☆日の名残り(The Remains of the Day)
不器用な恋だ。
20世紀前半の忍ぶ恋が美徳とされた時代に完璧であろうとするが故に無理に恋を否定しようとする執事と、自分の恋を整理できずに悶える女中頭とのまだるこしくじれったい関係は、たいがい、悲恋に終わる。でも、そこに自己陶酔にもにた酩酊と満足があれば、その恋はよい思い出として残っていくんだね。
(以上、2012年7月の感想)
いい邦題だなあ。
ジェームズ・アイヴォリーのいかにも文芸調の落ち着いた色調と展開は、この恋愛すら堪えきってしまう滅私奉公の主人公アンソニー・ホプキンスによく合ってる。ま、上品さで恋心すら押し隠してしまうエマ・トンプソンもいいんだけど、左右非対称の館もいいし、なんといってもリチャード・ロビンズの音楽がいい。堅苦しく時に単調に過ぎてしまいそうな導入部を見せるのは、軽やかながらも悲劇を予感させるようなこの音楽だ。
(以上、2022年5月の感想)