愛国者の邪論

日々の生活のなかで、アレ?と思うことを書いていきます。おじさんも居ても立っても居られんと小さき声を今あげんとす

大阪市の体罰事件を全国・地方紙はどのように考えたか、軍国主義無批判・憲法形骸化社説に大喝を!

2013-01-12 | 日記

大阪市のスポーツ強豪高校である市立高校で起こった体罰による生徒の自殺事件について、各紙は社説で取り上げていました。しかし、この社説を読んで判ったことは、以下のとおりです。

 1.ほとんどの社説が事件の解明と検証を求めていますが、学校と教育委員会の隠蔽体質からくる事実解明を求めるものがほとんどでした。

 2.どの新聞も共通していることは、「体罰は良くない」「学校教育法で体罰は禁止されている」「国は処分を把握し「通知」などを発していた」など、文部行政に、その責任を問うものはなく、その責任を教育委員会と学校に負わせるものでした。その最たる人物は橋下市長です。

 3.こうした事件がスポーツ強豪高などで起こる背景に「勝利第一主義」を掲げる社説はあるものの、これが文部省(文部科学省)による「個性化」「多様化」「自由化」路線による「成果主義」を起因としていることを論評しているもの以下のみでした。

 (1)文科省が掲げた「特色ある学校づくり」を受け、体育に力を注ぐ一部の学校では、試合成績という結果だけを追う成果主義が強まっていないだろうか。勝利至上主義の弊害はかねて指摘されてきた。生徒の自発性や仲間と成長する喜びがあってこその部活動だ。(京都

 4.学校と教育委員会の隠蔽体質がなかったら、この事件は防げたのではないかという論調がありました。

 5.競争第一主義・体罰容認発言を発してきた橋下市長の事件に対する「怒り」を評価する新聞もありました。

 (1)極めてずさんな対応である。この時、踏み込んだ調査をしていれば、今回の悲劇を防ぐことができた可能性もある。大阪市の橋下徹市長が「教育現場の最悪の大失態だ」と指摘したのは当然だ。(読売

(2)大阪市の橋下徹市長は「教育現場の最悪の大失態だ」と絶句した。その通りだろう。教育としてのスポーツが、ゆがんだ勝利至上主義と間違ったスパルタ指導に結びついていたのなら早急に改めなければならない。(山陰中央

 6.この事件を人権侵害として評価しているのは、驚くべきことに、たった3紙でした

(1)教育の基本である子どもの命や人権を守るという視点が抜け落ちていると言わざるを得ず、憤りを禁じ得ない。(愛媛

(2)体罰は人権侵害そのものであり、学校教育法11条がはっきりと禁止している。強くなるために体罰もやむなしという、ゆがんだ勝利至上主義を排し、学校現場から体罰をなくす。その決意を新たにしたい。(佐賀

(3)学校教育法は殴る蹴るといった体罰を禁止している。どんな理由であれ人権侵害は許されない。指導者をはじめ関係者は体罰一掃に本気で取り組むべきだ。(南日本

(4)暴力で生徒の心に屈服を刻み込んで人間教育と言えるだろうか。教諭も保護者も、社会全体で体罰を許さないことを再確認したい。(京都

 7.体罰を人権侵害と捉える視点が欠落し、程度の問題に矮小化し、正当化している社説もありました。

(1)教員による体罰は学校教育法で禁じられている。ここでいう体罰とは、殴る蹴るなど身体への侵害や、長時間の起立など肉体的苦痛を与える行為を指す。(産経

(2)体罰とは本来、過ちを犯した者に対し、再び過ちを犯すことがないよう、やむを得ず身体的な苦痛を与え、導くことだ。(宮崎日日

 8.この体罰が繰り返されていることを認めつつも、その背景について、軍国主義との関係で掘り下げた論評はわずかでした。

 (1)教育的指導の名の下で行われる体罰は、旧日本軍をほうふつさせるが、過去の話でも、桜宮高に限った話でもない。(東京

 (2)日経 春秋 2013/1/11付

http://www.nikkei.com/article/DGXDZO50492990R10C13A1MM8000/

(3)毎日 余録:「凡そ学校に於いては、生徒に体罰を加うべからず…2013年01月09日 00時42分

http://mainichi.jp/opinion/news/20130109k0000m070091000c.html

 9.体罰を「程度」の問題と捉え、事実上容認する社説もありました。

 (1)いうまでもなく体罰は悪い。厳しい対処は当然だ。それでも、禁じられた行為だと覚悟のうえでふるわれる熱血教師の「愛のムチ」があり得ることも信じたい。ただ今回の(2)ケースは、そうした願望からもあまりに遠い。(産経

顧問の行為は言われているような体罰だったのだろうか。体罰とは本来、過ちを犯した者に対し、再び過ちを犯すことがないよう、やむを得ず身体的な苦痛を与え、導くことだろう。…スポーツの技術的な失敗を理由に殴ったのなら、それは教育的な罰とは異質な暴力と言わざるを得ない。(岐阜

(3)男性顧問は「発奮させるため」と説明している。指導の一環のつもりだったかもしれないが、体罰というには度を越している。暴力以外の何物でもなかろう。教育現場とは対極にある行為のはずだ。(中国

(4)文科省は07年の通知で体罰の禁止を確認したうえで、児童・生徒に「毅然(きぜん)とした指導」を求めなからも、それには子どもとの信頼関係構築が大切であり「子ども一人一人の状況に配慮を尽くしたかどうかが重要」とくぎを刺している。 授業であれ、部活動であれ、事情は基本的に同じであろう。感情に流され、力の行使に頼れば教育とは懸け離れ、子どもとの信頼関係は損なわれてしまう。 体罰は子どもの信頼を奪い、取り返しのつかない事態を招くことさえある。そのことを、教育委員会も学校現場も、あらためて自覚しなければならない。(西日本

(5)部活動の指導者が生徒に気合を入れようと、つい手が出ることはあるかもしれない。だが、自殺に追い詰めるような行為は、明らかに教育の範囲を超えている。(南日本

 10.子どもの意見を尊重すべきという論調もありますが、それが子どもの権利条約、憲法の視点から論じることはありません

 (1)市の通報機関が何ら機能しなかった。危機管理能力の乏しさがうかがい知れる。市教委も学校も、子どもの声に真摯に耳を傾けるという教育の基本を怠った。当事者感覚が欠落していると言わざるを得ない。(中国)

 11.指導のあり方を含めて体罰に対する厳しい対処を述べている社説もあります。

 (1)ポーツ指導現場で、まず努めるべきは指導者の質向上だ。科学的な指導理論の研修とその習得者の養成に力を入れたい。さらに体罰が発覚した場合、指導者資格の即時はく奪や過去の実績を経歴から抹消するぐらいの断固とした体罰排除の姿勢が教育界に求められよう。 指導は相手との信頼関係のもとに人間的成長を促すものでなければなるまい。体罰からはなんの信頼も生まれないことを、指導者すべてがあらためて心に刻みたい。(愛媛

 こうした諸事実から思うことは、

1.日本の新聞のこうした認識が、体罰容認世論を野放しにしてきたことが明らかになりました。

 (1)スポーツ強豪校では特に、成果を出すために体罰が広く行われ、厳しい上下関係の中で「愛のムチ」として見過ごされてきた傾向がある。しかし、こうした体質は根本的に改めなければならない。(毎日

(2)学校現場も市教委も体罰を軽く考え、事態を放置してきたのではないのか。組織防衛や自己保身の意識が先に立ち、穏便に済ませようと意図したのではないのか。 大津市であった中学二年の男子生徒のいじめ自殺の問題で、後ろ向きの対応に終始して批判された中学校や市教委とそっくりの事なかれ主義が透けて見える。 とりわけスポーツの強豪校では、戦績を挙げるために教育的指導の名の下で体罰が黙認される風潮が強いという指摘がある。東京

(3)これは特定の高校で、特定の顧問が起こした特異な問題ととらえるべきではない。小学生が参加するスポーツ少年団で、中学校、高校、さらに大学の部活でも暴力的な指導がまかり通っていることを私たちは知っている。…国内競技連盟にはまだ暴力を否定する倫理規定などを整備していないところがある。(岐阜

(4)だがその認識も、体育系の部活指導となると緩みがちになる。勝つため、強くなるために時として体罰が肯定されてきた一面は否めない。(中国

(5)しかし残念ながら、場合によっては体罰も許されるとの考えが根強く残っているのが実情だ。保護者会に出席した親からは「体罰が全て悪いとは思えない。熱心さが行きすぎた末の悲劇だ」との声も聞かれた。体罰を容認する意識をどう変えていくか。社会に突き付けられた課題である。…大阪市のケースは氷山の一角ともいわれる。徳島県をはじめ全国でも見過ごされている問題はないのか。あらためて調べる必要がある。(徳島

(6)果たしてこの問題は、特殊な例だろうか。文科省の調査によると、11年度に体罰で、懲戒処分や訓告などを受けた教員は404人にも上る。水面下には、もっと多くの事例が潜んでいるだろう。(佐賀

(7)運動部での体罰の横行は、この高校だけの特異な問題ではないようだ。文部科学省の統計によると11年度に全国の公立小中高校などで体罰を理由に処分を受けた教職員は404人。うち110人が何らかの部活動に絡むもので、その大半が「運動部関係と推測される」(同省初等中等教育企画課)という。学校運動部の一部で依然、体罰や暴言などの暴力的指導がまかり通っていることは、これまでも度々指摘されていた。(熊本日日

 2.体罰を徹底的に人権侵害、憲法軽視と意味づけることを怠ってきた自らの視点を棚上げして、説教を垂れているのです。

 (1)体罰を根絶するには社会全体での取り組みが必要だ。教育委員会や教師だけでなく保護者も強い意思を持って対応していかねばならない。(毎日

(2)この高校はバスケットボールの強豪校として全国的に知られている。教諭の指導と存在への周囲の遠慮が、体罰を容認する雰囲気を醸し出していなかったか。これについても徹底的に検証しなければならない。(北海道

(3)文部科学省の調査によると、11年度に体罰で処分を受けた教員は約400人いた。今回ほど重大ではないとしても、広く通じる問題だ。体罰をしない、容認や黙認をしない―という意識をあらためて徹底する必要がある。(信濃毎日

(4)「情熱的な監督」「熱血指導」などとことさら美化し、見て見ぬふりをするなら、日本のスポーツ指導の現場から暴力はなくならない。この悲劇を機会に、指導者による暴力を根絶するうねりが全国で巻き起こってほしい。(岐阜

(5)運動部における体罰は、これまで本県を含め各地で繰り返し起きている。大阪の悲劇を教訓に、潜在化する体罰の問題を掘り起こし、苦しんでいる生徒の救済につなげなければならない。(高知

(6)今回の事件を学校スポーツ界全体の問題として受け止め、関係者には暴力的体質を一掃する明確な対応を望みたい。(熊本日日

(7)県内でも、少年スポーツを含め「体罰」が顕在化しているケースがある。それを黙認する傾向はないか。勝利至上主義を正し、スポーツを健全なものにするためにも、体罰を繰り返す指導者の排除をためらってはならない。(琉球新報

 3.そこで日本の新聞が事件の背景を追求しないのは、何故かを考えてみました。

 その理由は、以下のとおりです。

 (1)戦前の軍国主義を追及していくと、「天皇のために死ぬ」ことを最大の「美徳」「価値」として教育が行われてきたことにならざる得なくなり、それは戦前の政治を推進してきた政友会・民政党・軍部の政治を受け継いだ戦後自民党政治の「総決算」にまで突き進んでいくことになるからです。

 (2)人権問題として捉えようとする社説が少ないのは、日本国憲法を実際の生活のなかで意味づけようとする視点がマスコミに弱いことを示しており、これは、現行憲法に対して「改憲か、護憲か」という偽りの対立構図を描き、事実上憲法の形骸化を容認してきたマスコミと戦後自民党政治の「総決算」にまで突き進んでいくことになるからです。

 以上のようにみてきましたが、憲法の人権と民主主義を擁護し定着させていくべきマスコミが、国民世論を反映して人権思想の視点が極めて弱いことは、実は、日米軍事同盟による基地の弊害を容認する世論、憲法の平和主義の立場から世論をリードしていかなければならないマスコミの責任放棄と重なっていることが判ります。

 学校や地域社会のなかで体罰をなくすことと、日米軍事同盟を廃棄し、日米平和友好条約を締結すること、国際紛争を非軍事・非暴力的手段で解決するとした憲法の平和主義を具体化することは、実は、同じ次元のことであることが判ります。

 以上の視点を踏まえて、国民に説教を垂れるマスコミに肝に銘じてほしいことは、以下の言葉です。

 「そのためにも、体罰の現場を目撃したり、情報を得たりした場合は、臆することなく、声を発していく強い意志を持つ必要がある」(北海道

 理由は、以下のとおりです。

今、安倍自公政権が誕生し、戦前の復活が目論まれていることは周知の事実です。これは日米軍事同盟容認・深化の日本、財界擁護、国民生活無視の政治、憲法形骸化の政治の横行です。こうした諸事実に対して、マスコミがどのような立場に立って、国民に事実を報せていくか、そのことが鋭く問われているのです。

 それでは、今日の時点で、調べた各紙の社説を一覧しておきます。ご参考までに・・・。

全国紙

読売 大阪体罰自殺 教師による犯罪ではないのか(1月11日付)

http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20130110-OYT1T01566.htm

 産経 体罰と自殺 愛情の一片も感じられぬ 2013.1.11 03:23

http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/130111/crm13011103250002-n1.htm

 朝日 高2生の自殺―体罰許さぬ教育現場に 2013年1月11日(金)付

http://www.asahi.com/paper/editorial.html?ref=com_gnavi

 毎日 高2生自殺 体罰は絶対許されない 2013年01月10日 02時30分

http://mainichi.jp/opinion/news/20130110k0000m070087000c.html

 東京 バスケ部主将の自殺 学校に体罰はいらない 2013年1月11

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2013011102000147.html

 

地方紙

北海道新聞 部活の体罰 常態化がなぜ見抜けぬ (1月10日)

http://www.hokkaido-np.co.jp/news/editorial/432632.html

 信濃毎日 高校生自殺 なぜ防げなかったのか 01月11日(金)

http://www.shinmai.co.jp/news/20130111/KT130110ETI090007000.php

 岐阜 部活と体罰 誤った勝利至上主義正せ 2013年 1月10日(木)

http://www.gifu-np.co.jp/column/syasetsu/sya20130110.shtml

 京都 大阪高2自殺  教育に体罰はいらない20130112日掲載]

http://www.kyoto-np.co.jp/info/syasetsu/20130112_3.html

 神戸 先生の体罰/暴力が教育といえるのか 2013/01/10

http://www.kobe-np.co.jp/column/shasetsu/201301/0005658857.shtml

 中国 高2男子「体罰」自殺 なぜ命救えなかったか '13/1/11

http://www.chugoku-np.co.jp/Syasetu/Sh201301110079.html

 山陰中央新報 部活と体罰/暴力では何も解決しない ('13/01/10 )

http://www.sanin-chuo.co.jp/column/modules/news/article.php?storyid=536644033

 愛媛 高2生自殺 体罰から信頼関係生まれない 2013年01月12日(土)

http://www.ehime-np.co.jp/rensai/shasetsu/ren017201301125756.html

 徳島 大阪高2自殺  体罰を許さない社会に 1月11日付

http://www.topics.or.jp/editorial.html

 高知 【部活の体罰】潜在化する問題にメスを 2013年01月10日08時23分

http://www.kochinews.co.jp/?&nwSrl=297545&nwIW=1&nwVt=knd

 宮崎日日 部活動と体罰 2013年01月12日

http://www.the-miyanichi.co.jp/contents/index.php?blogid=5&catid=15

 佐賀 部活と体罰 氷山の一角ではないか 2013年01月12日更新

http://www.saga-s.co.jp/news/ronsetu.0.2378980.article.html

 熊本日日 体罰自殺 運動部の暴力一掃しよう 2013年01月10日
http://kumanichi.com/syasetsu/kiji/20130110001.shtml

 西日本 体罰自殺 指導の「暴走」は許されぬ 2013年1月11日 10:49

http://www.nishinippon.co.jp/nnp/item/342784

 南日本 [部活と体罰] 黙認せず声をあげよう ( 1/11 付 )

http://373news.com/_column/syasetu.php

 琉球新報 体罰で生徒自殺 「虐待」根絶の視点必要だ 2013年1月11日 

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-201249-storytopic-11.html

 

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