今日は成人の日、本来は1月15日でした。それは以下の根拠によって制定されたようですが、ハッピーマンデー制度導入によって変更されました。
ところで「成年」については、以下の規定があるようです。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%88%90%E5%B9%B4
そこで、今日の成人に向かってメッセージを送った各紙の社説を読んでみました。これらを読んでみて思ったことは、以下のとおりです。
1.若者を取り巻く厳しい状況を指摘しながらも、若者自身に自覚と責任を求める社説があったこと。
(1)新しい人間関係を誰かと結べば、また、別の分人ができる。そうやって、危機をしのいで、前向きに生きていけないだろうか。…社会が若者たちに閉塞感を与えている面はある。でも、息が詰まる状態に身を置き続ければ、呼吸が苦しくなるばかりだ。心の持ち方を変えて新しい関係を生きてほしい。(毎日)
(2)だが、厳しい状況だからこそ、若い力への期待は大きい。既に働いている新成人も、これから社会に出る人も、「社会から求められている」という自負心を持って仕事や勉学に取り組んでほしい。…それぞれの思いを胸に、時代を切り開いてほしい。(読売)
(3)若者人口の減少は国力の衰退につながり、国は早急に手を打たねばならない。同時に、若者自身にも日本の次代を担っていこうとする自覚を促したい。…現行憲法を墨守するのかどうか。日本の屋台骨を支えることになる今の若者にこそ真剣に考えてほしい。もはや傍観者であってはならない。…現状に不満を並べるだけでは若者らしくない。大きな志で「強い日本」を創造してほしい。(産経)
(4)社会を改善するためにも政治への関心を高めてほしい。選挙への参加もその一つだ。(岩手)
(5)この不思議な節目の日、新成人の皆さんには、過ごしてきた時間の重さにしばし浸ってもらいたい。多くの人の愛情や喜怒哀楽がいっぱい詰まった時間の手触りを、まず確かめてもらいたい。 そして想像してほしい。未来と呼ぶにはあまりに身近な次の二十年先に、あなたは何をしているか。何をしていたいのか。 今私たちには、想像力が足りません。…例えば二十年という時間が起こす変化の力を信じずに、現在の物差しで未来を測り、あれもだめ、これもだめだと、できない理由ばかりを探して立ちすくんでいるようです。それがもし「大人」なら、見習わないでいただきたい。 想像してごらん。二十年後、温室効果ガスを25%減らした地域のことを。想像してごらん、原発がゼロになった日本のことを。想像してごらん、戦争のない世界のことを。今皆さんに、できない理由がありますか。(東京・中日)
(6)日本は政治、経済とも先行きの見通せない状況に陥っている。がむしゃらに働いてきた大人たちは、新しい社会のビジョンを探しあぐねているともいえる。「どうせ世の中は変わらない」と傍観するのではなく、自ら切り開く気概をもって世の荒波に挑んでほしい。(山陽)
(7)ネット選挙を解禁さえすれば、投票率が上がるというものではないはずだ。一人一人が、わがこととして政治や選挙にどれほどの関心を向けられるか。そこにかかっていよう。 今度の政権交代で実際、若い世代にものしかかりそうな課題が岐路に差しかかっている。社会保障費の負担はもとより、憲法改正や集団的自衛権の行使、脱原発政策の賛否をめぐる議論にしても同じだろう。 玉石の入り交じったネット情報を取捨選択し、読み解ける眼力が今まで以上に求められる時代である。自立した有権者を育む選挙啓発や学校教育の再構築が欠かせない。(中国)
2.若者だけではなく大人も反省を求める社説もあったこと。
(1)今年は新しい仲間を迎える大人社会の側に向けて書きたい。…私たち大人の側から世代の壁を築いてしまわないよう、胸に刻みたい。(朝日)
(2)そういう社会にした大人の責任は重大である。誠に申し訳ない。(京都)
3.若者の選挙に対する低投票率(無関心)を指摘する社説もあった。
(1)先月の衆院選で投票所に足を運んだ新成人は、果たしてどれくらいいただろうか。 詳細はまだ明らかになっていないが、明るい選挙推進協会によれば、平成5年から21年までの6回の衆院選における20歳代の投票率は、いずれも30%台、40%台で、60歳代(約77~84%)などに比べてすこぶる低い数字である。 飲酒・喫煙の自由を得たことは喜んでも、選挙権を得たことの意義を心に刻む新成人は少ないのではなかろうか。雇用や景気に不安を感じ、時代の閉塞感を嘆くばかりで将来への希望も持たず、日本の未来についても当事者意識が希薄なように思われる。 人口が少ない上に投票率が低いとなると、やがて社会の支え手となるであろう若者自身の意思が政治に反映されないことになる。(産経)
(2)先の衆院選は、戦後最低の投票率を記録した。若者の選挙離れも指摘されている。 岩手大のキャンパスで18、19歳を対象に行われた意識調査によると、近く選挙権を得ることへの自覚が「ない」とした学生が3分の2に及んだという。一票を投じることは政治を考える貴重な契機となる。20歳となったらぜひ選挙権を行使してもらいたい。 若者が政治に参加し、意思を反映させることで、確かな未来が開かれる。(岩手)
(3)最近の国政選挙の投票率を見ると、60、70代が70~80%台なのに対し、ただでさえ数の少ない20代前半は30~40%台にとどまる。政治家に白紙委任するのでなく、与えられた権利を自ら十分に行使してもらいたい。(山陽)
(4)20代の投票率は、他の世代と比べて低い傾向が続いてきた。若者が政治に関心を高めるきっかけとなるか、注目したい。…誤った情報に有権者が振り回されでもすれば、投票結果の正当性が問われる場面さえ出てこよう。選挙制度そのものの信頼が根底から揺らぎかねない。…先月の衆院選は残念ながら、戦後最低の投票率にとどまった。30代の本紙読者モニターでNPO法人「ひろしまジン大学」の平尾順平学長がきのう、紙面批評で「予想外だった」と振り返っていた。ネット上の世論の盛り上がりようと、低調に終わった投票率とのずれを実感したのだろう。ネット選挙を解禁さえすれば、投票率が上がるというものではないはずだ。一人一人が、わがこととして政治や選挙にどれほどの関心を向けられるか。そこにかかっていよう。 今度の政権交代で実際、若い世代にものしかかりそうな課題が岐路に差しかかっている。社会保障費の負担はもとより、憲法改正や集団的自衛権の行使、脱原発政策の賛否をめぐる議論にしても同じだろう。 玉石の入り交じったネット情報を取捨選択し、読み解ける眼力が今まで以上に求められる時代である。自立した有権者を育む選挙啓発や学校教育の再構築が欠かせない。(中国)
4.若者を取り巻く政治・社会の矛盾・問題点を指摘しつつも、その要因、マスコミの報道の仕方について述べていない社説があった。
(1)もちろん、自戒を込めて。薄っぺらい教科書で学んだ、勉強不足のゆとり世代。 内向き志向で、受け身。…(朝日)
(2)就職難は相変わらずだし、政治的主張がなかなか通らないもどかしさを感じている人も少なくないだろう。いらだちや虚無感を抱える人が多いのではないか。 最近、気になるのは若者たちの自殺がしばしば報じられることだ。…重圧や不安に悩む若者はかなりの数になるだろう。これらには、狭い環境で追い込まれたように感じ、行き詰まってしまった結果という側面もあるのではないか。(毎日)
(3)この間、日本は景気が低迷し、中国に国内総生産(GDP)で抜かれ、世界第2位の座を明け渡した。大学進学率が50%を超える一方で、就職難が続く。明るい展望を持ちにくい時代と言える。(読売)
(4)若者人口の減少は国力の衰退につながり、国は早急に手を打たねばならない。雇用や景気に不安を感じ、時代の閉塞(へいそく)感を嘆くばかりで将来への希望も持たず、日本の未来についても当事者意識が希薄なように思われる。(産経)
(5)想像してごらん。二十年後、温室効果ガスを25%減らした地域のことを。想像してごらん、原発がゼロになった日本のことを。想像してごらん、戦争のない世界のことを。「イマジン」をつくったジョン・レノンは、こんな歌も歌っています。 ♪戦争は止められるさ/もし君が望みさえすれば♪(ハッピー・クリスマス)(東京・中日)
(6)今年の新成人は、まさにこの時期を生きてきた。 この間、情報技術が進歩し、グローバル化が進行。それに伴い、雇用形態も変化した。学校は「ゆとり教育」をめぐり揺れた。 先行する世代を見ると、就職、結婚、子育てなどに格差社会の拡大が反映。課題が先延ばしにされ、社会には閉塞感が漂っている。(岩手)
(7)日本、あるいは世界は今、大きな変革期にある。これまで大人たちが築き上げてきたさまざまなシステムがうまく機能しなくなっているからだ。 新成人が誕生したころはバブル経済崩壊の直後だ。その後が「失われた20年」と呼ばれるように、経済は長期間低迷し、デフレ不況はいまだに出口が見えない。 政治も迷走した。20年前、非自民・非共産の連立政権が発足して戦後政治の転換点となったが、その後、政権交代を繰り返す度に国民の不信を深めた。特にこの6年は毎年、総理大臣が交代するありさまだった。少子高齢社会が進む中、国と地方の借金は1千兆円にも膨らんだが、目指すべき社会のかたちは示せていない。(京都)
(8)自分の将来に不安を感じる人が、多少感じるも含めて88%に上った。就職難や雇用に関する不安が圧倒的に多かった。…ビジョンを持ち、一生懸命働くことだ。日本人はよく働くが、ビジョンを持つことは苦手だと指摘する。 日本は政治、経済とも先行きの見通せない状況に陥っている。(山陽)
(9)現在の公選法は、選挙の期間中に配布できるビラやはがきの枚数、体裁を規制している。(中国)
5.「問題だな」と言える社説は、以下のとおり。
「朝日」―「自戒を」述べ、「ゆとり教育は、始まるやいなや学力向上にかじが切られた。大学も出席を厳しく取るようになった」ことからくる「リアルな人間関係」の「希薄」や「友だち地獄に悩んでいる」若者の実態が「大人の側」の意図によって造り出されていることを曖昧にし、「しかし、生協連をはじめ各種の調査結果を見ると、どちらもそうは言えない」という事例を出すことで、「若者を『問題』としてみようとする大人の視線が、むしろ問題かもしれない」(浅野准教授の指摘)と今度は「大人の視線」を出すことで、政府の教育政策や企業の雇用政策などの問題点を曖昧にしていることです。ここでもマスコミの役割を免罪しているのです。
「毎日」―「若者たちの自殺」をとりあげているものの、「誰か」と「新しい人間関係」を「結べ」、「起業をめざす人」のように「新しい人間関係」によって充実した人生を得」なさいと、「息が詰まる状態に身を置き続ければ、呼吸が苦しくなるばかりだ。心の持ち方を変えて新しい関係を生きてほしい」と若者の責任に転嫁していることです。「政治的主張がなかなか通らないもどかしさ」と言いますが、そのような「もどかしさ」を感じさせてきた原因は何か、いっさい触れていません。
「読売」―「大企業なら安泰とは限らない」から「米国発」「起業」「ビジネスが日本にも広がり始めた」ように「従来にはない柔軟なアイデアを発揮してもらいたい」と、「明るい展望を持ちにくい時代」となった原因の解決を何ら示さず、結果的には「それぞれの思いを胸に、時代を切り開いてほしい」と述べて責任を転嫁していることです。
「産経」―「若者人口の減少は国力の衰退につながり」と、若者人口が減少してきた原因に目を向けず、黙殺し、若者を「産経」のいう「強い日本」=「国力」の強化づくりのために利用しようといているのです。
「東京・中日」―「民法は『二十歳をもって、成年とする』(第四条)と定めています。ところが、世界的にはプエルトリコが十四歳、一般には十八歳で成年とみなされる場合が多く、『大人』の根拠はあいまい」と、これが徴兵制度を想定していたことを指摘していません。また世界的には18歳選挙権が大勢ですが、これは子どもの権利条約でも明白です。しかし、こうした視点はありません。このことの意味は重大です。しかも、「「大人」を「見習わないでいただきたい」と述べたり、「イマジン」をつくったジョン・レノンを紹介しながら、「温室効果ガスを25%減らした」「原発がゼロになった日本」「戦争のない世界」を「想像してごらん」、「♪戦争は止められるさ/もし君が望みさえすれば♪」と述べるに留まっているのです。そうした状況にないことは、「若者の自殺」状況を見れば明瞭です。今「望み」を抱くだけではなく、「不断の努力」をこそ、必要ではないでしょうか?何故こうした視点と行動を求めないのでしょうか?世界の若者のように。
「山陽」―政治の問題点を曖昧にして「厚生労働省は今年4月から段階的に2割に上げるよう提案したが、自公両党は今夏の参院選を控えてまたも引き上げを見送るようだ。 ただ、先送りしたツケは将来に回る。若い人たちがこの先、年金や医療などで今の水準のサービスを受けられそうにないという世代間格差は重い宿題である。 要は負担を各世代が分かち合い、将来も持続できる社会保障の仕組みをどうつくるかだ。社会保障に限らない。政治の課題に対して若者が声を上げていくことが肝心だ」と述べるだけで、こうした問題点に対して国民的運動があるにもかかわらず、報道していないマスコミの責任放棄を晒して、若者に説教を垂れているのです。
「中国」―「ネット選挙解禁」を歓迎しながらも、「一人一人が、わがこととして政治や選挙にどれほどの関心を向けられるか。そこにかかっていよう。 今度の政権交代で実際、若い世代にものしかかりそうな課題が岐路に差しかかっている。社会保障費の負担はもとより、憲法改正や集団的自衛権の行使、脱原発政策の賛否をめぐる議論にしても同じだろう」との「危惧」を述べながら、「ネット情報を取捨選択し、読み解ける眼力が今まで以上に求められる時代である。自立した有権者を育む選挙啓発や学校教育の再構築が欠かせない」などと、自らどのような情報を発信してきたか、それは不問なのです。
6.以上、社説の特徴と問題点を述べてきましたが、それでも、以下の呼びかけは大切にしたいものです。
(1)一票を投じることは政治を考える貴重な契機となる。20歳となったらぜひ選挙権を行使してもらいたい。 若者が政治に参加し、意思を反映させることで、確かな未来が開かれる。(岩手)
(2)若者が希望を抱き、前を向く力は必ず社会の原動力となる。 困難な時代を生き抜き、ともに前に進もう。(京都)
(3)「どうせ世の中は変わらない」と傍観するのではなく、自ら切り開く気概をもって世の荒波に挑んでほしい。(山陽)
以上、今回の社説を読みながら、最後に、昨日の記事との関連で意見を述べるとすると、以下のことになります。
「体罰」という「暴力」「脅し」による「服従」を強要している教育界のことを指摘せず、若者の投票行動の低さを指摘している社説があったことは、改めて日本社会の「病理」「戦前」の克服の大切さが浮き彫りになったと思います。
ここでも、天皇のために死ぬことを最大の美徳としていた戦前の教育勅語体制と天皇の命令に忠実な兵士づくりをするための軍人勅諭体制と歩兵操典思想が、社会のあらゆる面に徹底されていったこと、その思想と体制が、戦後の現在も色濃く残っていることを指摘しないマスコミ自身のタブー視が浮き彫りになったことです。
もう一つは、若者の意見表明権、若者を主人公にした学校教育システムや地域のあり方を問うこと、こうした若者たちを日常的に評価し、報せていくマスコミの姿勢が極めて弱いということが判ります。
このことは60年代から70年代初頭に、「新左翼」という偽りの報道があったものの、高度成長期の日本社会に対する様々な矛盾に対する若者の問題意識や行動を報道することで、さらに若者に大きな影響を与えていったことを見れば、今日のマスコミがどのような位置にあるか、明瞭です。
このように、どのような「情報」が社会を席巻していくか、そのことが、社会の有り様を決定していくこと、このことを教訓としなければならないと思います。
以下、「成人の日」を論じた社説を掲載しておきます。
朝日 成人の日―レッテル貼りを超えて 2013年1月14日(月)付
http://www.asahi.com/paper/editorial.html?ref=com_gnavi
読売 成人の日 若い力で停滞を打ち破ろう(1月14日付)http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20130113-OYT1T00906.htm
参詣 成人の日 「日本は俺が創る」の志で 2013.1.14 03:14
http://sankei.jp.msn.com/life/news/130114/trd13011403550000-n1.htm
東京・中日 イマジン、次の二十年 成人の日に考える 2013年1月14日
http://www.chunichi.co.jp/article/column/editorial/CK2013011402000086.html
岩手 成人の日 若者の力が未来を開く (2013.1.14)
http://www.iwate-np.co.jp/ronsetu/y2013/m01/r0114.htm
京都 成人の日 ようこそ。ともに前へ [2013年01月14日掲載]
http://www.kyoto-np.co.jp/info/syasetsu/index.html
山陽 成人の日 少数派の世代だからこそ (2013/1/14 9:30)
http://www.sanyo.oni.co.jp/news_s/news/d/2013011409302199/
中国 ネット選挙解禁へ 「玉石」見抜く力 必要だ '13/1/14