◇札幌オリンピック(1972)
最初のカット、頭上からジャンプがフレーム・インしてきたときは、びっくりした。けど、佐藤勝の音楽はやけに明るくてイメージがきつすぎた。
笠谷幸生とジャネット・リンは懐かしかった。でも、これって当時を懐かしむ人間だけの愉しみなんだろうなあ。氷の上をエッジが擦っていく音がやけに耳に残るのは、どういうことだろう。エッジはスケートだけじゃなく、スキーもそうで、無音の中に効果音のようにぎしゅぎしゅ入ってくるのはちょっと疲れた。
篠田正浩の興味はどうやら選手よりも会場の整備員や報道班員といった裏方にあるようで、選手たちの買い物やファッションまで執拗に追いかけている。札幌の歴史もクラークまで遡って語られたりと、監督の興味が延々と撮されるのはどのドキュメントもおなじだが、詩歌の朗読めいたナレーションはちょっとあざとい。陶酔度が高いというのか、酩度が高いというのか。その中でも、岸田今日子の朗読する「ああ、オリンピック」がなんともしつこい。オリンピックの映画を観たいという人たちはその競技について観たいわけで、なにも裏方や選手の日常風景を観ていたいわけではないんじゃないかっておもうんだけどね。