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☆=☆☆☆☆☆
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この世界に残されて

2022年05月15日 21時21分33秒 | 洋画2020年

 ☆この世界に残されて(Akik maradtak)

 

 なんという節度と情欲と理性と情愛の混雑した物語だろう。

 どうして、この物語を、ナチスによる絶滅政策から生き残ったカーロイ・ハイデュクとアビゲール・セーケの恋愛映画だと観る人間が少ないのかがわからない。

 このふたりは、たしかに孤独だ。そりゃあ、妻もふたりの坊やも殺されて42歳になっても心の傷が癒えない産婦人科医だし、家族どころか妹の死までまのあたりにして戦後に孤児院からひきとってくれた叔母とも上手くいかない16歳の少女とは、疑似家族になるしかないのかもしれないけど、でも、アビゲール・セーケは初潮を迎える前夜にカーロイ・ハイデュクにひと目惚れして、彼がずっと独身でいることを望み、年老いてからは面倒を見るともいいきるくらい好きで仕方なくなってるし、その情熱にほだされて抱きしめたいとおもいながらも理性と節度を鎧にしてるカーロイ・ハイデュクがいつ心を開いて、もうあとさき考えずに国境を越えていくのかとおもいきや、ハンガリーの置かれている立場にそのまま埋没して、共産党に入党するしかないほど追い詰められ、盗聴され、党のすすめる相手と強制結婚させられるという辛さを受け留めるしかないと判断したんだけど、それはアビゲール・セーケに難がおよばないようにしようとする愛ゆえのことで、でもアビゲール・セーケだってカーロイ・ハイデュクのアルバムを盗み見てしまったことであらためて家族がいたことを知り、その家族をいまだに愛していることも実感し、それで涙しながらもやっぱり好きだ~っておもい、ぎりぎりのところで同級生が亡命をかけて告白してくるんだけど、でも断わったはずが、ちょうど、強制結婚の話がもたされててどうしようもなくなってるカーロイ・ハイデュクのために自分は同級生との結婚を決めるっていう、そういうふたりの純愛を観ないとあかんのじゃないか?

 いや、ほんと、まじ、スターリンがもう数年前に死んでたら、このふたりはまったく別な人生を歩んだはずだって、バルナバーシュ・トートはものすごくはっきり演出してるんじゃん。

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ロンドン、人生はじめます

2022年05月14日 01時59分20秒 | 洋画2017年

 ◎ロンドン、人生はじめます(Hampstead)

 

 しなびたアンズね、そういう形容があるのか。ロンドンの回転寿司はピンクの皿がいちばん高いのか。など、いろいろと感心しちゃう映画だった。それにしても、ダイアン・キートンって帽子が似合うんだよね。おとなのおとぎ話かとおもってたらほぼ実話というものすごさ。ブレンダン・グリーソンがやけにはまり役で、驚いたわ。ロンドンの居住権は12年なのかって感心したんだけど、それより脚本の上手さには感心したわ。ただ、廃墟になってる病院のその後はどうなるんだろうって気になる。なぜかっていえば、当初、ダイアン・キートンが気になってたのは赤煉瓦の病院の方なんだから。

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たちあがる女

2022年05月13日 02時07分46秒 | 洋画2018年

 ☆たちあがる女(Kona fer í stríð)

 

 ベネディクト・エルリングソン、演出する才能のかたまりだな。なんでハルドラ・ゲイルハルズドッティルを双子にしたんだろうっておもってたら、なるほど、入れ代わりか。CGになってからこういう合成は実に凄くなってきたけど、この映画は基本的なひとり二役の取り方が多いんだけど、でも上手だ。

 しかしまあ、アイスランドってこんなに企業と自然活動家は対立してるんだろうかっていう感じだけど、この主役の設定は特別なんだろうか。ま、そんなことより、ウクライナで戦災孤児になってる女の子をひきとりに行くラストカット。道が水没してなくなっても渡ってゆくのだ。強いな、女は。

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パッドマン 5億人の女性を救った男

2022年05月12日 23時49分08秒 | 洋画2018年

 ☆パッドマン 5億人の女性を救った男(Pad Man)

 

 タミル・ナードゥ州出身の発明家にして社会活動家アルナーチャラム・ムルガナンダムの実話。とにかく低価格で、ひたすた衛生的な生理用ナプキンを妻のために開発していく苦労話なんだけど、いやもう文句なしにおもしろかった。妻ソーナム・カプールと、開発助手ラーディカー・アープテーの好意にゆれるのも気が利いてるね。アクシャイ・クマールが国連本部でインド訛りの英語のスピーチをするところは、とてつもなく上手い。

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レディ・バード

2022年05月11日 01時04分24秒 | 洋画2017年

 ☆レディ・バード(Lady Bird)

 

 なんでこの母ローリー・メトカーフと娘シアーシャ・ローナンは『怒りの葡萄』の朗読で泣いてんだ?

 ま、それはそれとして、2度目の鑑賞。とにかく、台詞がいい。チークダンスだって、日本だったら『精霊の場所を15センチ空けて』と修道女はいわんぜ。政府の陰謀だという「いつか脳にGPSをつけられる」てことを信じているような6人の女の子とすでにエッチしてるアホ高校生ティモシー・シャラメがなんともいい。惚れちゃうのかしらね、こういう色気だけのアホに、女の子は誰でも?

 ちなみに、ティモシー君の喫っている手巻きの煙草がなんだかはわからないんだけど、ほかの高校生どもが喫ってるクローブは、ガラムかガンドゥン・アロマ・クローブだとおもうんだけど、そんなこともどうでもいいか。

 お金は人生の成績表じゃない。お母さんのローリー・メトカーフ、ええことゆうやん。

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ヒトラー暗殺、13分の誤算

2022年05月10日 01時21分30秒 | 洋画2015年

 ◎ヒトラー暗殺、13分の誤算(Elser)

 

 クリスティアン・フリーデルはおもいつめた家具職人の役がよく似合ってる。こういう純朴ながらも切羽詰まった連中がヒトラーの暗殺に手をつっこみ、そういう悲劇が何十回も繰り返されたんだろうけど、その中でもこの実話がとりあげられたのは、ぎりぎりのところまで成功していたのに天候が霧というだけで失敗に終わってしまったことと、クリスティアン・フリーデル演じるゲオルク・エルザーがダッハウ強制収容所で終戦直前まで生きていたってことみたいだけど、なるほど。

 ちなみに恋に落ちる人妻カタリーナ・シュトラーは薄幸そうながらも知的っていう印象でよろしい。

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隠された時間

2022年05月09日 00時17分03秒 | 洋画2016年

 ◎隠された時間(Vanishing Time: A Boy Who Returned)

 

 謎の卵のちからによるものか、とにかく止まった時間の外に置かれることになっちゃうイ・ヒョジェの成長した男カン・ドンウォンが背泳の入江陵介にしか見えないとかいったら怒られるんだろうか?

 ま、そんなことはともかく、よくできてる。っていうより、ぼくはこういう物語は好きだな。

 シン・ウンスは純粋で知的な少女の役がよく似合ってて、世界の誰も信じてくれない時間からの離脱の現象をまのあたりにしてカン・ドンウォンとの初恋を実らせてゆくんだけど、うん、刑事役のクォン・ヘヒョと義理の父親役のキム・ヒウォンもよく演ってた。

 洞窟がなんで存在して、そこでなぜ卵が都合3つも存在していて、いったいなんの卵だったのか、中から出てきた風圧の正体はなんだったのか、そのあたりはまるで語られないけど、それはそれでいいんじゃないかっておもえちゃうのがこの映画の魅力なんだろう。ただ、偏向レンズなのか、緑のフィルターを使ったロケーションがちょっと違和感をおぼえちゃうけど、そのほかの絵づくりは上手だった。

 とくに止まった時間の中では空中に物を置いてもそのまま浮かんで静止しちゃうとか、水の撥ねもわずかに撥ねるけどそこで止まっちゃうっていう感覚が好い。島を舞台にしているっていう閉塞感も、カン・ドンウォンとシン・ウンスの逃げ場がなくなる伏線になってて上手だ。

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ワイルドライフ

2022年05月08日 00時14分53秒 | 洋画2018年

 ☆ワイルドライフ(Wildlife)

 

 うまいな。ポール・ダノ、初監督作品とはおもえないくらいかっちりと撮ってる。

 家族は幸せになろうとする。けど、貧乏でも一緒に過ごして穏やかな時を送っていきたいと考えているキャリー・マリガンにとってはそれが幸せなのかもしれないけど、ジェイク・ギレンホールはそうじゃないわけで、自分の志してきた人生とはちがう時間を送ってると、どうしてもうろたえるし、ほかのことをしたくなるし、とにかくもがきはじめる。それが山火事を消すという時給1ドルの季節労働者なわけで、それがやりたいわけじゃなく、現実の中でもがき苦しんでるからで、それをキャリー・マリガンに「逃げてるだけよ」と怒鳴られたんじゃ、もう、行き場はなくなる。山へ向かうしかないわけで、14歳の息子エド・オクセンボールドにはなんにもできない。でも彼だって父親と母親の不仲は見たくないわけで、だから、写真館のアルバイトで、幸せな夫婦の写真を撮り続ける。

 せつない映画だな。

 父親との再会も束の間、バスに乗って去ってゆくワンカットは上手いけど辛いな。

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スティルウォーター

2022年05月07日 02時20分52秒 | 洋画2021年

 ◎スティルウォーター(Stillwater)

 

 マルセイユに留学している娘アビゲイル・ブレスリンがレズビアンのルームメイトを殺害した罪で収監されてて、その無実を晴らすためにオクラホマ州スティルウォーターからやってくるマット・ディモンの物語なんだけど、髭のせいか、ディカプリオにしか見えないのは僕だけだろうか。まあ、それはそれとしてマット・ディモンに肩入れして同棲までしちゃう変な男に惚れちゃう癖のあるカミーユ・コッタンの役どころはおもしろかった。

 そんなことより、これ、冤罪を晴らすんだけど、ほんとはどうなんだよ、娘の真実はどこにあるんだよっていう簡単なものじゃないね。でなければ、前半の90分がこんだけつまんなくてだらだらとマット・ディモンの凡庸さを追いかける必要はないわけで、90分過ぎて監禁が始まってから俄然おもしろくなる。それまではだらだら。あれ?もしかしたら真犯人は違う?っておもいはじめる。しかし、娘アビゲイル・ブレスリンがもうすこし可憐ならな~っていうくらい、なんとも愛らしさに欠ける。これが鍵なんだね。スティルウォーターの金のブレスレットの意味がようやくわかってくる。うまいわ、アビゲイル・ブレスリン。

 で、法に触れる行為で真実を暴こうとしたとき結果が逆だと悲劇になる。アビゲイル・ブレスリンが首を吊って自殺未遂したのは自責の念だね。最後に、マット・ディモンは人生は残酷だとアビゲイル・ブレスリンにいう。すべてが違って見える、別の場所みたいに、とも。そのとおりだ。

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娘よ

2022年05月06日 14時15分52秒 | 洋画2014年

 ◎娘よ(Dukhtar)

 

 娘たちの会話。女の子が男の子を見て男の子がふりかえると赤ちゃんができる。なるほど、それもそうだ。この会話は、これだけ情報の少ない田舎の国にいるんだってことを示しているのと、これだけこの子たちがまだ幼いのに過酷な運命が待ってるんだってことの暗示なんだけど、このあたり、よく練られてる。アフィア・ナサニエルの処女作らしいけど、いろいろと気のつく演出だわ。

 で、虹の話をしてる。母サミア・ムムターズはいう。目には見えるけど本当はそこに存在してないの。とかいってて娘サーレハ・アーレフがフレームアウトし、会話が続く。そこへ、ドアが破られて夫が入ってくる。誰もいない。ワンカットだ。お、すごいじゃん。会話がそのまま伏線とカセットで部屋の外へ聴かせてるトリックになってる。

 逃げるときの村の素朴な感じがとてもいい。ロケ地、よく見つけたね。それと、美しい自然とは相容れないモヒブ・ミルザーの運転するド派手なデコレーショントラック。これがふしぎに調和してくる。絵がいいんだな。食堂を出るとき、串刺しされた鳥の丸焼きなめの去っていくトラック。いや~。音だけじゃなくて、絵も利いてる。

 モヒブ・ミルザーの語るカブール川とインダス川の悲恋物語は興味深い。カブールの血の流れ、インダスの涙の流れ。そして合流。つまりは、この映画のあらすじがここにあるわけで、実話の映画化にしては脚本が練られてる。で、合流するおばあちゃんと内緒で待ち合わせるラホールの夜市なんだけど、これもええ感じだ。

 サミア・ムムターズが流れ弾に撃たれ、介抱されながら逃げ去ってゆくところで、あれれ、これ、このまま死なせちゃうこととかなしだよね、カットが変わって山河を背景にした彼女の復活とかが用意されてるんだよねっておもえば、死んじゃったような眼を閉じるカットのあとで、そのまま車内で娘の手をにぎりかえすカットがラストになってる。なるほど、こっちの方が上手だわ。

 ありきたりな脱走劇かとおもってたし、まあまちがいではなかったともおもうんだけど、脚本の上手さと映像のセンスの良さで観ちゃうな。

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デッド・カーム 戦慄の航海

2022年05月05日 23時13分11秒 | 洋画1981~1990年

 ◇デッド・カーム 戦慄の航海(Dead Calm)

 

 ビデオで販売されたのが日本でのお披露目だったらしい。なるほど、それでレンタルビデオ屋でもよく目立ってたんだね。ま、とはいえ、なぜかこの作品はずっと気になってた。ニコール・キッドマンがまだ若くて、ポスターがとても魅力的だったからかもしれないけど、観るのが念願だった分、がっくりした。

 要するに『水の中のナイフ』なんだけど、ロマン・ポランスキーとフィリップ・ノイスの演出力の差が出ちゃった感じかしらね。海軍にいたにしては不注意かつ不警戒な夫サム・ニールはいいとしても、そもそも航海に出てきた理由に子供を事故死させちゃう脚本ってのはなんかな~。

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シルバラード

2022年05月04日 23時26分22秒 | 洋画1981~1990年

 △シルバラード(Silverado)

 

 前に観たときも、ケビン・コスナーのあまりの能天気な若さを観ていられなくて、途中で我慢の糸が切れた気がする。まあ、ローレンス・カスダンがどうしても撮りたかったんだろうなってことはわかるんだけどね。それとケビン・クラインとスコット・グレンを主役に据えるってのはちょっと地味すぎる気もするぞ。

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シンドラーのリスト

2022年05月03日 23時43分02秒 | 洋画1993年

 ☆シンドラーのリスト(Schindler's List)

 

 何度観ても観ちゃうな~。すごいな。けど、長いな。気持ちはわかるけどさ。どうやら、スティーブン・スピルバーグの映画の中でも最長の尺らしい。だろうなあ。つか、もしかしたら、この作品が、ぼくがリーアム・ニーソンを知った最初かもしれないわ。

 しかし、パナビジョンを使えなくてアリフレックスだけでこれだけのものを撮っちゃうのもすごい。ヤヌス・カミンスキーのカメラには驚くね。

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カウナス スギハラを、日本を想う

2022年05月02日 23時01分10秒 | 洋画2018年

 ◇カウナス スギハラを、日本を想う(Kaunas. The City of Sugihara and Japan)

 

 せっかくの題材なのに、ひとりよがりになっててね~。素材も綺麗に撮れてるし、こういうのは誰か玄人が側にいて演出を担当するか、あるいはこのあたりに詳しい人が脚本を担当したらよかったかもしれないね。

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アマ・ルール大地の人バスク

2022年05月01日 22時28分24秒 | 邦画1981~1990年

 ◇アマ・ルール大地の人バスク

 

 姫田忠義がバスクを撮ったドキュメンタリーなんだけど、やっぱり時代なんだね。バスクにかぎらず、こういう地域を追いかけたものってのは中途半端な時が流れただけだと単に古さばかりが目立っちゃって、訴えたかったことが稀薄になっちゃうんじゃないんかなあって気がしたな。

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