学校内の秩序維持のために、また指導の「成果」をあげるためには「体罰」「暴力」による「脅し」で生徒を「服従」させること、教師には「命令」と「処分」「賃金」で「脅す」ことが有効だという「神話」が日本社会に沈殿して、はびこっていましたし、今もまかりとおっていることは、この間述べてきました。
しかし、こうした思想と論理によって、悲惨な事件が起こってしまったこと、「体罰」「暴力」による「脅し」指導がどのような結果をもたらしたか、破綻したか、声を大にして発信していかなければ、第二、第三の悲惨な事件が起こることは、この間の経過を見れば明らかです。
ところで、「体罰」「暴力」による「抑止力」論の破綻の事例として、もう一つの側面から見ていくことにします。それは沖縄の米軍基地が、北朝鮮や中国の「脅威」に対する「抑止力」として、実は機能していないことが、最近言われてきています。以下の沖縄の記事が示しています。
森本防衛相「軍事的に沖縄でなくていい」 2012年12月26日 10時06分
http://article.okinawatimes.co.jp/article/2012-12-26_43212
森本防衛相発言 「抑止力」の虚構 明白に 2012年12月26日
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-200766-storytopic-230.html
森本前防衛相発言 軍事的不合理を証明した 2013年1月7日
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-201059-storytopic-252.html
沖縄タイムス社説[崩れる「抑止力論」]基地削減へ本質議論を 2012年12月28日 10時33分http://article.okinawatimes.co.jp/article/2012-12-28_43289?utm_source=twitterfeed&utm_medium=twitter
琉球新報社説 沖縄密約公開/戦略なき外交を露呈 「抑止力」の呪縛と決別を 2011年2月20日
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-173701-storytopic-11.html
「武力」「暴力」の「脅威」に対して「武力」「暴力」が「抑止力」にならないという事実は、アメリカ国内でも、実はよく示されています。この「抑止力」論について、アメリカ国民は、疑問を持ちながらも、確信が持てずに「仕方ない」と諦めているのではないでしょうか?
以下の記事が示しています。
恐るべきアメリカ銃社会の10事実とNRAの矛盾
http://uskeizai.com/article/309910245.html
全米ライフル協会が会見 「全学校に武装警官を」 2012/12/22 6:42
http://www.nikkei.com/article/DGXNASGN22001_S2A221C1000000/
【私説・論説室から】アメリカという戦場 2012年12月31日
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/ronsetu/CK2012123102000104.html
米中枢同時テロの日に生まれた少女が犠牲になったことでも話題となったこの事件以降、今月のコネティカット州での小学校乱射事件まで、一体何件の悲劇が続いたことか。 「唯一の効果的対策は、全ての学校の適切な武装だ。時間の浪費で、効果も不明な議会の銃規制論議などを待っていては、大切な子供の命は守れない」 真顔でこう語った全米ライフル協会副会長の論法は、対テロ戦争で展開されたブッシュ前政権下の勧善懲悪、力の信仰一辺倒の論理に重なる。平時の論理と倫理が倒錯する戦時の論理そのものではないか。(引用ここまで)
【私説・論説室から】オバマ大統領の壮大な実験2013年1月14日
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/ronsetu/CK2013011402000103.html
米国のオバマ大統領が、銃規制の法案成立に「全力を傾ける」と語った。…生命と財産を守る道具として扱われてきた銃器を、どう封じるのか。議会に銃規制反対を執拗に迫る全米ライフル協会を向こうに回したオバマ氏の挑戦は、米国の日常を覆す壮大な実験でもある。(引用ここまで)
米大統領、16日に銃規制策 犯歴調査強化など指示 2013/01/16 09:51【共同通信】
http://www.47news.jp/CN/201301/CN2013011601000760.html
NY州で銃規制強化法成立 「全米で最も厳しい内容」 2013/01/16 10:01【共同通信】
http://www.47news.jp/news/2013/01/post_20130116100359.html
米兵、自殺が戦死者上回る 昨年過去最悪に 2013/01/16 10:52【共同通信】
http://www.47news.jp/CN/201301/CN2013011601000909.html
ここに登場する全米ライフル協会副会長の論法、あまりの短絡的思考! 絶対銃の禁止や廃棄にはしないという思想は、部活動停止と入試中止発言をした橋下市長に似ていないでしょうか? 子どもじみている、というだけでは済まされない思想と論理があります。
橋下市長については、「反省」を口にしつつも、自らの「責任」は不問にし、生徒に「責任」を取らせようとするなど、もってのほか!「直ちに辞職せよ!の声を上げていきましょう!
以下の記事をご覧ください。
「体育系の入試中止を」橋下市長 市教委は難色 2013.1.15 21:23
http://sankei.jp.msn.com/west/west_affairs/news/130115/waf13011521280027-n1.htm
「今部活でうまくなっても人間としてダメ」 橋下氏が持論展開、生徒には動揺 2013.1.16 07:05
http://sankei.jp.msn.com/west/west_affairs/news/130116/waf13011607060000-n1.htm
以上のアメリカの「苦悩」を示す記事から、想像できることは、「紛争」を解決する手段として「武力」「暴力」や「脅し」は永久に放棄するとした日本国憲法の平和主義は、アメリカ国民の「苦悩」への回答と言えるのではないかということです。
それにしても、全米ライフル協会を日本に当てはめると、何になるか、探してみました。ありました!以下をご覧ください。
自衛隊協力会 日本各地にある自衛隊を支援するための民間団体の1つ。自衛隊との相互理解と親睦を図り、自衛隊の健全なる発展のため支援することを目的として設立されている。
http://www.ajda.jp/kaityouaisatu.html
どうでしょうか?アメリカで言えば、全米ライフル協会のような、日本で言えば、自衛隊協力会・全国防衛協会連合会のような「団体」が吹聴する思想と論理が、政府と政党を操り、両国の国民を惑わせているのではないでしょうか?巨大な権益、利権が渦巻いていないでしょうか?皆国民の血税が、彼らの懐に入っていっているのです。ここに「脅威」と「抑止力」の発信源が見えていないでしょうか?
しかし、そのようには見えないようにしている「装置」、マジック・トリックが強力にちりばめられているのです。それは「脅威」と「抑止力」というトリック・ゴマカシです。
日本国憲法の平和主義を有する日本においてみるならば、中国・北朝鮮の「脅威」に対する「抑止力」を選択するとしたら、「軍事力」「武力」「暴力」の「抑止力」を選択すべきか、「非暴力」「対話」「寛容」「強調」「信頼」「連帯」の「抑止力」を選択すべきか、明瞭ではないでしょうか?
しかし、実際は、とんでもない方向に持っていこうとしているのです。
日米両政府と「死の商人」たちとま逆の思想と論理をもった人々が、実は、アメリカにおいても日本と同様に存在しているのです。
それは「非暴力」「対話」「寛容」「強調」「信頼」「連帯」の「抑止力」として掲げている学校です。以下の引用は『中学生・高校生の発達と教育3』(岩波書店)の中の太田政男「第4章 君たちが君たちの学校をつくる」です。以下みてみます。
アメリカのある小学校には、「市民としての権利」という、次の文が教室に掲げられている。
一 教室の中で、私は幸せであり、暖かく扱ってもらう権利をもっています。このことは、だれも私を笑ったり、傷つけてはいけないことを意味しています。
二 教室の中で、私は私でありつづける権利をもっています。このことは、黒人である、白人である、太っている、やせている、背が高い、低い、男の子、女の子という理由で、不当に扱われないことを意味しています。
三 教室の中で、私は安全に暮らす権利をもっています。だれも私をぶったり、押したり、傷つけてはいけないことを意味しています。
四 教室の中で、私は他人の話をきき、聞いてもらう権利をもっています。このことは、だれも金切り声をあげたり、騒音をだしたり、わめいたりしないことを意味しています。
五 教室の中で、私は自分について学び続ける権利をもっています。(引用ここまで)
どうだったでしょうか?橋下市長の「手をあげる」「体罰」すら不必要な「教室」が展望できるのではないでしょうか?ここに確信を持てるか、持てないか、分岐点があります。ところが、この分岐点において、戦後日本は、どちらを選択してきたか。
それは「持てない」側の道を選択して、ずっと済ませてきた歴史があるのです。だからこそ、「懲戒」と「体罰」を混同させ、ゴマカシ、曖昧にして、「体罰」を容認してきたのです。ここに共通している思想は人権尊重思想の欠如・無理解です。「体罰」「抑止力」「成果」「効果」論という「神話」です。
そこで注目しなければならないのは、「教室の中で」を、「アメリカの中で」と、さらに「地球の中で」と書き換えたのなら、どのような現実が広がっていくことでしょうか?悲惨な事件、戦争を熱狂的に支持するようなことは起こらないのではないでしょうか?
こうした思想と論理が大勢になれば、「死の商人」たちを孤立させることができれば、歴史は劇的に変革されるでしょう。
それにしても、銃規制を阻む全米ライフル協会の主張の根底に何があるか、それを見ていく必要があるように思います。それはイギリスから独立を獲得したアメリカ国民が、「銃」「武力」「暴力」で先住民の命や財産を奪ってきた歴史、黒人奴隷の解放の是非を武力で決着を付けた歴史です。「銃」「武力」「暴力」で国土を拡大してきた歴史です。そうした歴史によってアメリカンドリームを実現してきた歴史です。こうした歴史の中に銃がどのような位置を占めてきた結果、今、悲惨な事件を招いしまったのです。
これらの歴史的伝統を受け継ぐ全米ライフル協会と黒人解放のキング牧師のアメリカ。
日清日露戦争を遂行していた天皇制軍国主義に立ち向かった田中正造、その天皇制軍国主義がアジア太平洋戦争を引き起こし敗北し占領された米軍に立ち向かった阿波根昌鴻の日本。
いずれも非暴力不服従主義を掲げて歴史を創造してきた先人がいる両国で、「軍事力」「武力」「暴力」による「脅し」を「抑止力」として大儲けする思想と論理が大勢を占めている現実、「悲惨な事件はごめんだ」という国民意識の広がりをさらに広げていくことができるか、これを他国への侵略否定と結びつけていくことができるか、今世紀の最大の課題と言えるでしょう。
何故ならば日米の経済力・軍事力、政治力の動向は、今や世界の発展の桎梏となっているような気がするからです。