「老人タイムス」私説

昭和の一ケタ世代も高齢になりました。この世代が現在の世相をどう見て、考えているかーそのひとり言。

        カダフィ政権の崩壊とナセリズムの終焉

2011-08-25 06:43:49 | Weblog
北アフリカのリビアのカダフィ長期独裁政権が反政府派軍の首都トリポリ進入で事実上崩壊したようである。今年初めチュニジアから始まった北アフリカ、中東のアラブ諸国の民衆による、いわゆる「ジャスミン革命」は42年間のカダフィ政権をも倒した。次は同じように反政府運動がくすぶり続けている、シリアとイエメンだともいわれているが、アラブ世界に何か地殻変動が起きているのだろうか。

僕は1956年(昭和31年)のスエズ戦争(第二次中東戦争)から1967年の"6日戦争”といわれれた第三次中東戦争までの10年間、新聞社で中東情勢のニュースを担当してきた。この時代は一口にいうと、ナセル・エジプト大統領が唱える"汎アラブ主義"(ナセリズム)がアラブ世界を吹きまくっていた時代であった。結局、失敗に終わったが、エジプト、シリア、イエメン三国による「アラブ連合共和国」(UAR)も一時誕生した。

リビアはその頃王国だったが、カダフィ少年は砂漠の中の宗教学校で、ナセル大統領の「革命の哲学」を読み、アラブの最終的な統合をめざすナセリズムに共鳴していたようだ。同じく今、反政府運動に揺さぶられている、バシャール・アサ大統領の父親のハーフィーズ・アサド大統領も「アラブ連合共和国」空軍の将校で、やはりアラブの統一を考えていたかもしれない。今年初めの「ジャスミン革命」で追放されたムバラク大統領もナセリズム・シンパの空軍将校であった。

カダフィ政権崩壊に拍車をかけたのは、西欧諸国の多国籍軍のリビアに対する軍事介入がある。国連安全保障委員会の決議に基づく介入だが、ドイツなど4か国の棄権はあったが圧倒的多数で軍事介入は許されている。安全保障委員会のメンバーには、アラブの国はレバノン一国だけである。多国籍軍の軍事介入に対して、アラブ諸国からの反対の声は出ていない。ナセリズム全盛の頃では、どうだっただろうか。ナセリズムはもうアラブ諸国では終焉してしまったようだ。