「老人タイムス」私説

昭和の一ケタ世代も高齢になりました。この世代が現在の世相をどう見て、考えているかーそのひとり言。

江戸への郷愁 ”お釜おこし”

2007-03-29 06:39:24 | Weblog
”芝で生まれて神田で育った”江戸っ子ではないが、わが家も
かろうじて三代、東京には住んでいる。江戸っ子を評して,ケン
カ早い、宵ごしのカネは持たない、五月の鯉の吹流しなどという。
五月の鯉の吹流しにはハラワタがない、つまり腹に一物がない、
何でも自分の思っていることを言ってしまう。だから時には他人
に不快感を与えるーという意味のようだ。

ふだんは江戸っ子などと意識したことないが、時にはご先祖の時
代に郷愁を感ずる催事に出くわすことがある。例えば春(3月27,28)
秋(11月27,28日)二回、品川の旧東海道筋にある臨済宗海雲寺で
催される”荒神さま”のお祭りもそうである。

”荒神さま”は江戸時代から続く庚申信仰で、海雲寺ではこの日、所
蔵の千躰荒神像を御開帳するが、これがいつしか火と水を守るかまど
(台所)を守る信仰となり、さらに商家の”かまど起こし”の縁起と
結びつき人気を集めるようになった。

わが家でも年に二回”荒神さま”に詣でるしきたりである。きのうも老
妻と一緒に”老人パス”でバスを乗り継いで詣でた。東京ではここだけ
にしか売っていない”お釜おこし”(300円)や最近あまり目にしなくな
った豆いたや生姜糖を買い、消えてゆく江戸庶民の味にをしのんだ。今
さらお釜をおこす気はないが、せめてお釜をつぶさないようおさい銭を
あげ、手をあわせた。