☆映画 聲の形(2016年 日本 127分)
監督/山田尚子 音楽/牛尾憲輔
出演/入野自由 早見沙織 松岡茉優 悠木碧 金子有希 石川由依 潘めぐみ 小野賢章 豊永利行
☆君に生きるのを手伝ってほしい
なるほど。
「自分がしたことは自分に跳ね返る。自分は罪を背負い、罰を受ける必要のある人間である」
たしかにそのとおりで、この主人公の若者の独白は実に胸に迫る。それがどのような物事であれ、つまりこの映画にかぎらず、ぼくたちの生活や人生の中のどのような瞬間の出来事であれ、こうした想いは常に抱えて生きている。そういうことからいえば、この作品は地に足のついた物語といってよく、このところの情けない邦画とは明らかに一線を画している。
とはいえ、この映画を褒めるのはもう嫌っていうほど大勢の人たちが褒めているし、それ以上の語句を費やせる自信もないからやめておくけど、後半、いよいよ佳境に迫ってくるあたりは、ほんと、胸のつぶれるような想いを抱えて観た気がする。でも、あれだね、大垣の良さのひとつに「水」があるんだけど、水と音っていうのは繋がりが深いね。
おもいだされるのは『シェイプ・オブ・ウォーター』で、ヒロインのサリー・ホーキンスが聾唖だったってことだ。水の中には音がないから、そうした不自由さは水の中では差がなくなる。水の中へ飛び込む主人公たち、水の中から外界を眺めるカメラ、そうした行動や構図が「音」を余計におもいださせてくれる。上手な演出だな。山田尚子、凄いな。