◇ジョン・レノン,ニューヨーク(2010年 アメリカ 115分)
原題 LennonNYC
staff 監督・脚本/マイケル・エプスタイン
製作総指揮/スーザン・レイシー、スタンリー・F・バックタール、マイケル・コール
製作/マイケル・エプスタイン、スーザン・レイシー、ジェシカ・レヴィン
撮影/マイケル・チン 編集/エド・バーテスキ、デボラ・ペレッツ
cast ジョン・レノン、オノ・ヨーコ、エルトン・ジョン
◇1971年9月~1980年12月8日
その9年間というニューヨークを中心にした日々は、
さまざまな映像や音が残されているため、
ぼくたちは、
その場その場でのジョン・レノンの行動や発言を追いかけることができる。
もちろん、ぼくはジョン・レノンについてまったくといっていいほど知らないし、
ましてや、オノ・ヨーコについても同様だ。
だから、ふたりの間にどんな亀裂が走り、どんな感情の果てに新たな絆が結ばれたのかも、
ぼくにはわからない。
映像を見るかぎり、
ジョン・レノンは失われた週末の時代も結局はオノ・ヨーコの掌の上にいたのかしら?
っていうような印象をちょっとだけ受けるけれども、
そんなことは、ふたりにしかわからない。
この作品は『PEACE BED アメリカ vs ジョン・レノン』のような明確さはなくて、
アメリカっていう国家や1970年代っていう時代を真っ向から見つめ、
そして戦った記録めいたものというのではなく、
もう少し微妙な、ジョン・レノンとオノ・ヨーコ、そしてふたりをとりまく人々の、
その時代における心の葛藤と遍歴をつぶさに追いかけたもので、
あまり政治的な臭さはないし、かといってジョン・レノン讃歌にもなってない。
きわめて淡々と残された映像の整理がなされたんだな~っていうのが素朴な印象だ。
それにしても、ときどきおもうことがある。
どうしてぼくは音楽がわからないまま大人になっちゃったんだろうと。
今もって、ジョン・レノンの曲だったらすべて知ってるとか豪語できないし、
そんな人間がこのドキュメンタリーを観たところで、
ジョン・レノンをよく理解している人からすれば、
おまえなんかにはわからないんだよと冷笑されるのがオチなんだろうけど、
でもまあ、ひとりの音楽家の生きた時代の息吹みたいなものは感じられたし、
ジョン・レノンとオノ・ヨーコというカップルのとある時代を観、
それなりの納得もできたような気がしないでもない。
この映画の場合、それでいいんじゃないかしらね。