愛国者の邪論

日々の生活のなかで、アレ?と思うことを書いていきます。おじさんも居ても立っても居られんと小さき声を今あげんとす

元日の社説で日米安保廃棄と憲法擁護をセットで論じない日本のマスコミは日本をどこに導くか!

2013-01-02 | 日記

毎年のことですが、愛国者の邪論が元旦の社説で注目しているのは、現在の日本において、この国の最高法規である日本国憲法を論じることがタブーなってきたなかで、元旦にあたって各紙がどのように論じているかということです。今年はこのことに加えて、日米軍事同盟がどのように論じられているか、についても注目してみました。

 その理由は、憲法と安保は、その立ち居地が真っ向から対立しているからです。かつて憲法法体系と安保法体系が矛盾していることが論じられていた時代がありましたが、今やこうした論陣は皆無のように思われます。そのことは「日米同盟」が「深化」されてきたことを物語っているように思います。これも、95年日米安保共同宣言などを契機として、着々と国民の中に日米軍事同盟が浸透させられてきたこと、今や日米同盟という名の日米軍事同盟の廃棄を論じることはタブーとなってきているように思われます。

 さて、こうしたことを踏まえて、全国紙と地方紙の社説をみてみました。「産経」は掲載されていません。

 まず全国紙です。

混迷の時代の年頭に―「日本を考える」を考える2013年1月1日(火)付

http://www.asahi.com/paper/editorial.htm

昨日の記事で書きましたが、憲法も日米安保も記事としては書かれていません。その意味については、ここでは書きません!

 政治の安定で国力を取り戻せ (1月1日付・読売社説)

http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20121231-OYT1T00794.htm

集団的自衛権の行使を可能にする「国家安全保障基本法」の制定を提案することもできる。尖閣諸島国有化をめぐる中国との対立、北朝鮮の核・ミサイル開発などに対処するためには、集団的自衛権の行使を容認し、日米同盟を強化することが必要だ。こうした認識を共有できるよう、与野党で議論を重ねてもらいたい。…日米原子力協定によって、日本には核兵器にも転用できるプルトニウムの保有が認められている。野田政権が決定した「原発ゼロ」方針の下では、その特別な権利も、原子力の平和利用や核不拡散をめぐる米国のパートナーとしての地位も、失うことになる。…米国主導で自由貿易を推進するTPPは、今年中の交渉妥結を目標としている。(引用ここまで)

 「読売」の主張する「政治の安定」とは「日米同盟の強化」であることが読み取れます。この新聞が、どこまで対米従属で、卑屈か、よく判ります。しかも、憲法9条の「改正」という言葉は「刺激的」と思っているのでしょうか、「集団的自衛権の行使」という言葉を使うことで、改悪にもっていこうとする意図が透けて見えてきます。これも「国際的に認められている権利ならば使わない手はない」論の方が国民的に受けが良いと思っていることの反映でしょう。こうした論法でオセロの四隅を取ろうとしていることも透けて見えてきます。

 国力を高める(1) 目標設定で「明るい明日」切り開こう 2013/1/1

http://www.nikkei.com/article/DGXDZO50212090R00C13A1PE8000/

戦後を考えると、だれもが等しく豊かで自由な社会をつくるという共通の目標があった。吉田茂元首相が敷いた軽武装通商国家の路線のもと、経済大国をめざした。…深刻な対立がつづく日中関係は、危機回避の戦略を確立する必要がある。自助努力による防衛能力の向上は当然だが、日米同盟を深化させなければならない。(引用ここまで)

 吉田の「軽武装通商国家の路線」は、実は「非武装・中立地帯案」(1950年10月)というものです。これについては、豊下楢彦『集団的自衛権とは何か』『安保条約の成立―吉田外交と天皇外交―』を参照していただき、ここではふれません。

同時に「日経」は「自助努力による防衛能力の向上」と対米従属の「日米同盟」の関係を見事に語っています。

 「巨額の赤字を抱える財政は身動きが取れない」状況を作り出してきたのは自民党と自公政権であったこと、「海外での稼ぎを国内に還流させる必要」をないがしろにしてきたこと、その奥にあるものが「日米同盟」と財界擁護路線であったことには沈黙です。

 社説:2013年を展望する 骨太の互恵精神育てよ 毎日新聞 2013年01月01日 02時30分

http://mainichi.jp/opinion/news/20130101k0000m070065000c.html

戦後軽軍備・経済重視路線を堅持する中で、為替危機、石油ショック、バブル崩壊などいくつもの激変を乗り切ってきた日本経済である。今こそ、その底力を発揮して成熟経済対応にギアチェンジする時である。 互恵の精神は、世代間対立だけでなく、国と国との関係にも応用できる。二つ目に試される日本政治の平和力とも関わってくる。…戦後の平和を支えてきたのは、あの戦争に対する反省からきた二度と侵略戦争はしないという誓いと、現実的な抑止力として機能する日米安保体制であろう。係争はあくまでも話し合いで解決する。もちろん、適正な抑止力を維持するための軍事上の備えは怠らない。そのためには、日米安保体制の意義、機能を再確認しておくことが大切だ。そのうえで1920年代の歴史から学びたい。日本で初めて2大政党が定着し大正デモクラシーが高らかに宣言された時代である。だが、結果的に政党政治は平和を守り切れなかった。関東大震災や世界恐慌で経済が混乱し中国大陸に対する帝国主義的な領土拡張競争が激化する中、排外主義的対外強硬路線の大声が、妥協主義的国際協調路線の良識をかき消し、軍部独走、大政翼賛政治が私たちを無謀な戦争に追いやった。領土や主権をめぐる争いは双方がどちらも譲歩できないことにより、いたずらに対立がエスカレートするのも歴史が教えるところである。 安直な排外主義を排し、大局的な国際協調路線に立ちたい。…こういった日本の立場と主張をアジア諸国を中心に世界に対し粘り強く丁寧に説明し理解を得て仲間を作る。決して孤立化しないことだ。中国との間では、戦略的互恵路線がいかに両国関係にメリットをもたらしたかを改めて確認したい。まずは、強硬路線の悪循環を排し現状維持の緊張に耐え抜くことだ…実現に汗をかくのは一義的には政治家だが、彼らにそういう仕事をさせるのは、私たち国民であることを改めて胸に刻みたい。(引用ここまで)

 社説:普天間問題 「そこにある危険」除け 毎日新聞 2012年12月31日 02時31分

http://mainichi.jp/opinion/news/20121231k0000m070059000c.html

安倍政権がまず取り組むべきなのは、移設が実現するまでの間、普天間飛行場周辺住民の危険性を早急に除去・軽減する手立てを講じることだろう。これは、鳩山政権による「普天間の迷走」以降、問題解決に消極的になった民主党政権が放置してきた課題である。…政府は違反の有無を検証し、違反があれば米側に厳重に改善を申し入れるべきだ。 安倍政権が検討しているオスプレイの本土への訓練移転は、沖縄の負担軽減に結びつくが、訓練にとどまらず、普天間飛行場の基地機能を分散移転すれば、周辺住民の危険性は大幅に軽減できる。 小野寺五典防衛相は普天間飛行場の固定化回避を強調している。同時に、「今そこにある危険」を除去する方策を真剣に検討してほしい。(引用ここまで)

 「毎日」に至っては、「今そこにある危険」を「除去する方策を真剣に検討」などと述べてはいるものの、その「危険」の権化である「日米安保体制」を「現実的な抑止力として機能」しているとして「適正な抑止力を維持するための軍事上の備えは怠らない。そのためには、日米安保体制の意義、機能を再確認しておくことが大切」などと正当化、合理化しているのです。

 こうした視点に立つからこそ、「沖縄の負担軽減」のために「危険」を「分散移転」するなどと見当違いに陥っているのです。

 このことは、「戦後の平和を支えてきたのは、あの戦争に対する反省からきた二度と侵略戦争はしないという誓いと、現実的な抑止力として機能する日米安保体制」と比較して述べながら、高らかに憲法9条を指摘しない「毎日」の姿、トリックがあります。憲法9条を表現することを自らタブー視しているのです。ここまで退廃していいのでしょうか?事は日本国家の最高法規です。憲法9条は言わないでおいて日米安保体制は言える、ここに「毎日」を初めとした日本のマスコミ界の現実があるというのが、愛国者の邪論の主張です。

 もう一つあります。「毎日」は「大正デモクラシーが高らかに宣言された時代」「結果的に政党政治は平和を守り切れなかった」「関東大震災や世界恐慌で経済が混乱し中国大陸に対する帝国主義的な領土拡張競争が激化する中、排外主義的対外強硬路線の大声が、妥協主義的国際協調路線の良識をかき消し、軍部独走、大政翼賛政治が私たちを無謀な戦争に追いやった」などと述べていますが、この筆者は主語を曖昧にしています。しかも「領土や主権をめぐる争いは双方がどちらも譲歩できないことにより、いたずらに対立がエスカレートするのも歴史が教えるところである」「実現に汗をかくのは一義的には政治家だが、彼らにそういう仕事をさせるのは、私たち国民であることを改めて胸に刻みたい」などと「上から目線」で説教を垂れているのです。

 「毎日」の言う「歴史」の最大の教訓は、大日本帝国憲法下において「治安維持法」が猛威を振るったこと、その法の最大の対象であった共産党を大弾圧して、国民に恐怖感を浸透させ、「見ザル・聞かザル・言わザル」状態に、すなわち「無関心」状態に陥れてはじめて戦争が可能になったこと、そうした状態に国民を陥れるうえで「毎日」の先輩である「東京日日」「大阪毎日」が戦争に向かって扇動したこと、政友会と憲政会(民政党)の二大政党政治を煽ったことによる政治不信を醸成したこと、などなど、「歴史」の「反省」と「責任」問題を曖昧にしていることは笑止千万と言わなければなりません。

塚本三夫『侵略戦争と新聞』新日本出版社・前坂俊之『太平洋戦争と新聞』講談社学術文庫を参照していただければ、明瞭ですが、引用は別項に譲ります。 

こうした「毎日」をはじめとした日本のマスコミの立ち居地が総選挙の際の憲法と安保を争点化しなかった最大の要因ではないかと思うのです。これは日米軍事同盟容認・深化派と財界擁護派の強さのように見えますが、実は最大の弱点ではないかと思います。

彼らの論理の矛盾を詳細に明らかにしていくことで、国民の利益にとって、最大の障害が日米軍事同盟であること、財界擁護であることを世に知らしめていくこと、このことこそが、憲法に基づく民主国家の構築と国民生活の豊かな国ニッポンを構築していくことになるのではないかと思います。

 次に地方紙です。長くなりましたので、別項に譲ります。