「老人タイムス」私説

昭和の一ケタ世代も高齢になりました。この世代が現在の世相をどう見て、考えているかーそのひとり言。

          台風とダム建設の選択

2009-10-09 05:04:37 | Weblog
この10年で最強クラスという台風が列島を縦断、各地に被害をもたらしたが、幸い
亡くなった方はほとんどなかった。東京の鉄筋住宅に引きこもっていた僕は、時々
強い風の音に驚かされたが、いつ台風が通過したのかもわからなかった。

首都圏は関西、九州、四国に比べて台風の襲来が昔から少ないが、まだ戦後まも
なく、台風が欧米の女性名で呼ばれていた占領下、二つの台風、キャサリン(昭和
22年)キティ(24年)が襲い、キャサリンでは1930人、キティでも165人の方が亡くな
っている。全国的にも昭和の前半は室戸(昭和9年)枕崎(20年)伊勢湾(34年)の3
大台風で大被害が出て、そのつど2000人から3500人もの犠牲者が出ている。谷崎
潤一郎の「細雪」に書かれている関西大水害(13年)でも六甲の土石流などで690人
が亡くなっている。

幸い平成の時代になってからは、こうした大規模な人的被害の台風は少なくなった。
これは一つには治山、治水といった土木工事の長足な進歩と国民の防災意識の向
上によるものだろう。機会があって、僕は六甲や鹿児島桜島の砂防施設を見学した
ことがあるが、自然災害の多いわが国では、やはり防災施設が不可欠なことを知った。

最近、日本ではダムで代表される土木(civil engineering)工事が税金のムダ使いの
代表格にされ、悪者視されている。しかし、本来、土木は”civil"のためのものである。
頭からダムを悪者にせず、防災上必要な工事まで凍結してはならない。