☆やさしい嘘と贈り物(2008年 アメリカ 92分)
原題 Lovely, Still
staff 監督・脚本/ニコラス・ファクラー 撮影/ショーン・カービー
美術/スティーヴン・アルトマン 音楽/マイク・モーギス、ネイト・ウォルコット
cast マーティン・ランドー エレン・バースティン アダム・スコット エリザベス・バンクス
☆約束しましょ、絶対に絶対にあきらめないって
っていうのは、恋をした老人ふたりがレストランでスプーンで乾杯するときの台詞。
恋は、若返りの魔法にちがいない、たぶん。
ぼくは、やはりいつものように、なんの前知識もなく、観た。実は予告編ですべてばらしてしまってるんで、予告編を見ないでよかったわ~とはいえ、まあ、途中からだいたいの目安はついてしまうんだけど、でも、やさしい嘘をつけるようになるまで、町をひっくるめたすべての人々はどれだけの葛藤をしたんだろうと、そんなふうに想像するだけで、胸が熱くなる。
たしかに、やさしさを前面に出すために、リアルな葛藤はすべて排除されてるんだけど、その分、映画全体をファンタジー色に包み込んでいられる。クリスマスイヴの夜、自分のためにとあるプレゼントを用意し、つまり、明日はこの苦しみから逃れようと自殺を決め、就寝したはずが、翌朝めざめたとき、この孤独な老人は、いつものように身だしなみをちゃんと整え、自宅の扉すら締め忘れてしまうほどの進んでいる哀れさのまま出勤する。
その扉から、ひとりの老女が入ってくることから、ファンタジーが始まる。
出だしから、いい調子だ。24歳のデビュー作とはおもえないほど、きめこまやかな演出。ただ、若者だからこそ、痴呆や別居にいたるディティールはおもいきりよく排除できてるんだろう。
それにしても、これから先、どんどん老人性痴呆症は数を増していくんだろうね。日本だけじゃなくて、アメリカでも深刻な問題になってるんだろう。だから、こういう映画が作られるんだろうけど、ハリウッドの好いところは、老人にみずみずしい恋をさせてしまうことだ。じーさんやばーさんになったって、異性を好きになる。それがたまらない抒情感になってるところが、なんともいいんだわ。