◎夏の妹(1972年 日本 96分)
監督・脚本 大島渚
出演 栗田ひろみ、石橋正次、りりィ、小山明子、殿山泰司、佐藤慶、小松方正、戸浦六宏
◎昭和47年(1972)5月15日、沖縄返還
その昔、小松方正は学生運動で投獄された佐藤慶の好きだった小山明子を犯し、それを知った佐藤慶は出獄後にその好きだった小山明子をまた犯し、今はあれこれあって沖縄で近くに暮らし、三人で酒を酌み交わすという異常さ。また、戦時中の沖縄でいろいろな不条理を目撃した殿山泰司は誰かに殺されたいと希望し、いろいろな不条理を体験したことで憎悪の塊と化している照屋林徳こと戸浦六宏は誰かを殺したいと渇望している者同士が釣り船で沖へ出て殺されたい側を殺したい側を海へ突き落とすことになる不条理さ。父親つまり小松方正の後妻になろうとしているピアノ教師りりィを、娘つまり栗田ひろみの生き別れになって沖縄に暮らしている小山明子の息子石橋正次がやはり犯すという近親相姦にもにた相関図。
いやまあ、アイドル映画とはおもえないめちゃくちゃさ。
くわえて、殺されに来たんだという殿山泰司は「そうか、沖縄だから女の子ひとりじゃな」と納得する状況の沖縄。え?そんなに当時の沖縄って危険だったのか。てか、おい、麦酒呑んでるけど栗田ひろみ何歳だよ。昼間っから生ビールだけじゃなくて缶ビールまで呑むかい?そんなことより、ゴザの女性の25人に1人が売春していたという話とかしていいわけ?という作品世界。
そんなくそったれな世界がまぶしい光にあふれた沖縄に展開するんだけど、目のやり場に困って仕方のない超ミニの栗田ひろみの健康的すぎる腿と、舌っ足らずなことこの上ない台詞まわしと、あまりにも素人じみてて無邪気で頭の悪そうな表情の作り方が最後まで気になるものの、当時ぼくたちの憧れの青春スターだった石橋正次のいかにも当時を匂わせるワルぶった可愛いワルに救われる気分だ。