ひまわり先生のちいさな玉手箱

著書「ひまわり先生の幸せの貯金箱〜子どもたち生まれてきてくれてありがとう」

思いやりを育てる

2014年06月10日 | こころの子育て
いじめ、非行、犯罪を減らすにはどうしたら良いのでしょうか?

人の「心のブレーキ」を育てるには?

思いやりのある子に育てるにはどうしたら良いのでしょうか?

長崎県新上五島町で1月に自殺した町立奈良尾中3年生松竹君(当時15歳)が、
昨年の夏休みに学校の宿題でいじめをテーマにした作文を書いていたことが分かりました。

当時、松竹君は日常的に同級生からいじめを受けて悩んでいたことが分かっています。

作文では自分がいじめられていることには触れず、いじめが起きる仕組みなどについて書いていた。

記述内容は松竹君が学校内で置かれていた状況と重なり、学校や同級生への訴えと言えそうです。

作文は、人権を主題にして宿題として出されており、

松竹君は「空気」というタイトルで、
なぜいじめが起こるかや、
なくすためにはどうすればいいかなどを約2000字でつづっており、
悲しいことに松竹君の死後、学校から両親に返還されだそうです。

両親が同級生から聞いた証言などによると、
いじめは昨年の夏休み前の1学期から始まっていました。

数人のグループを中心に他の生徒も同調し
「陰口を本人に聞こえるように言うなど精神的に追い込んでいくいじめだった」
といいます。

松竹君は「自分は嫌われている」と悩み、2学期から無料通話アプリ「LINE」(ライン)で複数の同級生に自殺する考えを伝えるようになっていました。

松竹君は作文に
「いじめの原因は何かを伝えよう。それは『空気』だ。目に見えないものだから恐ろしい。いじめをしなければ自分がやられてしまうという空気……」
と書いています。

また
「『あの人嫌い。あなたもそうでしょ?』と言われたら『いいえ』と答える勇気があるだろうか」
と問いかけ
「もし、少しでも友達が嫌いな子に優しくすれば、そのことを責められ、今度は自分がいじめの対象になるのではないかという不安と恐怖にかられる。それの連鎖がおこるから、周りの人に合わせるといじめがおこる可能性がある」
と記していました。

松竹君は成績が良く、学校行事でもリーダー的な存在だったそうです。

ある同級生は
「目立つことをよく思わない生徒がいて、悪口を言われたと思う」
と語ったそうです。

1、2年時には別の生徒がいじめられ、3年になって松竹君が対象になっていたとか。

作文にも
「対象者は移り変わってもいじめは続く。人間というのは、自分より下の人間がいなければ不満をもつものだ」
と書かれていました。

作文の後半部分で、いじめの解決方法として
「みんなが親友になることだ」と記し「偏見やおくそくだけでその人の性格を決めつけるのはよくない。笑顔で話さなければ相手の性格はわからない。笑顔の大切さだけは忘れないでください」
と結んでいました。

父裕之さん(50)によると、松竹君は作文があまり好きではなく、
普段は両親に見せてアドバイスを求めていたが、この作文は見せなかったそうです。

学校から返還されて初めて作文の存在を知った裕之さんは
「息子が自らのことを書いている。遺書のように感じる」
と…。

イジメられた方は、何にも悪くない。

親の気持ちを考えると、辛すぎます。

こうしたイジメの抑止力になるであろう「心のブレーキ」の力や
共感力、思いやりのある子に育てるには、どうしたら良いのでしょうか?

「心のブレーキ」の原点には豊かな感受性、つまり「情緒」があり、
その形成には父親と母親が大きな役割を果たしているということです。

①親を尊敬する子どもに

○子どもが生まれたら、お父さん、お母さんがお互いの悪口を言わないようにしましょう。

○お互いの良い所を子どもの前で褒め合うようにしましょう。

○仲良くしましょう。
けんかは、子どもが寝てから。

もしくは、子どもを預けている間に
二人きりで外で話し合うというのも、良いですね。

このようにして、子どもにモデルである親を尊敬させてあげましょう。

②受容・共感

○子どもが辛い時に「悲しいね」
子どもが喜んでいる時に一緒に「嬉しいね」
などと子どもの気持ちに共感、
受容してあげましょう。


『異質な日本の若者たち 世界の中高生の思いやり意識』(ブレーン出版)の著者、
東洋大学の中里至正教授は、
長年にわたって中・高校生の非行抑制力、「心のブレーキ」についての国際比較研究を続けていらっしゃいます。

「心のブレーキ」の原点には豊かな感受性、つまり「情緒」があり、
その形成には父親と母親が大きな役割を果たしているということです。

以下、中里教授の解説から、抜粋させていただきます。
******************
1.心のブレーキとは

心のブレーキには2つの側面があります。
その1つは、何が良いことで、何が悪いことであるかという知識です。
これを「認知的側面」と呼んでいます。

他の1つは「情緒的側面」と呼ばれている側面です。
この側面は、いろいろな要因によって構成されています。
例えば、「思いやり意識」や「自制心」、
さらに「道徳意識」や「恥意識」、「
価値観」などがその構成要因として考えられています。

これら2つの側面の中でも重視しているのは「情緒的側面」です。

例えば、思いやり意識の低い子どもは、相手の心身の痛みへの感度が鈍いので非行の質が悪化します。

また自制心が弱い子は非行を多発します。

このように、事の善悪を子どもにいくら教え込んでも、それだけでは心のブレーキにはならないのです。

2.「情緒的側面」の重要性

心のブレーキの「情緒的側面」を構成している要因、
例えば「思いやり意識」や「自制心」などは、
すべてその原点に「情緒」が存在しています。

ここでいう「情緒」とは、より明確にいえば「共感性」のことです。

共感性とは、相手の「悲しみ」とか「喜び」の気持ちを、自分の気持ちのように感じとる感性です。

これは頭で理解するというようなものではありません。

例えば、ある子どもが困っている子どもを助けたとします。

この場合、本当に相手の気持ちになって助けてあげた場合と、
誰かに褒められたくて助けてあげた場合とでは意味が違います。

心のブレーキとして有効に作用するのは、共感性を伴った思いやり意識です。

もし子どもの側に、共感性を伴った本当の意味での思いやり意識があれば、
この子は相手の心を傷つけるような「いじめ」などはしないでしょう。

この意味で、学校などで多発している「いじめ」は、
「情緒的側面」の心のブレーキの脆弱化が原因になっているものと考えられます。

3.心のブレーキの形成

心のブレーキは、子どもが生まれた後に誰かに教えられて形成されます。

すでに述べたように、心のブレーキには「認知的側面」と、「情緒的側面」という2側面があります。

「認知的側面」の教育は比較的簡単です。
子どもに、やって良いことと、やってはいけないことを教え込めばよいのです。

この学習は、基本的に学校で習う算数とか国語と同じような学習です。

教えなければ子どもたちは、事の善悪の基準を覚えません。

この教育は、学校にも期待されますが、やはり第一当事者は親であると考えられます。

しかし、アメリカ、中国、韓国、トルコとの国際比較研究されている中里教授らの調査によれば、
日本の保護者が、
この大切なことを本当に子どもに教えているのかどうか、
疑問に思う結果が出て心配しているところだということです。

「認知的側面」と比べて、「情緒的側面」の教育は、その学習のプロセスが全く異なります。

前者の教育は普通の賞罰を中心とした学習ですが、後者の場合は「観察学習」によって成立します。

観察学習というのは、教えるというような学習ではなく、
誰かを「モデル」として自分で学ぶ、という種類の学習です。

この学習で重要な意味を持つことは、誰がモデルになるかということです。

一般的にいって、子どもがモデルとしているのは、一目置いている人、信頼できる人です。

とすれば、それは親、もしくはそれに準じる人と考えるのが自然だと思われます。

しかし、我が国の中・高校生は、他国の中・高校生と比べて、
自分の父親についても母親についても、あまり尊敬していないし、親のようになりたいとも思っていないという調査結果が出ています。

このことは、親が子どもたちのモデルになっていないということを示しております。

ここに我が国特有の困った問題がありますが、まだ望みはあります。

というのは、このことに気づいて幼児期から心の教育、つまり情緒教育に力を入れればよいからです。

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コメント (4)
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