「老人タイムス」私説

昭和の一ケタ世代も高齢になりました。この世代が現在の世相をどう見て、考えているかーそのひとり言。

「下流老人」をどうすべきか

2015-06-26 05:50:55 | Weblog
最近出版された本の題名をとって「下流老人」という造語が流行っていると聞く。普通に生活できない貧困層の老人を指すらしい。今年3月厚労省から発表された全国の生活保護世帯調査によると、全世帯の48パーセント、78万8000世帯が65歳以上の高齢者世代というから、たしかに「下流老人」層が増えていることは事実だ。

しかし、「下流老人」は今に始まった事ではない。僕の記憶では、今のような社会福祉制度が曲がりなりにも出来るまでは「下流老人」の数はもっと多く「下流」の程度も低かったのではないだろうか。「養老院」という蔑視的な老人施設があり、本当に生活が困る極貧老人はここに収容されていた。昭和30年前後だったと思うが、板橋(東京)の養老院を取材したことがあったが、施設の畳敷きの大広間で、お年寄りたちが手内職をしていた。その”みじめさ”に同情した記憶がある。神奈川県戸塚の修道院経営の老朽の老人施設で火事があり、99人の犠牲者がでたのもこのころであった。

5月に川崎市で起きた簡易住宅の火災で多くの犠牲者が出たのは、まだ記憶に新しいが、川崎市のその後の調査によると、焼け出されたニ棟の住宅に居住していた74人のうち70人までが生活保護の受給者であったという。調べたわけではないが、多分この中には本来ならば、公共の老人施設に入居を希望している老人もいるかもしれない。

「下流老人」の著者は、このままで行くと日本の高齢者の9割が貧困に落ちてしまうと警告しているらしい。由々しいことだが、政府は高齢者問題を単に福祉の面だけで検討すのではなく、もっと総合的な面から考えるべきである。例えば、戦前は老人は同居の家族が面倒を見るのが当然であった。今は百歳のお年寄りに銀杯を贈るのでさえ、税金のムダという時代である。”核家族”の解消をどうすべきかという面も総合的に考えるべきである。