4日「党旗びらき」なるものが開かれ、志位委員長の挨拶が赤旗に掲載されました。
2013年党旗びらき 志位委員長のあいさつ2013年1月5日(土) http://www.jcp.or.jp/akahata/aik12/2013-01-05/2013010504_01_0.html
第6回目の総会が開かれるとのことですが、これを読む限り、参議院選挙も同じような「声明」が発表され、同じような反省の弁が語られるなと思いました。
その理由について、以下述べてみます。
1.自己検討について
「総選挙の結果について――自己検討をつぎのたたかいに生かす決意
後退は悔しい結果――中央として自己検討を深め、つぎのたたかいに生かす」という項目について
志位委員長は、以下のように述べました。
日本共産党は、この総選挙を、「650万票、議席倍増」という目標を掲げてたたかいましたが、結果は、比例代表で369万票、9議席から8議席への後退となりました。「今度こそは躍進を」という思いで準備を重ね、たたかっただけに、たいへんに残念で悔しい結果であります。情勢が求める結果を出せなかったことに対して、私は、委員長として責任を痛感しております。…どうしたら本格的な前進に転じられるかについて、党内外の方々のご意見に耳を傾けつつ、自己検討を深め、半年後に迫った東京都議選、参議院選挙のたたかいに生かす決意であります。(引用ここまで)
今回は、「委員長として」と前置きして述べていますが、前回の参議院選挙の「総括」の際には、以下のように述べていました。
日本共産党第2回中央委員会総会 参議院選挙の総括と教訓について 志位委員長の幹部会報告
2010年9月27日(月)「しんぶん赤旗」(以下引用する際には「2中総」と略します)
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik10/2010-09-27/2010092701_09_0.html
選挙指導に日常的に責任を負う常任幹部会を代表して、全国のみなさんの奮闘を議席と得票に結びつけられなかったことについて、おわびします。 7月12日の常任幹部会声明は、今回の選挙結果を重く受け止め、政治論戦、組織活動などあらゆる面で、どこにただすべき問題点があるか、前進のために何が必要かについて、党内外の方々のご意見・ご批判に真摯に耳を傾け、掘り下げた自己検討をおこなう決意を表明しました。 この見地で、全国の都道府県委員長、地区委員長、比例代表・選挙区の候補者から意見と感想を寄せていただきました。私たちは、地方党組織に出向いての直接の聞き取りもおこないました。党内外の文化・知識人など、さまざまの分野の方々からも意見をお聞きしました。党内外の5千人をこえる方々から、電話、メール、ファクス、手紙などで、ご意見、ご批判、叱咤激励をいただきました。総括と教訓についての報告は、これらの意見の一つひとつを検討し、中央(常任幹部会)としての自己分析を明らかにし、国政選挙での巻き返しにむけて、今後の選挙活動を、いかに改善、強化、発展させるべきかについて、のべるものです。(引用ここまで)
この2中総から、2年。共産党は何をやってきたのでしょうか?結果論としてみるならば、「政治論戦、組織活動などあらゆる面で、どこにただすべき問題点があるか、前進のために何が必要かについて、党内外の方々のご意見・ご批判に真摯に耳を傾け、掘り下げた自己検討をおこなう決意を表明し…中央(常任幹部会)としての自己分析を明らかにし、国政選挙での巻き返しにむけて、今後の選挙活動を、いかに改善、強化、発展させるべきかについて、のべ」た視点は活かされなかったということになります。
2.「全党と後援会員の奮闘によって、第一歩だが前進への足がかりをつかんだ」という視点について
志位委員長は、「この総選挙を、『650万票、議席倍増』という目標を掲げてたたかいましたが、結果は、比例代表で369万票、9議席から8議席への後退」させ「得票数では3年前の440万票(7・5%)から356万票(6・1%)に後退し」たが、「私たちが、「出発点」と位置づけた2010年参議院選挙との比較では、わが党は、比例代表で得票を356万票から369万票に、得票率を6・10%から6・13%に、わずかですが前進させ」「小選挙区で、『全区立候補』に挑戦し、470万票、7・89%を獲得したことも、積極的意義をもつもの」であり、かつ「前進への足がかりをつかんだことは、重要」「全党と後援会員の奮闘によって、第一歩だが前進への足がかりをつかんだ」と述べました。
こうした指摘は事実を述べてはいるものの、その「評価」については、以下の点で問題と言えます。
(1)今回の結果の「評価」について、「後退」「悔しい結果」と言いながら、13万票(0.03%)について「わずかですが前進」と述べています。確かにそうでしょう。しかし、有権者比でみると、13万票はどのような位置を占めているのでしょうか?全く不思議な視点と「評価」です。
ま、物事を「総括」する際には、積極的側面と消極的側面、正の側面と負の側面の両方を見ていくという視点が正しい見方考え方だとは思いますので、間違ってはいないと思います。しかし、妥当かどうか、大いに疑問です。
それは、「政権選択」「政権獲得」をめざす総選挙と参議院選挙とでは、そもそも性格が違います。そうした性格の違いを前提にすると、「出発点」と位置づけた2010年参議院選挙の獲得票からみて、「わずかですが前進」などとする「評価」は如何なものでしょうか?
確かに、最も低い獲得票を基準にして見るのは当然で、間違ってはいません。しかし、それにしても前回総選挙で獲得した494万4千票からみると、今回の獲得票369万票は、その差約125万票が大きな後退であることは明らかです。このことをこそ、「総括」の最も重要な部分として位置づけるべきではないでしょうか?
そこで、「「出発点」と位置づけた2010年参議院選挙との比較」を見る上で、基準となった視点について、調べてみました。以下の4中総にありました。
第4回中央委員会総会 志位委員長の幹部会報告 (2011年12月3日)
http://www.jcp.or.jp/web_jcp/html/25th-4chuso/20111203-4chuso-hokoku.html
次期総選挙の政治目標は、「比例を軸に」をつらぬき、650万以上の得票、10%以上の得票率を獲得し、すべての比例代表ブロックで議席獲得・議席増をめざすことであります。現在議席のない北海道、北陸信越、中国、四国での議席獲得、東京、北関東、南関東、東海、近畿、九州・沖縄での議席増、東北の議席確保をめざしてたたかいます。 私たちが出発点とすべきは、2010年参院選比例票の356万票(6・1%)であります。この水準では、現有9議席のうち、東北と近畿で議席を減らすことになります。650万票(10%)の得票目標の獲得のためには、参院比例票を1・8倍(得票率では1・6倍)に伸ばすことが必要となりますが、これに正面から本腰を入れて挑戦しようではありませんか。(引用ここまで)
以上のような視点から、共産党は、「私たちが出発点とすべきは、2010年参院選比例票の356万票(6・10%)」(4中総決定)であることを銘記して、このたたかいにのぞみました」(「総選挙結果について」の「声明」12月17日)と述べているように、今回の総括の「視点」と「基準」がつくりだされているのです。
この参議院選挙結果からみて前回総選挙の到達点は出発点は排除されたのでした。確かに総選挙で獲得した票494万4千票より、356万票の方が現実味があるのは当然です。しかし、だからと言って、これをものさしにして「わずかですが前進」と評価するのは、「『650万票、議席倍増』という目標を掲げて」たたかったことはどうなるのでしょうか?
それでは前回総選挙の獲得票についての「評価」は、どうだったでしょうか?調べてみました。以下のようになっていました。
日本共産党創立87周年記念講演会 歴史の大局で到達点をとらえ、未来を展望する
――総選挙の結果と「建設的野党」の役割 志位和夫委員長の講演 2009年9月11日(金)「しんぶん赤旗」
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik09/2009-09-11/2009091107_01_0.html
日本共産党――試練の選挙で勝ち取った善戦・健闘の結果について
この歴史的選挙で私たち日本共産党は、比例代表選挙で9議席を獲得し、現有議席を確保することができました。また得票では、投票率が上がるなかで、得票率は前回総選挙の7・25%から7・03%に後退したものの、得票数は491万9千票から494万4千票へと前進させることができました。…こうした激しく厳しい選挙で私たちが得た494万票という得票は、前回票にただ2万票余を積み上げたというだけのものでは決してありません。メディアの出口調査の結果を見ると、比例選挙でわが党支持者の約12%が民主党に流れたとのデータがあります。そうした人々は、決して、わが党に「愛想がつきた」というものでないと思います。「自公政権を倒したい」という思いからのものでしょうし、ひきつづきわが党を期待をもって見てくれている人々だと思います。同時に、おそらく100万余という規模で、新たにわが党に投票してくださった人々が生まれた。全国各地から、保守層もふくめてはじめて日本共産党に思い切って投票したという声が数多く寄せられました。そうした激しいたたかいの結果、全国の党と後援会のみなさんの大奮闘の結果が、この2万票余の得票増だということを、私は強調したい(引用ここまで)
09年総選挙時には、今回同様650万の目標に対して、得票数は前回491万9千票から494万4千票へと「2万票余」増、前進をもって、志位委員長は「善戦・健闘」と評価しました。しかし、今回は直近参議院選挙の獲得票をもって「わずかですが前進」と評価したのです。
このように総括の基準が、コロコロ変わるのは、どうでしょうか?自分の都合の良い数字を探していると言われても仕方ありません。勿論、志位委員長にはそれなりの言い分があるでしょうが、一つの基準で「評価」し、「総括」することで見えてくるものがあるはずです。
ところで、今回の基準の「出発点」としていた参議院選挙の目標650万は、以下のように、もっと前に決められていました。
第9回中央委員会総会 志位委員長の幹部会報告2009年10月15日(木)「しんぶん赤旗」
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik09/2009-10-15/2009101501_05_0.html
今回の総選挙は、5中総で決定した比例代表での前進に力を集中する新しい選挙方針を、最初に実践するたたかいとなりました。新しい選挙方針の基本は以下の点にありました。
――比例代表で「650万票以上」を獲得することを衆参の国政選挙の共通の全国的目標として掲げ、その達成をめざすこと。
――現在の党組織の力を最も効果的に比例代表での前進に集中するために、「すべての小選挙区での候補者擁立をめざす」という方針を見直し、小選挙区での擁立は一定の要件を満たした選挙区とすること。比例代表の候補者は、ブロック全域で活動する候補者にくわえて、全県からそれぞれの県で日常的な活動をおこなう候補者を擁立すること。
――この方針を成功させる要は、比例選挙で前進するためのとりくみを、あらゆる選挙戦と党活動全体の中軸にすえ、文字どおり日常不断のとりくみにしていくことにあります。すなわち選挙活動の日常化ということであります。
第五回中央委員会総会 志位委員長の幹部会報告 2007年9月11日(火)「しんぶん赤旗」
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik07/2007-09-11/2007091117_01_0.html
参議院選挙で日本共産党は、比例代表選挙で五議席獲得、二〇〇五年総選挙比の130%、六百五十万票以上を目標に奮闘しました。選挙区選挙では、現職の東京での議席確保とともに、三年前の参院選で議席を失った選挙区での議席奪還をめざしてたたかいました。 選挙の結果は、比例代表での獲得議席は三議席、選挙区では議席を失い、改選五議席から三議席に後退しました。力およばず、目標が達成できず、議席を後退させたことは残念であります。わが党に暮らしと平和の切実な思いを託して投票してくださった国民のみなさんに、党中央を代表しておわびするとともに、つぎの機会での前進の決意を申し上げるものです。 同時に、比例代表で、前回、前々回の参議院選挙の到達点を基本的に維持する四百四十万票(得票率7・5%)を獲得したことは、貴重であります。…国政選挙は、衆議院選挙と参議院選挙が、だいたい三年に二回程度、多くの場合には交互にたたかわれます。どちらの場合も比例代表選挙がたたかいの軸となるわけですが、当面は「六百五十万票以上」を衆参の国政選挙の共通の全国的目標として掲げ、その達成をめざす。そして衆議院であれ、参議院であれ、六百五十万票を達成したら、あるいはこの目標に接近したら、次の国政選挙から目標を新しい段階にひきあげますが、それまでは同じ目標を全国的な目標として追求するようにする。これは新しい問題提起でありますが、こうしたたたかい方を導入することは、比例代表選挙の準備を日常不断の活動にしてゆく基盤となり、国政選挙を「自らの選挙」「おらが選挙」にしていくうえでも力を発揮するでしょう。 ただし比例ブロックによっては、「六百五十万票以上」にみあう得票目標では議席目標にとどかないブロックもあります。そうした比例ブロックでは、議席目標達成に必要なより高い得票目標を決めることにします。(引用ここまで)
どうでしょうか?「衆議院であれ、参議院であれ、六百五十万票を達成したら、あるいはこの目標に接近したら、次の国政選挙から目標を新しい段階にひきあげますが、それまでは同じ目標を全国的な目標として追求するようにする。これは新しい問題提起でありますが、こうしたたたかい方を導入することは、比例代表選挙の準備を日常不断の活動にしてゆく基盤となり、国政選挙を「自らの選挙」「おらが選挙」にしていくうえでも力を発揮するでしょう」とまで言って決めた方針から5年の間、その間、2回の国政選挙をたたかってきたのです。
しかも650万という目標を掲げ、活動し、選挙をたたかい、その結果に「お詫び」し、「反省」し、内外の声に耳を傾け、活動してきたようですが、その一旦を見えてくる文書を辿ってみると、深刻さが浮き彫りになってきます。
「650万」という目標を掲げながら、前回総選挙ではなく、直近の参議院選挙の低い目標を「出発点」として位置づけて「総括」のものさしに設定しているのです。これは目標の基準の2重性という意味から曖昧な設定ではないでしょうか?中央の言い分としては、党の実力・到達点を踏まえたものとして「スジ」は通っているように見えますが、「二枚舌」と言われても仕方のないものです。
こうした視点での総括は、「政権交代」「政権奪還」「政権獲得」を争う総選挙で、共産党が「政権を取るつもりのない政党」と観られても仕方ありません。しかも、志位委員長は、今後の方向について、「日本共産党が『防波堤の党』『変革者の党』『国民共同をすすめる党』として意気高く奮闘し、国民に溶け込み結びついた強大な党へと成長することが不可欠」と述べているのです。
このことは一般論としては間違ってはいませんが、一つには、「強大な党へと成長」しなければ「政権は取れません」と言っているようなものです。したがって二つ目には、これではアメリカも財界も、ちっとも怖くない政党としてみるのではないでしょうか?
何故ならば、現局面における日本の政治情勢からみた国民の期待、すなわち自民もダメ、民主のダメ、という怒りと期待が渦巻いているのにもかかわらず、「現段階では政権は取れませんし、取るつもりはありません」と国民に「公約」しているのも同然だからです。
「総選挙後、日本共産党のこの役割に注目し、政治的立場の違いを超えて、『ここは共産党に頑張ってもらわないと」という新たな期待が寄せられる状況があります』」と述べ、「ある保守の有力政治家」「別の、ある保守政党で有力な役割を果たしてきた政治家」の声を紹介しています。しかし、これらの「期待」は共産党の「政権担当能力」に対する「新たな期待」ではなく「共産党の存在自体が右傾化の動きに対する歯止め・ブレーキ役になっている」との声なのです。
こうした「期待の声」は、現在の共産党の置かれた位置を雄弁に物語っています。
さらに、このことは「一連の政策提言――『経済提言』、『外交ビジョン』、『即時原発ゼロの提言』、『尖閣問題の提言』、『いじめ問題解決の提案』、『震災・災害政策の転換の提案』などを提起するとともに、それらを集大成し発展させた総選挙政策を掲げてたたかいました」と述べたことや、コピーとしては「提案し、行動する」と訴えたことにも示されています。
これらは「反対政党」として見られている国民目線に応えたもののようにも思えますが、07年の参議院選挙後の国民の「期待」、すなわち「国民が新しい政治を探求する時代が本格的に到来した」(9中総)時代に応えるためには「共産党が政権を担当した場合には、こうやるぞ」というメッセージ、「公約」「提案」「提言」は、極めて希薄です。これでは民主党のような「風」を吹かせ、「躍進」を実現することは難しいことでしょう。
このことは「政治不信」「多党化で政策が判りにくい」を原因とした投票率の低下にも、見られています。「政治革新」「革命」をめざす共産党としては現段階の階級闘争のもっとも熾烈な表現である選挙戦に、国民の参加を獲得できなかったことは、大きな失態、教訓と言わなければなりません。
しかも「一点共闘」が前進したにもかかわらず、その共闘の「成果」が選挙戦で党への支持に結実しなかったこと、いや党的には、参議院選挙からみれば、「わずかですが前進」しかできなかったのでした。事は深刻です。
そして何より、「自公政権を倒したい」という思いが、「比例選挙でわが党支持者の約12%が民主党に流れたとのデータ」に見るように、国民目線と噛み合っていない選挙活動、日常活動をしているがために、今回に活かせなかったことの教訓こそ、政治的、政策的、組織的、思想的検討が必要ではないでしょうか?
(2)別の面から「わずかですが前進」という「評価」の問題点を指摘すれば、共産党以外の政党には、「自公圧勝と言われるが…比例は自219万減、公94万減 信任されたとはとてもいえない」として「自民は小選挙区でも前回比166万票減らし得票率は43%なのに、議席占有率は79%にもなりました。民意を大政党本位にゆがめる小選挙区制の欠陥を示しています。自公両党の「圧勝」は、民主党の公約破りによる“敵失”と、選挙制度に助けられてのことです」(「赤旗」12月18日付け)などと述べ、さらには「総選挙で自民党が獲得した得票は、有権者比では小選挙区で24%、比例代表で15%にすぎません」などと、批判しているのです。
ところが、共産党自身に対しては「有権者比」を目標としていたことを忘れ?て、参議院選挙の獲得票を基準に「わずかですが前進」などと語っているのです。これでは「委員長として責任を痛感」「党内外の方々のご意見に耳を傾けつつ、自己検討を深め」と語るものの、「本当にそうか!」という「不信感」を払拭できるものではありません。
(3)以上のように、「わずかですが前進」という「評価」を、ではなく、「敗退」の真の原因を抉り出すような視点で、自己検討と総括をしなければ、参議院選挙も同じことになるのではないでしょうか?
以上みてきたように、「党内外の方々のご意見に耳を傾けつつ、自己検討を深め」ると語っているのですから、どのような声が寄せられているかを明らかにすることを含めて、大いに「自己検討を深め」ていただきたいと思います。そういう意味で共産党自身の統治能力が試されているのだと思います。
志位委員長の発言は、まだありますが、長くなりましたので、これで一旦切ることにします。