◇メイド・イン・ホンコン(1997年 香港 108分)
原題/香港製造 Made in Hong Kong
監督/フルーツ・チャン 音楽/ラム・ワーチュン
出演/サム・リー ネイキー・イム ウェンダース・リー エイミー・タム
◇1997年香港返還
その日、ぼくは香港にいた。
前後一週間、香港に滞在して返還されていくときの空気を肌で感じてた。でも、たしかにいろんな催事はあったし、町はざわついていたけど、いつもの香港だった。お祭りがあったっていうくらいにしか、観光客である僕には感じられなかった。
まあそれが正直なところなんだけど、当時、ぼくは毎年のように香港に通ってて、このときは新界から深圳に、さらには蛇口まで足をのばして、そこから水中翼船で九龍半島まで帰ってきた。そんなこんなで、だから、予想していた緊張はさほどなかった。
ここの登場人物たちもそうな気がする。
返還の「へ」の字もなく、かれらはいつものとおりの香港に暮らし、閉塞と焦燥のごちゃまぜになった生活に喘いでいる。でもな~お墓の上にのぼって抱き合ったり飛び石のように渡っていくってのはちょっとな~って気がしたんだけど、そんなことないのかな?
物語の構成は嫌いじゃない。突っ放したような物語ではあった。
と同時に、自殺した女の子と主人公とはなんの関係もないはずなのに、妙な因果で結ばれちゃった感じで、しかも、その亡くなった女の子の夢を見て、毎晩のように夢精しちゃうというもう爆裂しそうな青春の設定はどうだろう、たいしたものかもしれない。いや、なかなか考えられない気はするよね。