首相は「重く受け止める」としながらも、配備撤回に応じることはなかった。想定内の回答であり、何ら驚くに値しない。 許し難いのは、首相会談直後に、沖縄政策に関する関係閣僚と知事との意見交換の場が政府側の提案で設定されたことだ。沖縄の基地負担軽減と沖縄振興策をセットにして話し合うこと自体、「アメとムチ」で問題解決を図ろうという魂胆が見え隠れしており、やはり不純なものを感じる。 それはオスプレイの普天間配備強行後の5日、沖縄政策に関する関係閣僚会合を開いたことからも見て取れる。外務、防衛大臣のほか、副総理や財務相らが出席し、普天間移設問題や沖縄振興策などの課題について、政府が一体となって取り組む方針を確認している。 裏を返せば、野田政権や防衛官僚などの間には、「沖縄はしょせん、金次第で片が付く」との差別意識が根強いことを示している。より悪質なのは、そのような誤った認識を、国民にも植え付けようと躍起になっていることだ。 実際にオスプレイが配備された今月1日以降、那覇、浦添、宜野湾の市街地上空では、回転翼を上に向けたヘリモードでの飛行など、日米両政府が9月に合意した安全対策に違反する飛行が頻繁に確認されている。 首相は知事との会談で「安全対策の順守をフォローアップする」と述べたが、本来ならば安全対策の順守徹底を確約するのが筋だ。そうしない、いや、できないのは、配備ありきで、米軍の運用を制限する安全対策が“空手形”であることを知っているからにほかならない。 首相―知事会談や関係閣僚会合は、沖縄は懐柔できるとの国民向けのパフォーマンスであり意図的な印象操作だとの疑いを指摘せざるを得ない。県民は単なるセレモニーやガス抜きの場など望んでいない。日本政府は即刻、オスプレイ配備の見直しを米側に要求すべきだ。
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-197878-storytopic-11.html