愛国者の邪論

日々の生活のなかで、アレ?と思うことを書いていきます。おじさんも居ても立っても居られんと小さき声を今あげんとす

日米両政府をおもねるマスコミ、県民を守れない沖縄県、最大のネックは抑止力論の呪縛、差別・負担分担論!

2012-10-18 | 日記

昨日のニュースは、沖縄県の抗議報道が中心だったように思います。しかし、ここでも重大なこと、すなわち沖縄県民と日本国民を基地撤去・日米軍事同盟廃棄に向かわせない装置(イデオロギー)が強力に働き、日本国民を分断していることが証明されたように思います。

本来であれば、米軍に対して、日本国民が全国津々浦々で立ちあがらなければならないような事件であったはずです。まさに中国の「愛国者」たちが、「愛国無罪」と称して立ち上がったように、日本国民は、沖縄県民と連帯して、アメリカ商品ボイコットを叫び、アメリカ企業に抗議を申し入れる、そんな状況が生まれてもおかしくない事件と沖縄の状況であったように思います。

その点で、日本国民は中国や韓国国民と比べると「冷静」であったように思います。これが「成熟した民主主義の国ニッポン」ということになるのでしょうか?日本における「愛国教育」の実態が、如実に出ていたように思います。東京都が提案した尖閣諸島買い取りに賛同したカンパのエネルギーは、沖縄県民には向けられず、これまでと同じように無視されてしまいました。

こうした本土の無関心を沖縄県民の一部では、「沖縄差別」として捉え、「基地の負担を本土に」と叫ぶ論調が、沖縄返還時と同じように、今もなお繰り返されているのです。こうした「沖縄差別」論以上の論調として声高に叫ばれているのが、中国や北朝鮮の脅威に対する「抑止力」として沖縄の米軍基地は当然とする日本の「愛国者」たちの愛国イデオロギーがあります。不思議なことに、そのどちらも「抑止力」論の呪縛に囚われていることが明らかになったと思います。

今回の事件によって「基地が成り立たなくなるところまで行きかねない」「日米同盟にも重大な影響を与えそうだ」という発言に端的に示されています。

どちらも日米軍事同盟を廃棄して、基地の負担・被害を根絶していこう、平和的手段で国際紛争を解決していこう、という立場に立たないという点で、沖縄の苦悩は、今後も継続していくことも、今回の事件を起こした米軍兵士が海兵隊員ではなかったことで、いっそう明らかになりました。普天間を、オスプレイを本土に移転しても、日米軍事同盟による米軍基地が存在する限り、こうした被害が起こることが証明されてしまったのです。

こうした事実に対して、沖縄県や政府は、言葉は「深刻さ」を強調しているように見えますが、「改善はできない」ということを認めているかのような発言に終始しています。そしてマスコミの報道は、被害者の立場が全く見えてこないように、第三者的です。これでは同じような事件が起こるであろうことが予想されてしまいました。まさに、これまでと同じように「空手形」を切っただけでした。

以下、掲載された記事の中にある発言内容をまとめてみました。

野田首相は、「あってはならない」
首相官邸では、「許し難い事件だ。(沖縄で)基地が成り立たなくなるところまで行きかねない」と、強い憤りをあらわにした。
政府は、「米軍の綱紀粛正と再発防止を強く要求」
防衛相は、「外務・防衛当局による日米合同委員会の開催を米側に求め、対策を協議する考えを示した」
仲井間知事は、「地位協定の抜本的な改定を重ねて要求」
政府は、「これに慎重な姿勢を崩しておらず」
時事通信は、「日米両政府にとって事態は極めて深刻。1995年の沖縄での米兵による少女暴行事件の時と同様、沖縄の怒りは沸騰しており、日米同盟にも重大な影響を与えそうだ。」「政府のこうした対応は異例とも言え、それだけ、政府側の危機感が強いことを示している」「県側の不満がさらに広がることも予想される」
又吉公室長は、「米軍由来の基地問題はこれまで何度も県民に衝撃を与えてきた。さまざまな基地負担というのがあって、またこういうことが起きたかと大変衝撃を受けている」「どのような波及を与えるかは情報が不足している」
琉球新報は、「米本国の兵士が事件を起こしたことは、沖縄の基地の負担軽減が進むどころか、逆に負担が増していることを明るみにした。今後、県民の批判が集中するのは間違いない」
(引用ここまで)


こうした記事を掲載したマスコミですが、わずか2週間ほど前に、沖縄で「第56回全国大会マスコミ倫理懇談会全国協議会」が開催され、沖縄の基地や原発、東日本大震災の報道のあり方を「倫理」的側面から検討する交流会を開いたばかりでした。そこでの議論を踏まえると、日米軍事同盟のあり方、抑止力のあり方、基地の存在そのものを問う内容で、今回の事件を国民に伝えているかどうか、検証しなければならないのではないでしょうか?

以下、懇談会の記事の主な内容を一覧してみました。

沖縄タイムスは、「国外、最低でも県外移転」との公約を実現できず批判を浴びた鳩山由紀夫元首相のケース。「一国の首相の足を官僚が引っ張った」とした上で、「『日米同盟を傷つけてはいけない』などとする大手の論調は、官僚目線と同じトーンだった」と指摘

琉球新報は、沖縄に基地を置くことが軍事的優位性につながるとの論理に関し「虚構であることは既に暴露されている。私たちはそれを繰り返し伝えるが、全国メディアはなかなか伝えない」と表明

高知新聞は「問われるべきは米海兵隊が駐留する意味、『抑止力』の本質だ。沖縄という地方の問題ではなく、日本の民主主義の成熟度を映しだす鏡ではないか」

全体会議で同協議会の川嶋明代表幹事は「沖縄に依存した日本の安全保障問題は、根本的な解決を見ないまま、オスプレイ配備という新たな負担を沖縄に加えようとしている」とし、「無関心」と「風化」に向き合い、問題を問い続ける報道の必要性を強調

崎濱秀光沖縄タイムス社論説副委員長は、沖縄に基地があり続けることを前提にした在京メディアの報道に疑問を投げ掛けた。(引用ここまで)


どうでしょうか?「抑止力」論を批判しながら、抑止力論を前提にした「日米同盟」論(実際は日米軍事同盟なのに)を肯定するという矛盾の呪縛に囚われているマスコミの限界が見えていないでしょうか?

このことは、今日の「朝日」の社説を見れば、いっそうハッキリします。

人間を「正気の沙汰ではない」状況に追い込むのが日米軍事同盟と暴力装置としての軍隊です。アメリカ兵に「軍隊と戦争の大義」をどのように教育しているか、それも問題ですが、「大義なき戦争」をしているのがアメリカです。「大義なき駐留」を保障しているのが日米軍事同盟です。

そうした本質を曖昧・免罪にした「沖縄差別」論の行き着く先は、「沖縄の負担をどう分かつか。沖縄の外に住む一人ひとりが考えなくてはならない」と、国民に説教を垂れるのです。

しかも、「今回の事件が火種となって、だが、今回の事件が火種となって、再び沖縄で反基地の思いが爆発することは十分に考えられる。  日米両政府は真剣に対策を講じる必要がある」と頓珍漢な表現で誤魔化すのです。

日米両政府が「真剣に対策を講じる」のは、「今回の事件が火種となって、再び沖縄で反基地の思いが爆発すること」への危惧なのでしょう。言葉では「卑劣な事件」などとしていますが、「重大な事件がおきるたびに少しずつ運用で見直されている」と、日米両政府の努力を「評価」しているのです。しかし、事件はなくならないどころか、沖縄県民をして「植民地」と言わせるような事態が温存されているのです。

さらに「とはいえ、沖縄をはじめ米軍基地を抱える自治体は、協定そのものを変えなければ犯罪は減らないという強い思いがある」などと、第三者的・傍観者的な見方で、「協定そのものを変えなければ犯罪は減らない」などとして、犯罪の根絶ではなく、「減らす」という方向にすり替えているのです。ここに「朝日」の社説の本質的立場が改めて浮き彫りになったと言えます。

まさに「日本の民主主義の成熟度」が試されていると言えるのではないでしょうか?


最後に、このマスコミ倫理懇談会に参加し講演した水島朝穂早稲田大学教授のレポートを掲載しておきます。すべてにわたって鋭い現状分析、資料収集をされ、実践家でもありますが、「日米安保体制の歪んだ構造を改め、まっとうな日米関係を構築していく」ために、「日米平和友好条約」への道筋について、どのように語ったか、この懇談会では判りませんでした。残念でした。


それでは、資料として、以下の記事を掲載しておきます。

時事通信 「反基地」波及を懸念=米兵女性暴行、同盟に危機感も-政府(2012/10/17-19:22)
 沖縄県で米兵2人が集団強姦(ごうかん)致傷容疑で逮捕、送検された事件について、政府は沖縄での「反基地感情」の高まりに危機感を募らせている。米海兵隊の垂直離着陸輸送機MV22オスプレイの沖縄への配備に反発が収まらない中、「あってはならない」(野田佳彦首相)事件が起き、日米両政府にとって事態は極めて深刻。1995年の沖縄での米兵による少女暴行事件の時と同様、沖縄の怒りは沸騰しており、日米同盟にも重大な影響を与えそうだ。 上京中の仲井真弘多知事は17日、森本敏防衛相や斎藤勁官房副長官らを相次ぎ訪れ、厳重に抗議、再発防止などを求めた。仲井真知事は防衛相に「もはや正気の沙汰ではない」と事件を非難。首相官邸では記者団に「許し難い事件だ。(沖縄で)基地が成り立たなくなるところまで行きかねない」と、強い憤りをあらわにした。 政府は、海外出張中の玄葉光一郎外相に代わり、吉良州司外務副大臣がルース駐日米大使を外務省に呼び、米軍の綱紀粛正と再発防止を強く要求。防衛相は外務・防衛当局による日米合同委員会の開催を米側に求め、対策を協議する考えを示した。政府のこうした対応は異例とも言え、それだけ、政府側の危機感が強いことを示している。 特に、沖縄県の米軍普天間飛行場(宜野湾市)にはオスプレイが配備されたばかり。政府は地元の反対運動が強まることを憂慮しており、防衛省幹部は「ますます状況は厳しくなる」とため息をついた。 日米地位協定は、米兵容疑者の身柄が米側にある場合は起訴前の日本側への引き渡しを原則認めていないが、今回の事件は沖縄県警が容疑者を逮捕、身柄を確保したため、地位協定は直接問題とはなっていない。しかし、仲井真知事は地位協定の抜本的な改定を重ねて要求。政府はこれに慎重な姿勢を崩しておらず、県側の不満がさらに広がることも予想される。
http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&rel=j7&k=2012101700892

琉球新報 県民の怒り増幅 2米兵、女性暴行  県、要請中に衝撃  2012年10月17日
 MV22オスプレイの強行配備など、県民に米軍基地の過重負担感が増幅する中、米本国所属の海軍兵による極めて卑劣な事件が起こった。県民の怒りは爆発し、基地問題全体への反発の高まりは計り知れない。 15、16日は、仲井真弘多知事や県内の米軍基地を抱える市町村でつくる軍転協の首長らがオスプレイ問題や普天間飛行場の返還・移設問題、米軍関係者による事件などの再発防止策などを求め、東京の米政府機関、日本政府へ要請していた。事件は、まさにその時に起きた。 8月には那覇市で在沖米海兵隊員による強制わいせつ致傷事件も起きている。戦後67年間、米軍の事件・事故や基地被害にあえぎ、いまだ解決されない現実があらためて強く浮き彫りになった形だ。 16日夕、事件を知った県は、すぐさま仲井真知事が駐日米大使や政府への申し入れを決定。2時間後には又吉進知事公室長が記者会見を開き、極めて事態が深刻であるとの緊張感を漂わせた。 又吉公室長は「米軍由来の基地問題はこれまで何度も県民に衝撃を与えてきた。さまざまな基地負担というのがあって、またこういうことが起きたかと大変衝撃を受けている」と語り「どのような波及を与えるかは情報が不足している」と厳しい表情を浮かべた。 容疑者2人が、在沖米軍基地所属ではなく、米テキサス州の米海軍航空基地から嘉手納基地へ来ていたことも沖縄側にとって大きな問題となる。 日米両政府が沖縄の基地負担軽減策と喧伝する米空軍嘉手納基地のF15戦闘機の県外などへの訓練移転でも、移転期間中に外来機が飛来することが大きな問題となった。低酸素症に似た症状を訴える操縦士が相次いだ米エレメンドルフ基地所属などのF22戦闘機の嘉手納基地飛来も地元の大きな問題となっている。 米本国の兵士が事件を起こしたことは、沖縄の基地の負担軽減が進むどころか、逆に負担が増していることを明るみにした。今後、県民の批判が集中するのは間違いない。
(内間健友)http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-198151-storytopic-9.html

時事通信 大手メディア報道に「違和感」=普天間報道で地元紙-マス倫懇全国大会(2012/09/27-18:32)
 那覇市で開かれているマスコミ倫理懇談会全国協議会の第56回全国大会は2日目の27日、五つの分科会に分かれ、米軍基地の沖縄への過剰な集中と日本の安全保障、東日本大震災、原発報道などをめぐり議論した。この中で地元紙は、在京大手メディアによる米軍普天間飛行場移転問題の報道に対し「拭えない違和感がある」と疑問を投げ掛けた。 分科会で沖縄タイムスが挙げたのは、「国外、最低でも県外移転」との公約を実現できず批判を浴びた鳩山由紀夫元首相のケース。「一国の首相の足を官僚が引っ張った」とした上で、「『日米同盟を傷つけてはいけない』などとする大手の論調は、官僚目線と同じトーンだった」と指摘した。 琉球新報も、沖縄に基地を置くことが軍事的優位性につながるとの論理に関し「虚構であることは既に暴露されている。私たちはそれを繰り返し伝えるが、全国メディアはなかなか伝えない」と表明した。 一方、県内に米軍基地を抱えていないが、2年前から沖縄報道に力を入れる高知新聞は「問われるべきは米海兵隊が駐留する意味、『抑止力』の本質だ。沖縄という地方の問題ではなく、日本の民主主義の成熟度を映しだす鏡ではないか」と、その重要性を強調した。
http://www.jiji.com/jc/zc?k=201209/2012092700792

琉球新報 安保報道の在り方問う マスコミ倫理懇開幕2012年9月27日
 全国の新聞社や放送局など219社(団体)でつくるマスコミ倫理懇談会協議会の第56回全国大会が26日、「沖縄で問う 日本の今とメディアの責務」を主題に、那覇市のホテル日航那覇グランドキャッスルで始まった。県内での開催は初めて。28日まで。全体会議に続き、大田平和総合研究所主宰の大田昌秀元知事が「沖縄問題とメディア」のテーマで基調講演した。 大会は、沖縄に依存する安全保障をただす報道の在り方を模索し、原子力発電所の事故などを検証する。 全体会議で同協議会の川嶋明代表幹事は「沖縄に依存した日本の安全保障問題は、根本的な解決を見ないまま、オスプレイ配備という新たな負担を沖縄に加えようとしている」とし、「無関心」と「風化」に向き合い、問題を問い続ける報道の必要性を強調した。 全体会議には富田詢一琉球新報社長、豊平良孝沖縄タイムス社長も出席し、豊平氏が開催地あいさつをした。議長に玻名城泰山琉球新報編集局長、武富和彦沖縄タイムス編集局長を選んだ。 大田氏は「県民がこれ以上基地負担は要らないと言っていることが理解されていない」とオスプレイをめぐる報道に苦言を呈した。http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-197392-storytopic-1.html

沖縄タイムス 「沖縄・大震災 長く伝える」 マスコミ倫理懇2012年9月28日 09時40分
 マスコミ倫理懇談会全国協議会の第56回全国大会は2日目の27日、那覇市内のホテルで五つの分科会と全体会議を開いた。米軍基地や東日本大震災報道などを題材にメディアの責務や課題を考え、「沖縄問題、震災・原発事故を息長く伝え続けていくことが求められている」などとの大会申し合わせを採択した。 「沖縄に依存する日本の安全保障を問う」分科会では、沖縄の基地問題をめぐる地元と本土の立ち位置などについて議論。崎濱秀光沖縄タイムス社論説副委員長は、沖縄に基地があり続けることを前提にした在京メディアの報道に疑問を投げ掛けた。 「沖縄問題の実相~本土復帰40年に考えるメディアの役割」と題した分科会では、沖縄戦の戦後処理問題や復帰後の沖縄振興などについて、大学教員や県担当者を交えて意見交換した。 ほかに「東日本大震災~メディアが伝えたこと、伝えられなかったこと」「原発報道 ジャーナリズムがめざすべきもの」などをテーマに、東北地方の河北新報社や福島民報社の関係者らが、巨大災害の混乱や断片的な情報しかない中で求められる住民視点の報道とは何か、問題提起した。 大会は県内初開催で、新聞、放送、出版など91社・団体から約290人が参加。沖縄タイムス社の豊平良孝、琉球新報社の富田詢一両社長も顔をそろえた。28日は米軍基地や南部戦跡を視察するプログラムがある。http://article.okinawatimes.co.jp/article/2012-09-28_39540

日米両国政府の想定外――普天間のオスプレイ(2・完) 2012年10月15日
マスコミ倫理懇談会第56回全国大会での基調講演のため沖縄に行った。…
http://www.asaho.com/jpn/

日米安保を揺るがすオスプレイ 2012年7月16日
ところで、「全基地即時閉鎖」という仲井真知事の言葉の意味をもう少し掘り下げてみよう。私は『沖縄タイムス』7月10日付「識者評論」(水島朝穂「日米安保体制にほころび――地方、政府依存から脱却へ」)のなかで、知事がこの言葉を使った「歴史的意味」について触れ、「防衛は国の専権事項とされるが、水道や道路、港湾など県知事の協力がないと米軍基地の運用は難しい。県知事の発言は、本人が考えている以上に、米側に大きな影響を与えたと思う」と述べた。おそらく米国務省、国防総省の関係者は「大きな影響」というよりも、相当驚いたと思う。それはなぜか。
野田政権は、自民党以上に米国の言いなりで、「底抜けの対米追従」(豊下楢彦関西学院大教授、『沖縄タイムス』6月30付識者評論)の政策を次々に繰り出している。そこにきて、沖縄県知事が「全基地即時閉鎖」という言葉を使ったのである。さすがの米政府もギョッとなったに違いない。革新知事の大田昌秀知事でさえ、一度も使ったことがない言葉だからである。条約の締結権や外交権は内閣の事務であるが、基地に対する実際の行政は県知事の権限がきわめて大きい。「全基地即時閉鎖」というのは、米軍基地に関連する県の事務を一切止めると言ったに等しい。沖縄の全市町村が県の行動を全面的に支援する。県民はツイッターなどで連絡をとりあって、普天間基地だけでなく、すべての米軍基地・施設をデモで包囲する…。「21世紀の島ぐるみ闘争」に発展したらどうなるか。オスプレイ配備を日常業務のようにやろうとしてしまった米政府は、いま、事態を深刻に受けとめはじめているに違いない。「全基地閉鎖」という知事の言葉は、その本人が思っている以上のさまざまな付随的効果を、今後及ぼしていくことになるだろう。…日米安保条約は日米関係が対等であると見せかけるため、「事前協議」の仕組みがある。「条約第6条の実施に関する交換公文」(1960年1月19日署名)によれば、米軍の日本国における、(1)配置における重要な変更、(2)軍隊の装備における重要な変更のほか、(3)日本国から行われる戦闘作戦行動のために基地を使用するときは、事前に日本政府と協議する建前になっている。この制度は、基地を提供した、主権国家としての日本の立場に配慮したものだった。しかし、この事前協議はただの一度も行われていない。日本は米軍の行動に注文も付けず、いわんやノーを言ったことはない。実際、安保改定時の核持ち込み(1960年1月)や、米軍の自由出撃(同)、沖縄への核再持ち込み(1969年11月)については密約が存在する。他にも、本来なら事前協議にかけるべきケースがたくさんあったが、一度も行われていない。一度も(!)、である。これでは、日本の外務省は、米国務省の第51州事務所と言われても仕方ないだろう。…最後に一言。冷戦の遺物である日米安保条約は、何度かの「日米安保共同宣言」や、二度にわたる「日米防衛協力の指針」といった、国会承認不要な「条約未満」の形式でヴァージョンアップし、事実上の条約改定に等しい効果をあげてきた。国会での十分な議論もなく、国民的な討議もなかった。オスプレイの配備問題は、そうした日米安保体制の矛盾を集中的に表現するものとなった。今後の展開次第では、オスプレイ問題は、日米安保体制の歪んだ構造を改め、まっとうな日米関係を構築していく上でのきっかけ(チャンス)となるかもしれない。http://www.asaho.com/jpn/bkno/2012/0716.html

「日米平和友好条約」の第一次案の発表について
http://www1.jca.apc.org/iken30/Treaty/About.html

朝日社説 米兵の犯罪―沖縄の怒りに向きあう 2012年10月18日(木)付
 沖縄で、米海軍兵2人が女性への集団強姦(ごうかん)致傷の疑いで逮捕された。 「正気の沙汰ではない」と、仲井真弘多(ひろかず)知事が述べたのは、当然だ。  容疑者2人は米国本土から出張で来ていた。事件がおきたのは未明。その日の午前中に沖縄を出てグアムへ行く予定だったという。「沖縄を出てしまえばわかるまい」とでも考えたのだろうか。  沖縄では、1995年に米海兵隊員3人による少女暴行事件がおき、県民の怒りが燃え上がった。基地の再編や、事件をおこした米兵の扱いをめぐって日米間の交渉が行われた。 だがその後も、米兵による犯罪はなくならない。性犯罪に限っても、この10年余りで中学生への強姦や強制わいせつ、ほかにも強姦致傷、今年8月にも強制わいせつ致傷の事件がおきた。被害者が泣き寝入りし、表に出ない事件もあるとみられている。  沖縄では、米軍によって女性や子どもの身の安全を脅かされていると受けとめる人がふえている。  仲井真知事は「日米地位協定を改定しない限り問題は出てくる」と述べた。 今回の事件は容疑者を基地外で見つけて警察が逮捕したが、もし基地内に入っていれば、米兵や軍属を手厚く守る協定によって、引き渡しに時間がかかっただろう。ほかの事件では、地位協定があることで米兵や軍属が「軍の公務中だった」といった言い分で、日本側が捜査できなかったことがある。  重大な事件がおきるたびに少しずつ運用で見直されているとはいえ、沖縄をはじめ米軍基地を抱える自治体は、協定そのものを変えなければ犯罪は減らないという強い思いがある。  そして沖縄には、安全への心配がぬぐえぬ新型輸送機オスプレイが配備されたばかりだ。不信が募っているときの、この卑劣な事件である。  日本と米国の協調は大切だ。そのことを多くの人が感じている。だが、今回の事件が火種となって、再び沖縄で反基地の思いが爆発することは十分に考えられる。  日米両政府は真剣に対策を講じる必要がある。 沖縄で米兵による事件が多いのは、国土の面積の0.6%にすぎないこの島に、在日米軍基地の面積の約74%が集中している現実が根底にある。  沖縄の負担をどう分かつか。沖縄の外に住む一人ひとりが考えなくてはならない。 http://www.asahi.com/paper/editorial.html
(引用ここまで)

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