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☆=☆☆☆☆☆
◎=☆☆☆☆
◇=☆☆☆
△=☆☆
▽=☆

太秦ライムライト

2015年10月16日 21時17分37秒 | 邦画2014年

 ◇太秦ライムライト(2014年 日本 104分)

 監督 落合賢

 

 ◇5万回斬られた男

 ふとおもったんだけど、ハリウッドとかいくと5万回撃たれた男とかいるのかな?

 太秦のことはよくわからないんだけど、観てるかぎりではやっぱり制作センターに翌日の香盤が張られ、それで大部屋の人達は予定を確認する仕組みになってるみたいなんだけど、撮影所が往年のように慌ただしく機能してればいいんだけどね。ただ、この福本清三さんのように斬られ役といういってみれば特殊技能を習得した役者さんはまだいいとしても、現代劇の大部屋さんともなるとかなりきついんだろうなあ。

 とはいえどこの撮影所ももう大部屋さんはいないし、大泉の演技課に出入りしている人達はどうしているんだろう?

 まあそんなことはさておき、観てておもったのはせっかく福本清三主演なんだからもっとドキュメントっぽくすればよかったんじゃないかったことだ。なんか陳腐な筋立てで、これじゃ往年の劇映画となんら変わらないじゃんって気がした。

 時代劇はあいかわらず時代劇だし、たしかに東映剣会の人達の殺陣はそれはそれでおいそれと真似のできるものじゃないんだけど、でもね、これから先の時代劇を考えたり、主役をなかなか張らせてもらえない役者さんたちのことを考えたりすると、もうすこしなんとかならないのかなって気にもなる。といっても、すごい映画ができたり、満足のゆく作品ができたりすることとは、ちがうんだけどね。

 でも、なんにしても福本清三さん、よくここまで頑張ってきたよね。拍手だ。

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さかなかみ

2015年09月11日 02時33分53秒 | 邦画2014年

 △さかなかみ (2014年 日本 100分)

 監督・脚本 浜野安宏

 

 △さかなかみとはイトウのことらしい

 それも1メートルを超える大物をいうのだそうな。

 浜野安宏という人はほんとにいろいろなことをしている人で、ちょっと素人からすると得体の知れない人なものだから、この監督脚本主演の三役をすべてこなしているところを見ると、ドキュメンタリーなのかなとおもいきや、どうやらこれは物語なのだなということが途中からわかってくる。

 まあ、実際、白狼という名前の人物が主役なんだから物語にはちがいないんだけど、白狼の経歴とやっていること、すなわち、ファッション、ライフスタイル、商業都市などのプロデューサーにして、フライフィッシング界の大物釣り師であり、かつまた北海道の河川湖沼の保護活動やアイヌの原住民優先権を守る活動家とかってなってくれば、これはもう、浜野安宏以外の誰でもなくなってきちゃう。

 そりゃまあ、それなりの筋立てはあるし、多分に自己陶酔的な印象はあるものの、脇役の若造も出てきたりして、60㎝のイトウに挑んで後、やがて「さかなかみ」に挑んでいくっていうんだから、これはおそらくドキュメンタリーの皮を被った物語なのだろう。

 いや、物語の皮をかぶったドキュメンタリーという方がいいのかな。

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地球防衛未亡人

2014年12月01日 21時22分22秒 | 邦画2014年

 △地球防衛未亡人(2014年 日本 84分)

 監督 河崎実

 出演 壇蜜、森次晃司、大野未来、堀内正美、モト冬樹、福本ヒデ、湯川舞、ペルビー貴子、森田亜紀

 

 △特撮とボク、その65

 ダンミツの所属している地球防衛軍の長官がかつてのモロボシダンというだけのおもしろさしかない。

 ぼくにとっては、だ。

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スイートプールサイド

2014年11月16日 15時38分50秒 | 邦画2014年

 ◇スイートプールサイド(2014年 日本 103分)

 staff 原作/押見修造『スイートプールサイド』 監督・脚本/松居大悟 撮影/塩谷大樹 美術/塚本周作 衣装/眞鍋和子 特殊メイク/江川悦子 音楽/HAKASE-SUN 主題歌/モーモールルギャバン『LoVe SHouT!』

 cast 須賀健太 刈谷友衣子 落合モトキ 荒井萌 谷村美月 木下隆行 利重剛 松田翔太

 

 ◇これをフェチといわざるべきか

 そもそも思春期に、制服、ブルマ、スクール水着、太腿、パンスト、下着、乳房、髪、指先、体毛、そして性器などに執着するのは決して偏愛とはいいきれない面もあり、どちらかといえば健康的な男子の指向といってもいい。たとえば、戦時、出征する兵士たちは許嫁や恋人の陰毛を後生大事に手帳にはさみ、いついかなるときも肌身離さず戦い続けた。これがフェチにあたるのかどうか。ただ、女性の身代わりとなるようなものはすなわち物神であり、物神を崇拝することをしてフェチズムのひとつと考えられているから、人間はそもそも偏愛的かつ偏執的な知的生命体ということになるのだろう。

 で、毛である。

 体毛の濃さに悩んでいる女子高生と、体毛の薄さに悩んでいる男子高校生の物語とはまったくよくおもいついたもので、この発想はなるほどたいしたものだ。しかも、その女子高生が見事なまでに不器用かつ天然で、純粋無垢のおぼこ娘であり、ひるがえって男子高校生が陰毛がいつまでも生えてこないことに悩み悶えているほかは女子好きのするちょっぴりぷっくりしたつやつや肌をもった年の割には純情奥手とくれば、当然、美しい青春の展開が期待できるというものだ。

 これが、百戦錬磨のふたりだったら、というより、処女でも童貞でもない、ひねくれた存在つまり大人というどうしようもない生き物になりさがってしまったら、単なる変態物語にしかならないだろう。つまりは、きわめてすれすれの実にきわどいところでこの青春映画は成り立っているのである。

 毛の濃さに悩んでいる女子高生は、単に「毛を剃るのがうまいかもしれないし真面目だから口も堅そうだ」という、異性としてまるで意識していない男子高校生に「わたしの毛を剃ってくれない?」と頼む。これが青春のパンドラの匣を開けてしまうわけだけれども、女子高生にほとんど罪の意識はなく、単に恥ずかしいというだけの気持ちがあるのに対し、男子高校生の方はもうどうしようもないくらい妄想的性生活のまっただなかにいるだけでなく「この子すげー可愛いじゃん」ていうふしだらの塊みたいな気持ちを抱えているから、この温度差はもう破壊的ですらある。それが、ぼくらにはわかっているから、この映画はぎりぎりのところでおもしろいのだ。

「毛を剃ってくれない?」

 といわれたら、ふつう、陰毛を想像する。それは、ぼくたちが助平なおとなになってしまっているからで、天然ボケの女の子とおぼこ娘はどこの手かわからないし、毛が濃くて悩んでいるとか聞いたら「あ、腕か脚ね」と考えがちだ。この差が、徐々に興奮度をあげていくわけで、それが「腋毛」となったとき、ちいさなピークに達する。

 そう、腋毛。

 腋というのは、股に匹敵するほど魅惑的なものであることはうたがいなく、腋フェチは立派なフェチのひとつと考えられるし、腕や脚の毛を剃ってあげるくらいまだまだ興奮度は低いが腋を剃ってほしいといわれた途端、男子高校生の興奮はいっきょに沸点ちかくまで昇り詰めるだろう。実際、毛が生えている腋を覗き込んだときの須賀健太はそうだった。

 結局、かれの興奮が爆裂したときには「お願いだからあそこの毛を剃らせてくれっ」と土下座することになるし、いろいろあって感情をおさえきれなくなった刈谷友衣子もまたやけのやんぱち売り言葉に買い言葉となって「じゃあ、剃らせてあげるわよっ」と叫んだときに、ふたりの関係は爆裂し、プールに落ちていくことになる。こういうところ、たしかに大仰ではあるんだけど、青春ドラマの照れ臭くもついつい見ちゃう王道的な展開だろう。

 ただ『アフロ田中』のような、どはずれてくだらない物語ほどに突き抜けたものが感じられなかったのは、どういうことだろう。やはり、主人公はあまりにも好い子すぎたのだろうか。まあ、こういう映画はいろんな分析するのも愚かだし、楽しめたんだからそれでいいか。

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白ゆき姫殺人事件

2014年10月07日 11時45分39秒 | 邦画2014年

 ◎白ゆき姫殺人事件(2014年 日本 126分)

 staff 原作/湊かなえ『白ゆき姫殺人事件』 監督/中村義洋

    脚本/林民夫 撮影/小林元 美術/西村貴志

    音楽/安川午朗 劇中曲/芹沢ブラザーズ『All alone in the world』

 cast 井上真央 綾野剛 蓮佛美沙子 菜々緒 貫地谷しほり 谷村美月 生瀬勝久 染谷将太

 

 ◎赤毛のアンの現代信州版?

 いやまあ、ぼくだってろくな人間じゃないし、けっこう好き勝手なこといってるから、他人のことはあれこれといえない。だから、井上真央の演じる主役のOLのように、周りから勘違いされやすく内向的な女の子がいて、しかも殺人事件の重要参考人になりかけてたりすれば、悪意があろうとなかろうとそれが縁もゆかりもない人間であれば、blogやTwitterに載せないまでも知り合いと話をしたとき話題にして「あの女、とんでもないな。ああいうじめっとした陰気な奴って人殺すんだよ、たいがい」とかなんとか、なんの根拠もない、ものすごく好い加減なことを口走っちゃうだろう。

 でも実は、単に内向的で人付き合いが苦手でついつい疎外されちゃう性向の人間は、めったに人は殺さない。

 人を殺す動機になるのは、劣等感であることが少なくない。あいつよりも勉強ができない、仕事がまずい、財産がない、異性にもてないとかいった、たいがい、自分の努力のなさを棚に上げて、ひがみの対象になってる人間を殺す。

 ところが、この真央ちゃんの場合、劣等感はどこまであったんだろね。

 自分の惨めさはときおり感じてるかもしれないんだけど、この子は他人を恨むよりも自分のふがいなさを悲しむ性質で、他人に対して暴力的な態度が取れないから苦しんでいるわけだから、とてもではないけれど、人は殺せないはずだ。なのに、誰にも庇われることなく、一方的に追い込まれてゆく。この否応なく追い込まれてゆく過程は、犯人の策略や悪意ばかりではなく、きわめて現代的な、一億総似非批評家による追い込まれ方なんだろね。

 タイトルが浮かび上がってくるtweetの画面は凝ってて、いかにも現代の映画の冒頭で、なるほど、こういう展開の仕方っていうか導入もあるんだねって感じなんだけど、どうしても、サスペンス作品の性質上、物語が進むに従って視点がいくつかに分散しなければならないから、感情的にぐぐっと入り込めないのかもしれないね。

 ただまあ、真央ちゃんをはじめ皆さん結構がんばってたし、綾野剛のどうしようもなくありがちなチンピラ業界人ぶりが妙にリアルだったし、ワイドショーのVTRもよくできてたし、物語の構成っていうか脚本がしっかりできてた。けど、真央ちゃんが芹澤兄弟を突き落としちゃう件りは、もうちょっとなんとかならなかったかなって気もしないではない。むろん、ないものねだりだ。それほど上手に、作られてた。そうおもっていいんじゃないかしら。

 いや実際、ぼくたちは、なんとも頭の悪い犯人の「自分のしてきた小さな悪戯まじりの盗みが会社に知られたら困るから」という、どうしようもなく中途半端で自分勝手で社会性の乏しい子供じみた動機を「ほんと、今の連中はこんなもんだよ」と感じるし、ネットの抱えている極めて物見高く無責任な発信について「まじに困ったもんだとはおもうんだけど、こればかりはもう止められないんだよな~」ともおもうしかないんだよね。

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愛の渦

2014年04月07日 02時07分47秒 | 邦画2014年

 ▽愛の渦(2014年 日本)

 リアリズムってのはなんだろうと観ていておもった。

 キューブリックの『アイズワイドシャット』は、

 おなじように乱交パーティを扱ってるんだけど、

 そこには、

 リアリズムを超えたキューブリックの世界観が見事に描かれてた。

 映画ってのは、たぶん、監督の世界観を如何にして映像化するかっていう代物で、

 物語世界においてリアリティがあれば、それだけで観客は納得する。

 もちろん、そこには演出する監督のちからが大きく介在するんだけど、

 キューブリックが乱交パーティを経験していたかどうかはわからないものの、

 映画で描かれていた仮面乱交パーティは、それなりの説得力があった。

 そうでなければ、

 実際の乱交パーティを淡々と撮影していればいいわけで、

 発情しているのかどうかわからないようなテンションの低い性欲ほど、

 乱交パーティに不向きなものはない。

 いいかえれば、理屈を吐いていられる乱交パーティは興醒めの対象でしかない。

 キューブリックはそういうところをどうおもっていたのかわからないけど、

 余計な台詞のやりとりがない分、

 人間が根源的にもっている「やりたい心」と「好奇心」とがないまぜになってて、

 トム・クルーズの行動原理が手に取るようによくわかった。

 つまり『アイズワイドシャット』において、

 そこに描かれている乱交パーティが、

 実際と懸け離れているかどうか、

 あるいはこういう世界が真実あるのだといいきれるかどうか、

 なんてことは、もはや、関係ないところにまで到達してるんだよね。

 おそらく、リアリズムっていうのは、そういうものなんだろう。

 で、この映画なんだけど、

 書くの疲れたから、まあ、こんなところで。

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