◇精霊の島(1996年 アイスランド 103分)
原題/Djöflaeyjan
監督/フレドリック・トール・フリドリクソン 音楽/ヒルマル・オルン・ヒルマルソン
出演/バルタザル・コルマキュル ギスリ・ハルドルソン スヴェイン・ギェイルソン
◇エイナル・カラソン『Djoflaeyjan』より
1950年代、レイキャヴィク。
アイスランドは、ちょっとばかし、他の国と戦争の歴史が異なっている。
第2次世界大戦のことなんだけど、ヨーロッパの多くの国は、ドイツ軍の電撃作戦で降服占領され、それを連合軍が解放していくっていう筋書きなんだけど、アイスランドにはドイツ軍は侵攻しなかった。デンマークやノルウェーはほとんど1日で占領しちゃったのに、アイスランドまでは手が延びなかったらしい。
けど、北欧を解放するためにはどうしても基地が必要だとチャーチルは考え、ドイツ軍に侵攻される前にイギリス軍が駐留すればいいと判断した。ところが、アイスランド政府はデンマークの軛から解放されたばかりなもんで、チャーチルの相談をまっこうから拒否、結論、上陸作戦が行われることになった。
だから、アイスランドの場合、イギリス軍が占領したってことになる。
理不尽な話もあったもんだけど、大国の都合ってやつはまじに恐ろしい。
戦後は、イギリスに代わってアメリカが駐留することになったんだけど、アイスランド人にとっちゃ、たまったもんじゃない。自分たちの国土を東西の大国の思惑で勝手に使うんじゃねーよって話だ。
で、舞台になってる50年代のレイキャヴィクは、アメリカ軍の撤退と共に兵士の住んでたバラックがたくさん残されてて、主人公たちの大家族はそこに住んでる。
アメリカかぶれの孫とかが登場してなんやかんやあって、愛惜こもごものバラックが取り壊されることになったんで、公営アパートへ引っ越してゆくまでの風景が、弟パイロットの死を経て描かれてる。
特徴的なのは、この祖母が不思議な予言能力をもっているということだ。
アイスランドには特有の信仰があって、そこでいう悪魔とアメリカ文化とがどこかごっちゃになってたりして、アイスランドにとってアメリカのもたらしたものはなんだったんだってな主題になってる。
たしかに、アイスランド映画というのは馴染みがないもんだから、なかなか、物語に入り込みにくい。
ただ、渇いた透明な感覚は北欧調っていうのか、とっても儚い。