◎ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書(2017年 アメリカ 116分)
原題/The Post
監督/スティーブン・スピルバーグ 音楽/ジョン・ウィリアムズ
出演/メリル・ストリープ トム・ハンクス サラ・ポールソン ボブ・オデンカーク
◎1971年、ワシントン・ポスト
まったくもってスピルバーグは上手い。
ハリウッドの常道の語り口だし、なにもかも予定調和なんだけど、それを嫌がり外してしまった『ザシークレットマン』とどちらがエンターテイメントかという点に立てば、もはや一目瞭然だ。こういうのは辛いね。実際、この映画のラストがウォーターゲート事件の現場なわけだから物語としてはそのまんま繋がってあっちゃう。それは描かれている時代と設定からして仕方ないことながら、このループはかなり辛い。
まあそれはともかく、この作品がアメリカ国防総省の最高機密文書の漏洩と報道をめぐる映画であろうとなかろうと、主人公たちの心の動きを追っていく上ではあまり関係はない。つまり、誰も知らない国家機密があり、それについて内部からの告発があり、これを発表すればまちがいなく裁判沙汰になり、経営している新聞社が窮地に追い込まれるかどうかっていう瀬戸際ながらも、しかしアメリカ合衆国という国家の市民である以上、自由と正義のためには我が身の犠牲を惜しんではいられず、勇気をもって行動を起こそうとする群像劇なのだから。
そう、要するに、この映画においては、ペンタゴン・ペーパーの中身についてはその詳細を知る必要はさしてないということになる。
でも、それが大切なんだよね、たぶん、エンターテイメントにおいては。めんどくさいことはどうでもよくって、アメリカ市民にとって大切なものはなんだ?っていうのが主題なんだから。こういう割り切りの良さが、スピルバーグをスピルバーグたらしめているのかもしれないね。