Kinema DENBEY since January 1. 2007

☆=☆☆☆☆☆
◎=☆☆☆☆
◇=☆☆☆
△=☆☆
▽=☆

メッセージ・イン・ア・ボトル

2007年06月10日 15時36分32秒 | 洋画1999年

 ◇メッセージ・イン・ア・ボトル(1999年 アメリカ 131分)

 原題/Message in a Bottle

 監督/ルイス・マンドーキ 音楽/ガブリエル・ヤレド

 出演/ケビン・コスナー ロビン・ライト ポール・ニューマン ジョン・サヴェージ

 

 ◇ニコラス・スパークス『メッセージ・イン・ア・ボトル』より

 昔から、手紙を瓶につめて海に流すというのは、ロマンチックな行為の典型ってされてきたけど、それがそのまんま物語になってるのって、どれくらいあるんだろう?

 そういうことからいうと、使い古されて、ときにはパロディにしかならない世界を、ほんと、まるきりストレートに描いてるだけでも、もしかしたら希少価値のある映画かもしれない。

 ただまあ、父親に「新しい愛に生きろ」と後押しされたこともあって、亡き妻への新たな手紙をポケットに入れて船出したものの、嵐の中で救助を待つ女性を助けるのとひきかえに自分の命を落としてしまうという、なんの伏線もない唐突なとってつけたような幕引きは、如何にも泣かせの意図が見え見えで、ある意味ひきょうかもしれないけど、こういう運命のいたずらのような悲恋に涙しちゃう女の人は少なくないんだろな~。

 ま、晩年のポール・ニューマンが妙に縮んだ印象はあるものの、渋い演技で良だったんで、さしひき0にしましょ。

 でも、新聞記者のロビン・ライトが「赤ワインで良かった?」といっては、いかんね。

 赤ワインでも良いかしら?、でしょ。

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蝶の舌

2007年06月05日 01時13分34秒 | 洋画1999年

 ☆蝶の舌(1999年 スペイン 99分)

 スペイン題/La lengua de las mariposas

 ガリシア題/A lingua das bolboretas

 監督/ホセ・ルイス・クエルダ 音楽/アレハンドロ・アメナーバル

 出演/マヌエル・ロサノ フェルナンド・フェルナン・ゴメス ウシア・ブランコ

 

 ☆マヌエル・リバス『?Que me queres, amor?』

 1936年、スペイン・ガリシア地方

 ティロノリンコっていうのは、オーストリア原産の鳥のことだ。

 こういう珍しい鳥の話をしてくれたり、蝶の舌について優しく教えてくれたりするだけじゃなく、実際に子供たちと山へ入って蝶を採ってくれる先生っていただろうか?

 子供たちが大好きになって、勉強することの愉しさを教えてくれた先生は、ぼくの小学校時代にいったい何人いたんだろう?

 数人の先生の顔は浮かんでくるんだけど、なかなかいない。

 もともと、ぼくは先生に殴られこそすれ、頭を撫でてもらったことは一度もないし、褒められたっていう記憶もほとんどない。70年安保の尻尾をひきずったガキンチョだったぼくにとって、思想だの主義だのとかいったことはなんにもわからないくせに、学校とか教師とかいうのは、はなから敵視するき存在だった。

 まったく困ったもので、この映画に出てくるような和気藹々とした生徒と教師のような思い出はない。

 いや、ほんと、まとまりの好い挿話だった。

 戦争と子供というのは、常に変わらぬ静かな感動を与え、同時に明確な主張を託す。そういうことからいうと、大好きだった『抵抗の詩』を彷彿とさせた。

 フランコに反対する共和派の老教師を、どちらかといえば無思想に近い自然派の存在としている所が、好い。ここで、いたずらに共和政治をめざしている闘士のようなところを見せると、それだけで「あ~」と、おもわずひいちゃうかもしれないもん。

「ティロノリンコ、蝶の舌」

 と、マヌエル・ロサノがフェルナンド・フェルナン・ゴメスに叫ぶところは、たぶん、映画史の中でも名場面のひとつに数えられるんじゃないかとおもうんだけど、あんまり語られないんだよな~。

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アンジェラの灰

2007年05月01日 13時14分58秒 | 洋画1999年

 △アンジェラの灰(1999年 アメリカ、アイルランド 145分)

 原題 Angela's Ashes

 監督・出演/アラン・パーカー 音楽/ジョン・ウィリアムス

 出演/ロバート・カーライル エミリー・ワトソン キアラン・オーウェンズ

 

 △フランク・マコート『アンジェラの灰』より

 1930年代のアイルランド、リムリック。

 世界恐慌の時代。世界中はどこもかしこも貧しかった。

 とくにアイルランドは19世紀の半ばにジャガイモ飢饉を経験して、200万人もの人間がアメリカに移民しちゃったりして、とにかく人口そのものが少ない。これに加えて、湿気と寒気がものすごく、日照時間も短い。どん底のような貧乏状態に、この環境は相当な追い打ちになる。

 そんな暮らしを強いられたのが、原作者フランク・マコートの家族だ。

 ただね~、実話が元になっているとはいえ、ぼくは観ていられなかった。

 だって、かわいそすぎるんだもん。

 米国移住の前夜までが、あまりにも暗くて辛すぎる。父親は夢ばかり追いかけて、まともに働かず、アル中になってる。双子の子供が貧乏で死んだときですら、その棺桶を台に酒を飲む。

 プライドだけは高いから、道に落ちてる石炭なんか拾わない。けど、子供たちはそれをせっせと拾い、拾うんだけど、袋が破けてまた道に落とす。いたたまれない惨めさだ。母親が気丈で、しっかり家庭を支えようとするから、余計に辛い。

 もう、どうしようもない世界で、悲しくてやりきれない。

 アラン・パーカーはときどきこういう出口のない世界を映像にする。その才能と表現力と演出力はほんとうに見事だとおもうんだけど、この作品ばかりは、ぼくには辛すぎた。

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ノイズ

2007年02月20日 13時49分21秒 | 洋画1999年

 ◇ノイズ(1999年 アメリカ 109分)

 原題/Astraunotes' Wife

 監督・脚本/ランド・ラヴィッチ 音楽/ジョージ・S・クリントン

 出演/シャーリーズ・セロン ジョニー・デップ ニック・カサヴェテス ジョー・モートン

 

 ◇カサベテス父子の執念?

 SFのひとつの定番といったらそれまでなんだけど、異星人に寄生された宇宙飛行士が帰還してくる、あるいは、宇宙飛行士に化けた異星人が帰還してくる、といったあらすじは決して真新しいものでもないし、どうやら、もとになっている映画は『原始人間』らしい。

 けど、これは単なる異星人がなんらかの形で地球にやってくるのが目的ではなくて、地球の女を妊娠させて地球人と異星人の混血を生み出すのが目的なわけだから、どんな映画に似ているのか、あるいはモチーフにしたのかということでいえば『ローズマリーの赤ちゃん』しかない。

 けど、ポランスキーが知らなかったらびっくりするだろうし、そういう事態も想定した上で、もとになっているのが『原始人間』だっていってるのかもしれないね。とはいえ、実際、この映画で最初に死ぬ宇宙飛行士ニック・カサヴェテスは『ローズマリーの赤ちゃん』でミア・ファローの夫を演じたジョン・カサヴェテスで、そういうところからすれば、父と子による執念の映像化みたいな感じもしないことはない。

 ジョンは、ミアを妊娠させて悪魔の子だとおもわれる赤ちゃんを産ませるけど、ニックは、セロンに双子の子を孕ませて、立派に育ってゆくラストに向かう。ていうより、セロンの髪型、まさしくミア・ファローですから。宇宙との交信にラジオのノイズを利用してるってのが、まあ、元ネタの時代を髣髴させるだけで、これは明らかにポランスキーへのオマージュでしょう。

 ただ、そんな重箱の隅をつついてなくても、シャーリーズ・セロンは文句なしに美しいし、その美しい顔が恐怖に歪むのを観てるだけでも幸せだわとおもうしかないよね。

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将軍の娘 エリザベス・キャンベル

2007年01月30日 12時53分31秒 | 洋画1999年

 ◇将軍の娘 エリザベス・キャンベル(1999年 アメリカ 117分)

 原題/The General's Daughter

 監督/サイモン・ウェスト 音楽/カーター・バーウェル

 出演/ジョン・トラボルタ マデリーン・ストウ レスリー・ステファンソン ジェームズ・ウッズ

 

 ◇ちょいと強引な動機

 将軍の娘にして美しく有能な女性士官が、まっぱだかに剥かれて地面に磔にされたまま殺害されているのが発見される、というのは、たしかに、かなりセンセーショナルな出だしだ。

 くわえて、品行方正で通っていた彼女が捜査途中で発見されてゆくVTRなどから、秘密の地下室やSM趣味に走っていた事実が暴かれてゆくってのもまた、中々猟奇的でぞくぞくする。

 ところが、この晒し物になっていた娘の過去が暴かれるにしたがい、彼女がいかに軍隊内における男女雇用均等法の犠牲になり、脅され、殴られ、甚振られ、乱暴され、暴行され、強姦されていたかが知れ、さらには、過去にレイプされた事実が、父親の栄職のために隠蔽されていたって話になり、愛し、かつ尊敬していた父親に対する強烈な反抗と主張が語られてくると、ちょっと肩透かしを食らった感じになる。

 レスリー・ステファンソンはがいうことなしに綺麗な分、一気に好奇心の昂揚が下がってくるんだ。

 これは、たぶん、ぼくが下世話な人間だからかもしれない。

 ま、主役の扱いが蚊帳の外になっているのが、ちょいと不満ではあるけど、これは探偵の宿命みたいなものかもしれないね。ただ、これって、なにも軍隊に限ったことじゃない。一流の企業でも、有名な進学校でも、ともかく名の知れた、プライドの高そうな集合体であれば、共通した動機になる。

 人間の持っているプライドってやつは困ったもんで、そんなものは粉々にしてしまえば楽なんだろうけど、それができないのが人間なんだよねっていうのが、主題なんだろか?

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