Kinema DENBEY since January 1. 2007

☆=☆☆☆☆☆
◎=☆☆☆☆
◇=☆☆☆
△=☆☆
▽=☆

精霊の島

2007年05月12日 00時33分59秒 | 洋画1996年

 ◇精霊の島(1996年 アイスランド 103分)

 原題/Djöflaeyjan

 監督/フレドリック・トール・フリドリクソン 音楽/ヒルマル・オルン・ヒルマルソン

 出演/バルタザル・コルマキュル ギスリ・ハルドルソン スヴェイン・ギェイルソン

 

 ◇エイナル・カラソン『Djoflaeyjan』より

 1950年代、レイキャヴィク。

 アイスランドは、ちょっとばかし、他の国と戦争の歴史が異なっている。

 第2次世界大戦のことなんだけど、ヨーロッパの多くの国は、ドイツ軍の電撃作戦で降服占領され、それを連合軍が解放していくっていう筋書きなんだけど、アイスランドにはドイツ軍は侵攻しなかった。デンマークやノルウェーはほとんど1日で占領しちゃったのに、アイスランドまでは手が延びなかったらしい。

 けど、北欧を解放するためにはどうしても基地が必要だとチャーチルは考え、ドイツ軍に侵攻される前にイギリス軍が駐留すればいいと判断した。ところが、アイスランド政府はデンマークの軛から解放されたばかりなもんで、チャーチルの相談をまっこうから拒否、結論、上陸作戦が行われることになった。

 だから、アイスランドの場合、イギリス軍が占領したってことになる。

 理不尽な話もあったもんだけど、大国の都合ってやつはまじに恐ろしい。

 戦後は、イギリスに代わってアメリカが駐留することになったんだけど、アイスランド人にとっちゃ、たまったもんじゃない。自分たちの国土を東西の大国の思惑で勝手に使うんじゃねーよって話だ。

 で、舞台になってる50年代のレイキャヴィクは、アメリカ軍の撤退と共に兵士の住んでたバラックがたくさん残されてて、主人公たちの大家族はそこに住んでる。

 アメリカかぶれの孫とかが登場してなんやかんやあって、愛惜こもごものバラックが取り壊されることになったんで、公営アパートへ引っ越してゆくまでの風景が、弟パイロットの死を経て描かれてる。

 特徴的なのは、この祖母が不思議な予言能力をもっているということだ。

 アイスランドには特有の信仰があって、そこでいう悪魔とアメリカ文化とがどこかごっちゃになってたりして、アイスランドにとってアメリカのもたらしたものはなんだったんだってな主題になってる。

 たしかに、アイスランド映画というのは馴染みがないもんだから、なかなか、物語に入り込みにくい。

 ただ、渇いた透明な感覚は北欧調っていうのか、とっても儚い。

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訣別の街

2007年05月10日 00時45分14秒 | 洋画1996年

 ◇訣別の街(1996年 アメリカ 111分)

 原題/City Hall

 監督/ハロルド・ベッカー 音楽/ジェリー・ゴールドスミス

 出演/アル・パチーノ ジョン・キューザック ブリジット・フォンダ マーティン・ランドー

 ◇時代の変転

 ついに新旧交代の時が来ちゃったのかな~とおもってたけど、やっぱり考えてみれば、主役はアル・パチーノだわね。

 正義感の補佐官ジョン・キューザックは狂言回しというのか、旧態依然とした政界の汚職を調査していくことで、事件の全貌とその黒幕になってるパチーノを浮き彫りにしていくっていう役割を演じてるわけだから。

 なので、いったんはパチーノがついに脇役に回ったかと感慨にふけったけど、結局はそうでもなかったかな、と。

 ただ、政界汚職にが挑み、恋愛も絡み、師弟の決着をつけるという、なんとも極めつけのハリウッド物なので、パチーノが出演してなかったら、まちがいなくキューザックは看板だったんだろう。

 けど、人間のオーラってのはやっぱり凄いもので、アル・パチーノが壇上で演説をはじめると、その台詞回しや視線の投げ方、要するに一挙手一投足に惹き込まれる。

 これは、ほんと、たいしたものだわ。長年つちかってきたオーラなんだろね。

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ロング・キス・グッドナイト

2007年04月20日 20時33分24秒 | 洋画1996年

 ◎ロング・キス・グッドナイト(1996年 アメリカ 121分)

 原題/The Long Kiss Goodnight

 監督/レニー・ハーリン 音楽/アラン・シルヴェストリ

 出演/ジーナ・デイヴィス サミュエル・L・ジャクソン デヴィッド・モース ブライアン・コックス

 

 ◎ハネムーン作戦

 自分が何者なのか、記憶喪失になってしまったまま結婚して子供を設けるというのがよくあるかどうかはわからないんだけど、物語ではこれにひとつ味付けがされる。

 たいがいの場合、過去に人を殺してしまって、そのショックのため、あるいは自己防衛本能によって記憶を失くしてしまっているとかいうことになる。

 けど、ときに、ハリウッドではこんな設定をする。その若妻はかつて機械のように凄まじい殺し屋だったと。まあ、ありがちといえばありがちなんだけど、ほかにどんな映画があるんだと問われると答えられない。困ったもんだ。

 で、拾い物というか儲け物というくらい、おもしろい。

 ジーナ・デイヴィスはどちらかといえば地味で、ちょっとごついんんだけど、その分、以前は殺し屋だったというリアリズムはある。

 ただ、この場合は水車だけど、女性を下着姿にして拷問するっていう設定もこれまた定番のようによくある。これについては、場面だけは記憶がある。モーターボードの舳先に括りつけて海上を疾走して拷問するってやつだったけど、でも作品名はおぼえてない。困ったもんだ。

 ちなみに、レニー・ハーリンとジーナ・デイヴィスはこの作品の撮影の後に離婚しているそうだけど、やっぱりあの拷問はまずかったんじゃないかしら。

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ブラス!

2007年03月29日 13時03分12秒 | 洋画1996年

 ☆ブラス!(1996年 イギリス)

 原題/Brassed Off

 監督・脚本/マーク・ハーマン 音楽/トレヴァー・ジョーンズ 演奏/グライムソープ・コリアリー・バンド

 出演/ピート・ポスルスウェイト ユアン・マクレガー タラ・フィッツジェラルド

 

 ☆1992年10月17日、ロイヤル・アルバート・ホール

 そこで催された全英ブラスバンド選手権大会で、炭坑夫たちのアマチュア・ブラスバンドのグライムソープ・コリアリー・バンドが優勝した。つまり、これは、実話の映画化だ。

 ほとんどが事実から取られてる。かれらが本拠を置いてるサウス・ヨークシャー州グライムソープ村のグライムソープ炭坑は、かれらが優勝する4日前の1992年10月13日に閉山になっているのも事実だ。100点満点中の99点をマークしたというから、逆境にもめげずよく頑張った。

 それにしてもこのブラスバンドの歴史は古く、1917年に始まるらしい。

 めきめきと実力をつけてきたのは戦後になってからで、1963年からずっと毎年どこかの大会で優勝するようになった。それが、炭坑の閉山という事実をつきつけられ、仲間と離れ離れになるどころか、生活すらできなくなりそうな中、それでもブラスバンドの聖地で決戦におもむいて優勝するなんてのは、うそっぱちもいいかげんにしろっていわれるくらい、よくできた話だ。

 でも、ほんとなんだもんね。身につまされる話ながら、しかも実在するブラスバンドの話ながら、それでいて童話のような展開は、何度観ても好い。何度観ても感動できるし、時をおくとまた観たくなる。

 にしても、欧米の凄さは、こういうところにあるんだろな~。どうってことない大人向けの御伽噺で、しかも音楽が絡んだ物を作るのは、まじ、欧米はうまい。

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ストレンジャー

2007年02月16日 13時38分22秒 | 洋画1996年

 ◇ストレンジャー(1996年 アメリカ 86分)

 原題/Never Talk to Strangers

 監督/ピーター・ホール 音楽/ピノ・ドナジオ

 出演/レベッカ・デモーネイ アントニオ・バンデラス ハリー・ディーン・スタントン

 

 ◇二重人格物のサスペンス

 あまりにも定番どおりに物語が構成されているにも拘わらず、妙に濡れ場だけが突出してリアルな感じがしてたのは、レベッカ・デモーネイが製作主演だったからなのかしら?

 まあ、主演女優に異論はさしはさめないけど、ちょっとばかり地味な感じがしないでもないかな~。レイプ専門の犯罪心理学者の一人称ってのは惹かれるし、設定としてはとってもいい感じとおもってるんだけど、容疑者の少なさが徒になってるような気がちょっとするかな。

 ただ、エロスを売り物にしている宣伝方法には、疑問を持っちゃう。

 その方が売れると判断したんだろうけど、そう判断されてしまったレベッカ・デモーネイがすこしかわいそうだ。

 あんなに真剣に金網越しのHとかやってしまい、ベッドの上の正常位で、バンディラスの尻をつかんで、ぐいぐいと引き寄せるリアルさとか、必死になってしてしまったがために、そんな売られ方をしたとか、なんだか辛いな~と、映画にはまるで関係ないことを考えちゃいました。

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身代金

2007年02月08日 12時07分04秒 | 洋画1996年

 ◇身代金(1996年 アメリカ 122分)

 原題/Ransom

 監督/ロン・ハワード 音楽/ジェームズ・ホーナー

 出演/メル・ギブソン レネ・ルッソ ゲイリー・シニーズ デルロイ・リンド リリ・テイラー

 

 ◇誘拐のリメイク

 といっても、1956年製作の『誘拐』(監督/アレックス・シーガル)と同じ部分は、犯人が子どもを殺したら、身代金の50万ドルは犯人逮捕の懸賞金にするっていうところで、そのほかはほとんどがオリジナルとおもっていい。だから、わざわざ、原案ってのがタイトルされてるんだろう。

 にしても『誘拐』といい『身代金』といい、アメリカっていう国は、父親は戦うのだ、という断固たる主張があるのね。てか、身代金の受け渡し方なんだけど、携帯電話で指示が入り、それにしたがって町中を走らされるっていう場面は、この映画が最初だよね?もしも、ほかの作品で先にこういう場面が作られてるなら話は別なんだけど、これ以後、他の映画や漫画で使用されてる気がするんですが、その場合、著作権はどうなるんでしょ?

「ワンアイデアだからいいんだよ」

 ってことなのかしら?

 ほんとに?

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ジキル&ハイド

2007年01月07日 13時18分26秒 | 洋画1996年

 ◇ジキル&ハイド(1996年 アメリカ 108分)

 原題/Mary Reilly

 監督/スティーブン・フリアーズ 音楽/ジョージ・フェントン

 出演/ジュリア・ロバーツ ジョン・マルコヴィッチ グレン・クローズ ジョージ・コール

 

 ◇1886年1月、ジキルとハイド、出版

 正確にいうと、ロバート・ルイス・スティーヴンソンが『ジキル博士とハイド氏』を書き上げたのは1885年で、その翌年、出版されたんだと。ただ、スティーヴンソンが最初に書いた原稿は、妻の「おもしろくない」というひと言で焼き捨てられ、たった3日で書き直され、それから10週間後に出版されたってんだから、なんとも劇的な展開もあったものだ。むろん、それが世界的に名を知られ、いまでは、解離性同一性障害の代名詞になってるくらいだから、どれだけ当たったかは空恐ろしいものがある。

 けど、この小説が普通の二重人格とちがうのは、性格はおろか姿かたちまで変化してしまうってことで、だから、モンスター物として扱われるようになったんだろうけど、この映画は、どちらかといえば、モンスター的な要素は成りをひそめ、メイドのメアリーの恋心を中心に描かれてる分、ちょっと違う。

 とくに後半、グロテスクなスペクタクルを予想していたのと、ジキルの狂気が凄まじく発露されるかと想っていたら、あにはからんや、ヴィクトリア朝のきわめてありきたりな恋愛物に仕上げられてた。それが原作の持っているそもそもの要素で、これまでの「ジキルとハイド物」と異なるところなんだろうけど、ジョン・マルコヴィッチの熱演ぶりは理解できるものの、ちょっと空回り気味で、大鰻と鼠は、こりゃ、まじにいただけない。映画の中でいちばんグロテスクだったわ。

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