Kinema DENBEY since January 1. 2007

☆=☆☆☆☆☆
◎=☆☆☆☆
◇=☆☆☆
△=☆☆
▽=☆

クラム

2007年06月02日 00時37分12秒 | 洋画1994年

 ◇クラム(1994年 アメリカ 120分)

 原題/CRUMB

 監督/テリー・ツワイゴフ 音楽/デヴィッド・ボーディンゴース

 出演/ロバート・クラム アリン・コミンスキー チャールズ・クラム

 

 ◇フリッツ・ザ・キャットは葬られた

 この、1943年8月30日にペンシルベニア州フィラデルフィアに生まれた、60年代カウンター・カルチャー運動の寵児にして、アンダーグラウンド漫画家ロバート・クラムの名前は知らなくても、かれの生み出した猫の名前を知ってる人はたぶんいるだろう。

 フリッツ・ザ・キャットだ。

 セックスと麻薬と暴力のはびこる60年代のアメリカで、皮肉なジョークと大胆なセックスでもって世相を語る猫の話だ。

「ああ、あれね~」

 という人は、たぶん、団塊の世代だろう。

 で、その世代の代表的な監督がデビッド・リンチなんだけど、どうやら、この16ミリ映画の試写のとき、リンチがやってきて激賞したらしい。だけど、とてもヒットしないだろうとおもったのか、自分の名前を製作陣に加えてくれれば、ちょっとは宣伝効果もあるんじゃないかってな申し出をしたもんで、クレジットされてるらしいんだけど、もともと、リンチはクラムが好きだったんだろうか?

 映画そのものは可もなく不可もなくって感じだったけど、まあ、アンダーグラウンド・カルチャーの世界は、いかにもリンチの好きそうな世界ではあるんだけどね。

 にしても、相手の女性達がセックスの内容や性癖まで語るのは凄い。

「バックが好きなのよ」

 とかね。

 でも、もともとクラムが、前衛的かつ急進的な芸術家であることは誰もが認めるところで、クラムの寂寞としたピアノの爪弾きは、かなり印象的だった。クラムの人間像もそうなんだけど、家族もまた奇妙だ。芸術と狂気が身近にあると、人生も性格も奇妙になっちゃうんだろか?

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依頼人

2007年05月23日 01時21分01秒 | 洋画1994年

 ◇依頼人(1994年 アメリカ 119分)

 原題/The Client

 監督/ジョエル・シュマッカー 音楽/ハワード・ショア

 出演/スーザン・サランドン トミー・リー・ジョーンズ メアリー・ルイーズ・パーカー

 

 ◇ジョン・グリシャム『The Client』より

 家族の喪失と復活の物語。

 ちょっと期待しすぎたもしれない。だって、発想が魅力的だったんだもん。

 父親のDVによって母親と弟と隠れるように暮らしてる少年が、上院議員殺害の真相を知る弁護士の自殺を目撃したことから話は始まる。

 弁護士はマフィアが殺した議員の遺体のありかを知ってて、それを少年が弁護士が自殺する直前に聞いてしまったことからマフィアに命を狙われる羽目になるんだけど、身の安全をはかるために1ドルで弁護士スーザン・サランドンを雇い、最初はサランドンと張り合う敏腕検事トミー・リー・ジョーンズも手を貸して、事件の鍵を握る死体を捜しに行くという筋立てなんだけど、前半の尋常でない面白さが後半で失速し始める。

 たしかに証人保護プログラムを適用されて旅立ちを迎えるラストは好いけど、それまでのすったもんだがじれったい。

 少年が1ドルで弁護士を雇う、という発想が最初にあったことはわかる。それと同時に、アメリカの抱えてる家庭内暴力と夫の裏切りによる離婚など、つまり、家庭の崩壊が描かれてることもよくわかる。さらには、崩壊した家族の一員、つまり少年と弁護士が、疑似母子のようになり、検事という疑似父親が登場することで、まぼろしのような家族の成立と結束と行動が語られていこうとしているのも、うん、よくわかる。

 それだけに、後半の失速が惜しい気がするんだよな~。

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あなたに降る夢

2007年02月17日 13時41分58秒 | 洋画1994年

 ◇あなたに降る夢(1994年 アメリカ 101分)

 原題/It Could Happen to You

 監督/アンドリュー・バーグマン 音楽/カーター・バーウェル

 出演/ニコラス・ケイジ ブリジット・フォンダ ロージー・ペレズ アイザック・ヘイズ

 

 ◇大人の御伽噺

 宝くじが当たったら、どうなるんだろう?

 当たりたいなら買うしかないんだけど、ぼくは、これまで宝くじというものをほとんど買ったことがない。

 ただ「当たったらこんなふうに使うんだろな~」とかいう皮算用はちょっとだけある。でも、コーヒーショップでチップがなかったからって「この宝くじが当たってたら、半分、チップであげるよ」なんて口から出まかせみたいなことをいって、ほんとに当たっちゃったら、どうするだろう?

 半分は、とても上げられないよ。だって、この映画での金額は400万ドルなんだもん。けどまあ、それを上げちゃうから映画になるわけで、それで、これまでうわべしか見えていなかった人の真実が見えてくるって話は、いやまあ、いかにも昔風の作りのお話なんだけど、こういう予定調和な映画も、たまにはいいものだ。

 ただ、これってアメリカだから似合う話なのかもしれないね。

 陽気で優しくて正直で、どこまでも善行を信じてる国民性は、ある時代、ある一部のアメリカ人にはまぎれもなくあったのかもしれない。ていうか、もしかしたら、いまだにこういう人々は、あの国にいるのかも。

 だから、すんなり受け取れちゃうのかな?

 麻薬と拳銃と暴力と戦争と暴行と裁判と離婚と利権と差別と貧困の坩堝っていう側面を持ちながら、それでも、こういう映画をさらりと撮ってしまえるってのは、なんとも不思議な国だ。

 なんで、こういう物語を上手に展開させられるんだろ?

 おもいきり嘘っぽい話を愉しませるコツを心得てるっていうか、もしかしたら、マニュアルがあるのかな?

 ともおもうんだけど、たぶん、そのマニュアルは、これまでに数万本と作られてきた過去の作品なんだろね。

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ディスクロージャー

2007年01月23日 12時36分06秒 | 洋画1994年

 ◇ディスクロージャー(1994年 アメリカ 128分)

 原題/Disclosure

 監督/バリー・レヴィンソン 音楽/エンニオ・モリコーネ

 出演/マイケル・ダグラス デミ・ムーア ドナルド・サザーランド キャロライン・グッドール

 

 ◇キワモノのふたり

 映画というのは、その2時間ほどの映像の中で、いつまでも網膜に焼き付いて離れないワンカットがあればいい。

 この映画もそういう映画のひとつだ。いわずとしれたマイケル・ダグラスの膝の上にデミ・ムーアがまたがり、タイトスカートをたくしあげて、コトにおよぼうと誘いかけるカットだ。ふたりは、ふたりともキワモノ役者だけど、こういう、いかがわしくも妙にセクシーな役者が欧米にはいるんだよね。

 いや、まったく羨ましい。

 ちなみに、その場面はポスターにもなってたから余計に覚えてるんだけど、そうじゃなくても、上司がかつての愛人だった部下に逆セクハラを仕掛けるっていう、なんとも現代的な発想のこの映画は、見る前からどきどきした。

 マイケル・ダグラスの作品は、どうもいつも暴力的な社会派サスペンスで、いかにもアクの強い彼らしい内容に仕上がってくるんだけど、これも、そうだ。ハリウッドの男優はセックスアピールがなくちゃ話にならない。もちろん、マイケル・ダグラスはありありで、こういう野郎が逆セクハラを仕掛けられるから、物語になるんだろね。

 へ~っておもったのは、原作者のマイケル・クライトンも製作になってることだ。原作を書くだけで飽き足りなくなって製作にも手を伸ばしたのかな?あ、そうそう。モリコーネの音楽、主張せずに不気味さを保っているのが好いね。

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