「老人タイムス」私説

昭和の一ケタ世代も高齢になりました。この世代が現在の世相をどう見て、考えているかーそのひとり言。

生前葬ではありません。御礼の会です。

2006-10-28 06:09:07 | Weblog
53年前の同期入社の友人(女性)の「お礼の会」が昨夜都心のホテルであった。
なにもお礼を言われることをした訳ではないが、頂戴した案内状にはおよそ
次のように書いてあった。
「”お別れの会”ではありません。生きているうちにお世話になった友人知人
にお礼を述べたいのです。これで一区切りしたあと、新たに静かな気持で時
を送りたいのです」

78歳独身の彼女はさらに次のように心情を吐露している。
「今はまだ歳相応に考え行動できるが、まわりの友人知人が亡くなったり再起
不能の現実を見ますと”お礼の会”をしないと落ち着かないのです」

会場には少女時代の友人、大学時代属していた弁論部の学友、社会人になって
からの友人知人100人以上が集まった。弁論部の後輩、友人代表で挨拶した海部
元総理は欧州旅行を切り上げ彼女のために空港からかけつけたのだという。
和服のよく似合う彼女はとても喜寿をすぎた女性とは見えない。弁論部OBの熱
弁の挨拶にも背筋を伸ばして聴き入っていた。

僕個人は死後の”偲ぶ会”はあまり好きではない。死んだあと偲ばれても有難
くはない。出来れば彼女みたいな会が好ましいが人徳がなければ人がきてくれ
ない。それに会場費にも満たない会費でご馳走し、お土産まで出すのは経済的
に大変だ。しかし葬儀が形骸化してきている現在、発想の転換も必要かもしれ
ない。式壇や花輪が立派でも誰も喜ばない。