「老人タイムス」私説

昭和の一ケタ世代も高齢になりました。この世代が現在の世相をどう見て、考えているかーそのひとり言。

          東京は「新」のお盆の季節だが

2011-07-12 06:02:17 | Weblog
浅草にあるわが家の菩提寺からお盆の通知がきた。7月12,13の二日間本堂でお回向があり、小塔婆を差し上げますという葉書である。3月11日の大震災以来、被災したわけでもないのに、なんとはなく落ち着かない。でも季節はいつか移り変わり、東京では本格的な夏を告げるお盆の季節になっていた。

東京23区ではお盆は7月15日前後に行われる。明治維新のあと新政府は新暦を採用するに当たって、政府の膝元である東京では率先して新暦でお盆をすることを決めた。東京以外はほとんど昔どおり旧暦により8月15日前後に行われている。このため東京人は7月のお盆は「新」と呼び、8月のお盆は「旧」とか「月遅れ」のお盆と呼んでいる。

だが、ここ数十年来、東京ではお盆の行事が廃れて来ている。僕の記憶では戦前東京ではどこの家でも麻幹(オガラ)を買ってきてお盆の迎え火をたき、家の前にはナスやキュウリで作った”おしょろ様”(お精霊様)を飾った。そして仏壇にはお盆提灯を燈し、季節の果物やお菓子を飾って、ご先祖さまの霊を迎えたものだった。わが家でも昭和40年代、僕の二度にわたる地方転勤までは行ってきた。

昭和56年、長い地方の転勤から帰京すると、東京はあらゆる面で様変わりし、伝統行事がなくなってきていた。昔からの旧家でさえ、お盆がきても迎え火はたかないし、お盆提灯も飾らない。だいたいオガラを売っている店がない。僅かにお盆用の干菓子が売っているだけだ。これは時代の移り変わりなのだろうか。それとも東京だけの特異現象なのだろうかー。